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[4−27]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?

第27話 何やらポーズをキメた

「なぁ……女性陣はいつになったら来るんだ……?」

 執事さん達が砂浜に設置してくれたパラソルの下で、ナーヴィンが暇そうにぼやいていた。

 そんなナーヴィンに向かって、アルデオレもぼやく。

「さぁなぁ……いろいろと身支度が大変なんだろ?」

「着替えがそんなに大変なのか?」

「オレに聞かれてもなぁ……」

 そう言ってからオレは立ち上がる。ナーヴィンは、ぬぼーっとした顔でオレを見上げた。

「ん? 迎えにでもいくのか?」

「いやそうじゃなくて。暇だし暑いから、泳いでこようかなと」

「泳いだら、息が上がって余計に暑く感じるじゃん」

「この炎天下の中でボケッとしているより、海のほうがマシだって」

「はぁ……これだから体育会系は……」

「お前は泳がんのか?」

「なんで男二人で水泳しなくちゃならんのよ?」

「そうかい。じゃあオレはちょっと行ってくるわ」

 そうしてオレはシャツを脱ぐ。

 水泳なんて久しぶりだから、ちょっとワクワクするな。

 それにこの水着ってズボンは、どんだけ濡れてもすぐ乾くって話だから便利だし。ただ膝上まで丈があってダブッとしているので泳ぎにくそうではある、水着なのに。まぁ別に、遠泳したいわけでもないからいいか。

 ということでオレが海に向かって歩き始めた、ちょうどそのとき。

 向こうから、陽炎に揺れる人影が見えた。

「おっ! ようやく女性陣のお出ましか!」

 さきほどとは打って変わって元気になったナーヴィンが立ち上がる。オレも人影に視線を向けると──

「お兄ちゃ〜〜〜ん!」

 ──ユイナスの声が聞こえてきた。どうやら一人先行して走ってきているらしい。

 だからオレもユイナスに声を掛ける。

「お〜い、ずいぶんと遅かったじゃ──って!」

 そしてオレは、走ってきたユイナスの姿を見て仰天した。

「お前、なんで下着姿なんだよ!?」

「やーねーお兄ちゃん。これが流行の最先端ってヤツよ」

 そうしてユイナスは、何やらポーズをキメた。

「どう? 似合ってる?」

 ユイナスは、胸とパンツにやたらヒラヒラした布地が付いている下着を見せびらかす。しかも色とりどりのパステルカラーでとても目立つ。

「ずいぶんと目立つ下着だなぁ」

「だから下着じゃないわよ!?」

 怒り出すユイナスに、オレはため息をついた。

「まったく……お前もいい歳なんだから、奇抜な下着は卒業しろよ」

「いい歳だから最新の水着を着ているのだけれど!?」

「ほら、せめて上着を着ろって。水辺ではしゃぐパンイチの子供じゃないんだから」

「お兄ちゃんの頭の中、どうにかなってるんじゃないの!?」

 なぜか怒っているユイナスに、オレはさっきまで着ていたシャツを手渡すが、ユイナスは抗議の声を上げる。

「だからこれは水着なの! そもそもお兄ちゃんだってパンイチじゃない!」

「いやオレは男だからこんなもんだろ? うちの村だって、暑いときは上半身マッパで農作業する野郎だらけだし」

「あーそれ、ティスリに言わせるとむしろ体に悪いらしいよ? 農業体験のときにも言ってたけど。ちなみにわたしたちは、ティスリが今回も魔法で守ってるらしいから水着で大丈夫だって」

「そなの? じゃあ帰ったら村のみんなに知らせておかないと──」

「って、そうじゃなくって!」

 気づけば話が逸れていたが、ユイナスが強引に話を戻す。

「わたしだけじゃなくて、みんな水着を着てるから!」

「え、みんな……!?」

 オレは驚いて、歩いてくる他の女性陣に視線を向ける。

 みんなって……まさかティスリも、こんな下着のような水着を着てるってことか!?

