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【臨床日記】脚長差からの側弯症〜医師の常識ではバイアス〜

本日いらっしゃった方も脚長差からの側弯症を強く疑いました。
もちろん医師の診断ではそんなことは触れられていません。
レントゲンでも明確に骨盤の挙上が認められるのにです。

今回は承諾を得なかったので、画像などは提示できませんが、歩行では骨盤挙上側に乗り上がるような現象が見られ、その時に肩甲骨の下制と共に胸部の凹側が強く出現していました。

スポーツ歴がテニスというのも影響していると思います。

脚長差が8ミリ認められましたので、補高してさらに右肩甲骨の下制を促すことで、その凹側の潰れは認めなくなりました。

側弯症は、凹側の圧縮によって悪化します。
側弯トレーニングの原則は、圧縮させないということです。

ですから、歩行で潰れを認めた場合、必ずそこの部分は修正をしなければいけません。
障害は、小さな力の蓄積で起こりますので、長期的には側弯の悪化に繋がってしまいます。
側弯症の早期発見が難しいのは、気にならないくらいの圧縮力の積み重ねだからです。
急激にというよりは、日に日にというのが現実でしょう。

もちろん体幹の安定化は必須条件ですので、体幹機能が乏しい思春期に悪化が目立つというのも頷けます。

自重を支えるプランクが耐えられないという方もいらしゃいます。

側弯症は結果であって、そこに至る機序やメカニズムは一つではありません。
とても個性に富んでいます。

しかし、医学は個性を無視しようとします。
個性はバイアスになるからです。
そうやって、無理やり全体の原因を定めようとすると都合のいい「遺伝」という話に落ち着きます。
思考停止にできるからです。

遺伝が原因だから、個性はバイアスとして無視していいよと。
どうしようもないのだから手術で固定する以外にないだろうという結論になります。

膝痛や股関節痛を「老化」と言い捨てるのと同じ思考過程です。

今の医学には個性を尊重するという視点が欠落しています。
本来は、患者さん一人一人の個性に合わせて問診し、検査し、その個性にあった対応方法を提示するのが医療でしょう。
病気についてもそのメカニズムや予後、今わかっている原因や悪化要因について、また今報告されている術後の後遺症の可能性、、、などについても解説が必要ですが。
しかし、全くされていないという方もいます。

角度だけ見て、
「これは手術だね。早くした方がいい。悪化するよ。」
「保存療法は効果ないから、しなくてもいいよ。無駄無駄。」
「手術したら治るから。」
ほぼ同じようなことを説明されている方ばかりです。

今は側弯症に関しては、決まったセオリーをエビデンスという都合のいい概念を患者さんに当てはめるの医療になっています。

患者さんは科学的な情報や側弯症の疫学について、その事実を解説するだけでも安心して、涙を流されます。
医師からそのような説明は一切受けなかったと言って。

これが現実です。
別に医療ジャーナリストでもなんでもないですが、患者さんの尊厳や権利が蔑ろになれているのが側弯症の現実なのです。

  • 個性はバイアスだから、エビデンスにならないよ。そんなことにいちいち対応していたら診療時間がいくらあっても足りないよ、、、。1日に何人見てると思ってるんだよ。

  • 理学療法士じゃないんだから、歩行や脚長差なんて見てられないよ、、、。そんなの側弯症とは関係ないでしょ。どこにそんな論文あるの?

  • 外科医なんだから保存療法に時間を割く余裕はないよ、、、。

外科医としての医師の立場もよくわかります。
僕も、同じ医療者として否定はしていませんし、外科医としての専門性も理解しています。
手術が必要な方ももちろんいます。

ただ、今日の方のように患者さんが納得いっていない現状もあります。
そのような涙を見ている者としてこの現状を表現しないわけにもいきません。
あまりにも患者さんの置かれている立場が理不尽です。
というか、システムとして欠落しています。

もちろん、側弯トレーニングをご理解いただき、医療保険下で運動療法を提供されているクリニックなどもあります。
本当に素晴らしい活動だと思います。
ただ、まだまだマイノリティです。

このブログを書いたところで、世の中にはなんの影響もないかも知れません。
でも、側弯症に関わる方にとって、何かの気づきや参考になればと思っています。

僕はもっと、側弯症についてフラットに意見交換すべきだと思いますし、患者さんたちももっと声をあげていいと思います。
また、学校検診含めて、側弯症についての説明を誰かがすべきです。
本来は僕ではなく医師がすべきです。
でも、保存療法を含めた解説ができる方が少ないというのが問題なのでしょう。
やはり外科医中心の中で、保存療法はマイノリティです。
そういう意味ではリハビリテーション科の医師など、整形出身の方で、そのような志がある方に発信してもらえるといいなと思っています。

また、思春期の子供にはメンタル的なフォローも必要です。
検診で指摘しても、遺伝だからどうしようもない、経過観察してあとは手術だけでは不安を煽るだけです。

僕がまとめた側弯トレーニングは怪しいことなどはしません。
科学的に考えて当たり前のことしかしません。
重力に勝つ体幹の力、凹側を潰さない工夫、変形を助長するストレスの軽減、、、。
患者さんに説明すれば、皆納得してくれます。

遺伝を疑う場合もあります。
でもそれ以上に習慣を疑うこともあります。

今の医学論文は医師の視点に偏っています。
脚長差についても同じです。
まだまだ理学的な視点での論文は少ないです。

僕もまだ社会人の院生でありまだまだ力不足です。
研究に関しても、どなたか興味を持って側弯症の研究をしてくれるところがあればいくらでも協力します。
ゲンシンゲン装具も、シェノー装具も既存の装具に比べて格段に効果があります。
こちらも残念あがらまだ日本ではマイノリティです。

鎖国状態の日本の側弯症治療をあと10年で国際レベルに持っていきたいですね。
僕は、来てくれる方の力にとにかくなれるよう、日々臨床で向き合っていきます。

患者さんが悔しくて、不安で涙を流さなくてもよくなる日が来ることを信じて。
個性はバイアスなんていう医療じゃなくなる日を信じて。

病院作りたいなぁと何度も思います。

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Naoto
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