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マイクの向こう側
4月に舞台に出ることが決まり、何となく芝居のことを考える時間が増えてきました。
ふと思い出したのが、まだ自分がアレクサンダー・テクニークのトレーニー(教師になるための研修生)だった頃の話。
舞台での演技でアレクサンダー・テクニークを使うことに少しずつ慣れてきていた頃。今も続いている声の仕事でワタクシ困っていたのです。
ちょうどその頃、自分が通っていたアレクの学校には海外から先生がよく教えにきてくれていました。
シアトルから来たマリナーズとイチローが大好きなその先生は、自身も女優でした。
これ幸いと、声の仕事で悩みを話します。
その当時の悩みは
録音のマイクに向かうと、声が出づらくなる。声を出しづらいので、必然声を張り上げることになり、一本調子になる。
というものでした。
本番同様にスタジオでマイクに向かうということは出来なかったので、台本握りしめてアレク教室でいくつかセリフを喋りました。
自分では、(セリフを言うときにどこかに力が入りすぎてるのかな?どこなんだろう?)とか思ってました。
ところが先生から返ってきた言葉は
「誰に向かって話してる?」
でした。
「え?それはこの相手役の…」
「そのマイクの向こうには誰がいるの?」
そこで、はたと気づきました。
舞台ばっかりやってきたので、録音自体にすごく苦手意識があったのですね。無観客、下手すると共演者といない状態に。だから、1人で頑張ろうとしていた。
でも、録音したものは聞いてくれるお客様がいる。その人たちが、マイクの向こうにいるんだ、ということを思い出させてもらいました。
そこから劇的に録音が得意になったわけではありませんでしたが(笑)、少なくとも向こう側にいる未来の観客の喜ぶ顔を考える余裕は出来ました。
今でもマイクに向かう時は、これは誰が聴くんだろう?どんな顔して、どんな反応するんだろう?と考えることから始めています。
アレクサンダー・テクニークはココロとカラダを一つとして考えアプローチするマインドボディワークです。
何か困ったことがあったら選択肢の一つに入れてみてくださいね。
直塚和紀