 陽炎で揺れる女性陣の姿は、しかし今やハッキリと見えるようになってきて……

「お、おお……」

 オレは思わず、感嘆の声を出してしまう。

「ちょっとお兄ちゃん、ナニ見てるのよ!?」

「イテテ! み、耳を引っ張るな!? お前が見ろって言ったんだろ!?」

「見ろとは言ってない! しかも見取れるな!!」

「見取れてねぇよ!?」

「わたしにはそんな反応しなかったくせに!」

「妹に見取れる兄がいてたまるか!」

「やっぱり見取れてたんじゃない!!」

「ぐっ!? だ、だけどいきなりあんな──」

 ──と、それ以上言ったら、ますますユイナスを怒らせるだけなのでオレは口を閉じる。

 確かにオレは、ミアの太ももに見とれてしまったのは事実なわけで……!

 ハッキリ視認できるほどに近づいてきたミアは、ユイナスのように下着姿ではなかった。いちおう上半身は、前開きの上着を羽織っていたから。が……

 その下はズボンもスカートもはいておらず水色のパンツ姿! さらには太ももが剥き出しじゃないか!?

 いや……よくよく見ればそれはパンツではなく、ちゃんと胴体を覆う生地にはなっていた。が、しかし……体にピッチリくっついているから、もはやボディラインがあらわになって……あ、だから上着で隠しているのか?

 いやでも……ぶっちゃけ……

 隠しているほうが、なんだか色々チラチラ見えて、エロいんだけども……!

「お兄ちゃん! いい加減にあいつら見るのやめろー!」

「いてぇ!」

 無意識に見入ってしまっていたら、ユイナスが首をグキッと引き寄せるものだから、オレは悲鳴をあげた。

 そんなことをしていたら、ユイナス以外の女性陣も到着したようだ。オレはユイナスに、背後から手のひらで目隠しされているせいで今は何も見えないが──

「あ、あの……アルデ……?」

 ──声音でミアだと分かる。

「や、やっぱり……変かな? この水着……」

「い、いや、変じゃないと思うぞ!?」

 そうしてオレは、上擦った声で言った。

「っていうか今は見えていないが! なかなかに良かったと思うぞ大胆で!」

「だだだ、大胆!?」

「ちょっとお兄ちゃん!? わたしにはそんなこと言わなかったくせに! いったいどういう了見なの!?」

「妹の太もも見たってなんとも思わんわ!」

「妹差別が酷すぎでしょ!?」

 などと言い合っているうちにユイナスの手のひら目隠しがズレて──

 ──向こうには、白いワンピースを着込んだティスリがいた。

 ただし。

「えっと……」

 ティスリが着ているのは、普通の服としてのワンピースだった。

 ちなみにその隣には、黒いブラジャー(じゃなくてアレも水着か)とパンツ姿のリリィが、呆れた顔をこっちに向けているが、とりあえず割愛。

 そしてティスリは──

「い、いやあの……ティスリ……さん…………?」

 ──鬼の形相であった!!

「ティ、ティスリは……水着を着てないんだな?」

 間が持たないのでとりあえず問いかけて見ると……ティスリは、絶対零度の視線、、、、、、、をこちらに向けてくる!

「ええ。あなたに、いやらしい視線を向けられるなんてご免ですから」

「べ、別にいやらしい視線なんて向けてないだろ!?」

「今さっき、ミアさんの太もも見て鼻の下伸ばしてたでしょう!?」

「オレだって男なんだから仕方ないじゃん!?」

「認めましたね!? 今、いやらしい視線をミアさんに向けたことを認めましたね!」

「い、いやだから、それは本能なんだから──」

「お兄ちゃん!? どうしてわたしをいやらしく見てくれないの!?」

「なんだそりゃ!? そもそもお前は妹──」

「アルデ! それはもはや痴漢行為です! 神妙にお縄につきなさい!」

「なんでだよ!? ミアがいやらしい格好してんだから仕方ないだろ!?」

 オレ達が言い合いをしていると、ミアが、耳まで真っ赤にして顔を抑えた。

「い、いやらしいイヤラシイって……もうやめてぇぇぇ……」

 そうしてミアは、か細い悲鳴を上げつつその場に崩れ落ちてしまったものだから……

 オレとティスリは、とりあえず矛を収めざるを得ないのだった。

 ちなみにユイナスは、ずっとギャーギャー騒いでたけれども……

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