[5−17]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?
第17話 まるで、悪戯を企てている子供のような……
ナーヴィンと呑んだ、その翌日。
ミアとナーヴィンは、村へ帰ることになった。
そしてユイナスは、このまま王都に残るわけだが……
アルデは「せめて両親に説明してこい」とユイナスに言ったのだが、「転送魔法は、ティスリか、専業の魔法士しか使えないんでしょ。だとしたら村から戻って来られないじゃない……まさかお兄ちゃん、そのままわたしを村に残すつもり!?」と断固拒否される。
いやそんなつもりはまったくなかったのだが、っていうかむしろ「その手があったか!」と思ったのだが、しかしユイナスに気づかれてしまっては使えない。
ということで、うちの親への説明はミアがやってくれることになった。家族の事情にまで巻き込んでしまい申し訳ない気持ちで一杯だが、ミアは笑顔で「気にしないで」と言ってくれた。
うちの親は、ユイナスがちゃんと学校に行き、その生活費もオレが工面するのなら文句は言わないだろう──心配はするだろうが。あと王都の学校なら箔も付くしな。
そして転送ゲートは、王都内のいくつかの場所にあるそうだが、そのうちの一つは王城だという。そこでティスリは「せっかくだから王城見学してから帰郷しては?」などと、非常に軽いノリで言ってくる。
いやだから……平民が王城内に入るだなんて、ほんと、一生掛かっても無理な話なんだぞ? まぁティスリにとっては、自分ちを見学させている程度の認識なのかもだが。
だから萎縮しまくるミアとナーヴィンだったが(同じ平民のユイナスは平然としていた)、こんな機会はたぶん二度とないということで、王城内を見学することにした。
まだ工事中の場所も多いが……これが、ティスリとオレが戦ったせいであることは秘密だ。ユイナスがまたうるさくなりそうだし。
ちなみに、とてつもなく豪華で広い謁見の間に、近衛兵が整然と並ぶ様を見たとき、ナーヴィンは卒倒するかというほど真っ青になってた。もし国王がいたら本当に気絶してたかもな。
国王不在なのは、ティスリ曰く「今回の件で、ふて寝どころか遠方の別荘地に逃げていきましたので」とのこと……この国、ティスリがいないとほんと潰れるのではなかろうか?
などと一抹の不安を抱えながらも王城見学は進み、ちょっと早めのディナーでは宮廷料理までご馳走になったあと、いよいよ二人が帰郷することになった。ちなみに宮廷料理は、言うまでもなくあり得ないほどに旨かった。
「殿下、本当に、何から何までありがとうございます」
さすがに宮中ということで、ミアはティスリのことを殿下呼びだ。ティスリも、回りに配慮してか呼び名は特に指定していない。
「構いませんよ。せっかくのバカンスだったのに、わたしのせいで台無しにしてしまいましたので」
「そ、そんなことありませんよ! バカンスどころか、もう一生の思い出ですから!」
「そう言ってもらえると、わたしも気が楽になります」
そしてナーヴィンとも名残惜しそうに別れの挨拶──というより、ナーヴィンは今さらながらガチガチに緊張していた。ここに至って、ティスリがどれほどの存在なのかをようやく理解したらしい。ティスリは苦笑していたが。
ということで宮廷魔法士が転送魔法を発現させ、その転送ゲートに向かおうとした二人をティスリが呼び止める。
「もし、村でちょっとした異変でもあれば、遠慮なく、すぐに連絡をくださいね。守護の指輪で。村の転送ゲートはそのままにしておきますので、直ちに駆けつけます」
「ありがとうございます、殿下。分かりました」
そうか……もううちの村は、ティスリの国じゃないんだもんな。そう考えると、やっぱり心細くなるな。
でもこの辺はミアに任せておけば大丈夫だろう。村長の娘だし、こういった状況判断には長けているだろう。
そんなミアは、最後にオレへと視線を送ってくる。
「それじゃあアルデ……またね」
「おう……またな……?」
ミアのその視線は、なぜかちょっと楽しげで……
まるで、悪戯を企てている子供のような……
だからオレは少し眉をひそめるも、その真意を確認する間もなく──ミアとナーヴィンは転送ゲートの向こうへと行ってしまうのだった。