[5−18]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?
第18話 このわたし自らが学園中に知らしめたのですから!!
「今日から一緒に学ぶことになったユイナス・ラーマさんです。皆さん、よろしくしてくださいね」
担任の女性教師がそんな説明をしたので、ユイナスはとりあえず頭をペコリと下げる。
いや、それにしても……多いな生徒数!
リリィから事前に聞いてはいたものの、一つの教室に同世代が50人もいるなんて、目の当たりにするとびっくりだわ……それに女子校とのことで当然女子しかいないし。
うちの村なんて、わたしの代から全学年が同じクラスになって、それでも八人だったのに。鼻水垂らした子供と一緒じゃないなんて、世話する手間が省けていいわね。
などと驚いていたら教師が話を続けていた。
「なんとユイナスさんは、殿下やリリィ様とも懇意にされているそうですよ!」
教師がそういうと、教室内が一斉にどよめく。そうして全生徒の眼差しが、羨望のそれへと変わった。
まったく……ティスリと知り合いってだけでここまで羨望を受けるなんてね。あいつ、どんだけ有名人なのよ。っていうかまぁ王女なんだから当然といえば当然か。
でも……
ティスリの影響ってのが気に入らないけど、この羨望は悪くないわね……ふふっ……
「ですが皆さん、あまりしつこく殿下について聞いてはいけませんよ? もちろん、紹介なんてもってのほかです。ちゃんと節度を守ってくださいね」
などと注意喚起がされたあと、わたしは席へと促される。
わたしの席はリリィの隣だった。同じ学校どころか同じクラスで隣の席とか……なんか関わりが深くなってきたわねぇ……
そんなリリィは、なぜか頬を赤らめながら言ってくる。
「学校でも……よろしくお願いしますわね、ユイナス」
「ええまぁ……あんたといると、何かとラクできそうだしね」
「もぅ……あなた、わたしを便利屋か何かと勘違いしてませんか?」
「勘違いじゃなくて、実際にそう思ってるけど?」
「むぅ……」
などというと、リリィがちょっとむくれた感じになる。
……? それはいったい、どういう反応?
そりゃ、わたしたちは利害関係で繋がってるだけなんだから、便利屋みたいなもんでしょうに。そもそもリリィだって、わたしのことを『便利な平民』くらいにしか思ってないくせに。だからといって、心の広いわたしは腹を立てたりしないけれども。
まぁいいか。リリィの心が狭いって事ね。
すぐに授業も始まるということで、わたしはそれで話を打ち切ると前を向いた。
その後、授業はつつがなく進んでいき──
──休み時間になったとたん、わたしはクラスメイトに囲まれていた。
「ユイナス様! いったいどうして、殿下とお知り合いになったのですか!?」
「殿下とはどのようなお話をされているのでしょう!?」
「昨日の殿下は何をされてましたか!?」
っていうか!
殿下殿下うるさいな!?
目をハートマークにしたクラスメイト(たぶんほとんど貴族ね)を見るに、悪意はまるでないようだから、それを無下にするのはさすがに気が引けるけど、ここまでティスリのことを聞かれるのは面倒にも程がある!
教師の注意なんて聞いちゃいないし、むしろ逆効果じゃない!
だからわたしは、ため息交じりに言ってやる。
「そう言われてもね……わたし、アイツに興味ないからよく知らないわよ」
「ええ!?」
そうするとクラスメイト一同が驚きどよめいた。
「ききき、興味がない!?」
「あの殿下に!?」
「あれほど美しく、気高く、神々しいあの殿下に興味がないと!?」
いや………………神々しいってなに?
もはやティスリってば、崇め奉られてるんですけど……
そもそもティスリは、貴族には疎まれているってお兄ちゃんから聞いていたんだけど、この貴族令嬢たちの反応はなんなのだろう?
そう思って、未だ驚いているクラスメイトをよそに、わたしは隣のリリィに話を向けた。
「ねぇリリィ。この子達、わたしが思っていた反応と違うんだけど。わたしてっきり、ティスリの知り合いなら、靴に画鋲の一つでも入れられると思ってたのに」
ティスリが疎まれているなら、その知り合いのわたしだって疎まれるかもね、でもやられたらやり返すけど──などと思っていたのに正直拍子抜けだ。
するとリリィは、なぜか鼻高々に言ってくる。
「そんなの当然ですわ! お姉様の素晴らしさを、このわたし自らが学園中に知らしめたのですから!!」
「………………崇められているのは、あんたのせいか」
「ええ! わたしの成果ですわよ!!」
うん、なんか言葉のニュアンスが違うけど、どぉでもいい……
わたしは脱力するも、あとで話を聞いてみたら、リリィの布教のおかげで、この学園から独立貴族は一切出なかったそうだから……ある意味で、成果といってもいいのかもしんない。
ティスリが聞いたら、すごく嫌がりそうだけど。
あ、そうだ。
この学園にティスリを呼んだら、とてもいい嫌がらせになるかもね! なんとか呼べないかしら……
ということでわたしの学園生活は、思ったよりも平穏無事に開始したのだった。