[5−20]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?
第20話 まるで貴族令嬢にでもなったかのようだ
「っていうか、なんで噴水前で待ち合わせ……?」
リリィが指定してきた王都広場の噴水前にやってくると、アルデは今さらながらに首を傾げていた。
リリィんちの従者なら、屋敷から一緒にくればよかったんじゃね? と思ったのである。
まぁ、テレジア家はこの王都でも手広くやっているようだから、屋敷以外にも従者はたくさんいるのかもしれないが。
とはいえなぁ……なんかこの広場、居心地悪いんだよなぁ……
オレは目のやり場に困りながら頬を掻く。
何しろここは、恋人達が待ち合わせたり、だべったりする憩いの場と化しているのだ。だから今この瞬間も、オレの隣で「お待たせ〜♪ 待った?」「ううん、オレも今来たとこ♪」などとイチャイチャしている……
ナーヴィンじゃないが、こういうのを何度も見せつけられると、さすがにちょっとイラっとするな……!
せめて従者なる人物が、可愛いメイドさんとかならまだ救われるけど、武具選びに同行するだなんて、どう考えても戦士然とした野郎なんだろうし。
「はぁ……なんか気が滅入ってきた……」
そんな感じでオレは肩を落とし──
──背後から視線を感じていたので振り返った。
「え!?」「え!?」
驚きの声が重なるが──いやそんなことより、背後から視線を送ってきた人物を目の当たりにしてオレは驚く。
「ミ、ミア!? なんでまだ王都に……?」
そう──背後からオレに近づこうとしていたのは、ミア。
転送魔法で村へ帰ったはずのミアだったのだ。
だからオレが驚くのは当然なのだが、ミアも驚いているのは……なぜだろう?
そのミアは、びっくりした様子のまま言ってきた。
「ど、どうして、このタイミングで振り返るかな……?」
「そりゃ誰かにずっと見られてたなら、背後からだってすぐ分かるだろ」
「……ふつーは分からないよ……」
「そうか?」
「そうだよ。もう……せっかく驚かせようと思ったのに」
「いや、十分驚いたが……」
それに噴水前にやってきたミアは、普段の村人の格好じゃなくて、とても上等な衣服を着ている。どういう服なのかまでは分からないけれど、まるで貴族令嬢にでもなったかのようだ。髪型もちょっとアレンジしてあるし、だからなんというか、普段の印象とだいぶ違うというか……
だからオレは改めて聞いた。
「それでミア……どうしてお前が王都にいるんだ?」
「もちろん説明するけど、せっかくだし、どこかのお店にでも入らない?」
「いやだが、オレはリリィの従者と待ち合わせをしててな」
オレがそう答えると、ミアは、悪戯に成功した子供のような笑顔を向けてくる。
「ふふっ……だからその従者がわたしなんだよ」
「……は?」
オレは訳が分からず、首を傾げるしかないのだった。