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[4−35]最強のぼっち王女がグイグイ来る! オレは王城追放されたのに、なんで?

第35話 裏目に出たら恨むに決まってるじゃない!

 お兄ちゃん達から離れると、ユイナスわたしはリリィを睨み付けた。

「ちょっとリリィ! あなたいったい何してるわけ!?」

「えーっと……皆さんを、本島宅へと案内しておりますが?」

「そういうことを言ってるんじゃない! なんでミアを放置してるのよ!」

「ほ、放置と言われましても……何が何やら……」

「あなたの役目は、ミアをどうにかすることでしょ!?」

「そ、そうでしたか? 確かわたしが承ったのは、ミアさんとアルデを二人きりにしないことだったはず……」

「二人きりにならなくても、わたしの邪魔をしてくるんじゃ意味ないでしょーが!」

「それは……そうかもしれませんが……」

 と、ここまで会話して、わたしは違和感に気づく。

 その違和感がなんなのか、具体的には分かんないけど……どうにもリリィが要領を得ないというか、何かを誤魔化しているというか……

「ちょっとリリィ、あんた、何を企んでるわけ?」

「べ、別に何も企んでおりませんが……!? わたしは、ただお姉様が楽しめればそれで──」

「そのティスリだって、ミアのせいで不機嫌極まりないでしょ!」

「そ、そぉでしたか……?」

「明らかに嫉妬してたじゃない!」

 わたしがジトーッとリリィを睨み付けると、リリィは視線を明後日の方に向けて、普段なら絶対にしないような言い分けをしてきた。

「そ、そんなまさかお姉様が、嫉妬なんてするはずないじゃないですか。それじゃまるでアルデの事を好いているかのようですわよ? そんなことあるわけないですわぁ……?」

 どうにも、怪しい……

 このレズ娘が、ティスリの機嫌に気づかないわけない。まぁ……気づいているのになぜあんなにティスリの嫌がることをするのかは謎だけど、気づいた上でいいように解釈しているのだろう。

 いずれにしてもティスリを不機嫌にしているというのに放置するなんて……やっぱりあり得ない!

 いつもだったら、超高圧的な態度で「ミアさん! お姉様が不機嫌になるようなことをしないでくださる!?」などと言って、そしてティスリに「わたしは不機嫌になんてなってません!」と一喝されるはずだ。

 だというのに今日は、どうしてか見て見ぬ振り。

 っていうかそもそも、なんでミアは今日になっていきなりお兄ちゃんに迫るような真似を?

 昨日までは、諦めムード一色だったというのに。

 だからわたしは、ついにあの女狐も、水着になったわたしの魅力には敵わないと知って、お兄ちゃんを諦めたのだとばかり思っていたのだけれど……

 今日になって、いきなりの豹変。

 だとしたら……昨日、何かあった?

 昨日やったことと言えば……シュノーケリングと肝試しだけど……

 ………………あ?

「ねぇ、リリィ?」

「な、なんですの……?」

「そういえば肝試しでは、ミアと一緒だったわよね?」

「……!?」

 リリィの体が、一瞬だけビクッと震える。

 間違いない──そこで何かあったな!?

「あなたまさか……ミアに余計なことを吹き込んだんじゃないでしょうね!?」

「そそそ、そんなことしておりませんが!?」

「じゃあなんで声が上擦ってるのよ!?」

「暑さのせいですわよ!?」

「そんなわけあるか!」

 わたしは足を止めると、リリィにぐっと詰め寄る。リリィは、まるでのけぞるかのように顔を逸らした。

「リリィ……あなたまさか、このわたしを裏切る気じゃ──」

「そそそ、そんな気は起こしてませんわ!?」

「じゃあなんで目を逸らしまくってるのよ!」

「それこそ暑いからですわよ!? ちょっと離れてくださいまし!」

 リリィはわたしをぐいっと押し戻すと、ワタワタしながら言ってくる。

「と、とにかく! ミアさんのことはよく知りませんから! それにあのくらいのことでミアさんをとがめたら、むしろお姉様を怒らせるだけですわ!」

「普段からそれをやるのがあんたでしょう!?」

「どういうことですの!?」

 やっぱり自分のことはまるで分かっていないリリィは、しかし今度は毅然として言ってくる。

「いずれにしましても! 確かに協力するとは言いましたが、それにしたって限界はあります! このくらいのことは大目に見ないと、あなたもアルデに嫌われますわよ!」

「お兄ちゃんがわたしを嫌うわけないじゃない!」

「少しはご自身のことを理解してくださいな!?」

「どういう意味よ!?」

 昼下がりでまだムチャクチャ暑いのに、言い合いをしてきたらさらに暑くなってきた!

 わたしは頬を伝う汗を拭きながら、リリィに言った。

「言っとくけど、わたしを裏切ったらどうなるのか、分かってるわよね?」

「で、ですから……裏切るつもりはありません。わたしは、あなたのためを思って行動している、、、、、、、、、、、、、、、、のですから」

「何を白々しい。貴族なんて信用できるか」

 しかしここでリリィを責めても口を割らないだろうし、リリィが裏切るとも思えない。わたしを裏切ったらティスリに告げ口されて、王都にソッコーで帰されることは分かっているだろうし。

 いや……リリィの事だから、やっぱり二枚舌を使っている可能性も大いにあるけど、ここで言及しても意味はない。それに、今はリリィの権力やら財力やらが必要だ。

「まぁ……いいわ。とにかく、あなたの貴族力でなんとかしてよ」

「いや、貴族力ってなんですの……?」

「とにかく! あの忌々しい女狐をなんとかして!」

「なんとかと言われましても……ミアさんを閉じ込めるわけにもいきませんし……今は、妙な行動を取らないか、注意深く見ているほかありませんよ」

「ぬぐぐ……」

 直接的な妨害工作をミアにしたら、お兄ちゃんの不興を買うのは確かだし……

 であれば……

 ミアをどうにかするんじゃなくて、わたしとお兄ちゃんをどうにかすればいいのでは?

「なら、わたしとお兄ちゃんが二人っきりになれる時間を作ってよ」

「えーっと……どうやって?」

「それを考えるのがあなたでしょ!」

「そう言われましても……」

 リリィはため息をつきながら、再び歩き出す。わたしもそれに続いた。

「そうですわね……このあと、この島の夏祭りに参加する予定ですから、人集りやその流れを利用すれば、みんなをバラバラにすることが出来るかもしれませんが……」

「いいじゃないそれ! それでお兄ちゃんと二人きりにしてよ!」

「ですが、人の流れを完全にコントロールすることは出来ませんからね? 裏目に出ても恨みっこ無しですよ?」

「裏目に出たら恨むに決まってるじゃない!」

「じゃあやりたくありませんわよ!」

 リリィの本島宅に付くまで、わたしたちはああでもないこうでもないと言い合っていたのだけれど、結局いい案は出てこなかった。

 だからやむを得ず、恨みっこ無しの一か八かで、人集りに紛れてお兄ちゃんを連れ出すことにするのだった。

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