[0−1]メタっ娘 百合百合しながら異世界冒険するメタフィクション・ファンタジー!
prologue
chapter 1
「……ナニコレ?」
葛木芽以子は、目の前に広がる光景を見て放心状態でつぶやいた。
それもそのはず、眼前に広がる光景といったら常軌を逸している。
何もないのだ。
青空と野原が地平線でくっついているほど何もない──どころの騒ぎではない。
本当に何もないのだ。
青空も。
野原も。
なんと地平線も。
何もない。
──つまり、真っ白な空間だけが広がっている。それだけだった。
雪原のド真ん中にいる、というわけでもない。そもそも寒くもなければ暑くもない。
上下左右・四方八方あらゆる空間のすべてが真っ白だった。
真っ白。そうとしかいいようがない。
ページで表現するならこんな感じだ。
ま
っ
し
ろ
まったくもって描写のしようがない驚きの白さに、芽以子は立ちすくむしかなかった。
そもそも、自分が地面に立っているのかさえ怪しくなってきた。何しろ地平線すらないのだから。
平衡感覚が狂ってきたせいでクラクラする頭を押さえ芽以子はつぶやく。
「……っていうか、アナタ誰よ?」
何もない、ただ真っ白な空間に向かってつぶやく芽以子。誰何したところで周囲には人っ子一人いない。
「そうじゃなくて! 勝手にナレーションしてるアナタよ!」
ん? ぼくですか?
「そう! アナタ!」
芽以子さん、ダメですよ。地の文に向かって話しかけては。それは小説作法でいうところのルール違反です。
「ナニわけわかんないこといってんの!?」
そう叫び、周囲を睨み付ける芽以子。しかし辺りは真っ白で、どれだけ睨みをきかせても誰もいはしない。
「じゃあなんで声が聞こえるのよ! いったいどこから放送しているの!?」
芽以子はヒステリー気味に地団駄を踏んだ。
「人の様子を勝手にナレーショるな!」
ナレーショるってどういう日本語ですか。
「うるさい! いい加減に姿を現しなさい! 卑怯よ!?」
そういうと芽以子は足を踏み出す。人間、理解不能な状況に追い込まれると体を動かさずにはいられなくなるのだろう。しかし、平衡感覚が狂っている状態で歩こうとしても結果は自明だった。
芽以子は足をもつれさせ、真っ白であるが故に目に見えない地面にスッ転んだ。ゴロゴロと三回転半すると、白い地面に大の字になり、白い上空を見上げる。
たった数歩だというのに、全身からはビー玉のような汗が噴き出し、心肺は張り裂けんばかりに大きく鼓動し、桃色の唇からは塊のような吐息が短く何度も吐き出される。
強気の瞳は真っ赤に充血して、いささか涙が滲んでいた。
「いったいなんなのよぉ……」
芽以子はギュッと目を瞑り、それっきり動かなくなる。
…………。
…………。
…………。
…おーい………。
おーい、めいこさーん……?
んんー……。できるだけページ数を稼ぎたかったんですが、まぁ確かにこのままだとラノベが進みませんので種明かししちゃいましょうか。
目を開けて、キッと上空を睨み付ける芽以子。
まぁそう怖い顔しないでください。別にとって食おうだなんて考えてません。あ、ちなみに涙目になって怒る顔って、いわゆるツンデレで可愛いですよ?
「ふざけるな!」
上体をガバッと起こして怒鳴り声をあげる。あさってのほうに放たれた怒号は、しかし反響することもなく──
「アナタはいったい誰なの!?」
──あぁもう。こっちも仕事ですんで、描写する間は待っててくださいってば。
「知らないわよそんなこと!」
まぁいいです。さて芽以子さん、自己紹介といきましょうか。ぼくは『作者』です。
「は?」
そうですねぇ。単刀直入にいいますと、芽以子さんはライトノベルの中に入っちゃったんです。ちなみにジャンルはファンタジーものです。
「……あなたいったい何いってるの?」
つまりですね、ぼくは兎にも角にもファンタジーものが大好きでして。それも異世界モノ。現実から突如、見知らぬ世界に飛び込んで冒険活劇なんてロマンじゃないですか! が、しかし! ここ二十年くらいで、もはや異世界ファンタジーは出尽くされたといっても過言ではない! しかししかし、それでも「いまだ未開の地はないものか!?」といろいろ思索を張り巡らせること──
「回りくどいわね……。いったい何がいいたいの?」
芽以子さんはせっかちだなぁ。だから、もろもろの理由がありまして──
「──ありまして?」
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