脚長差をあなどってはいけない
【脚長差とは?】
左右の脚の長さが違うことを「脚長差」と言います。
よく民間では骨盤が歪むと脚の長さが違うとか言いますが、医学的には以下の二つに分けられます。
・器質的(構造的)脚長差:骨格が原因
・機能的脚長差:骨格以外が原因
器質的脚長差は主に以下の原因で起こります。
・成長期の過剰な荷重刺激による成長抑制(ヒューターホルクマン則)
・骨折などの外傷後の後遺症
多くの場合、スポーツ動作が影響していることが多いです。
機能的な脚長差は主に以下の原因で起こります。
・足の状態 例)片側のみ扁平足
・膝の状態 例)片側の膝が伸びない
・股関節の状態 例)骨盤が左右へシフトしている為股関節が内外転している
臨床では上記の様々な原因を念頭に置いて検査や評価を行います。
【脚長差の弊害】
机や椅子を想像してもらえれば分かると思いますが、脚の長さが違うといえば土台が傾くということですね。
人の場合は骨盤です。
骨盤が傾けば当然腰椎も側屈します。そうするとその影響はずっと上まで続きます。
ということは、首肩が凝るとか、腰が痛い、股関節に左右差を感じる、膝が痛いなどなど多種多様な歪みを生じて障害が起きてもおかしくありません。
実際、数年来の腰痛に悩まされて、どこに行ってもよくならなかった方が脚長差を是正しただけでその場で痛みがゼロになるということもありました。
先日7名の方を見せて頂きましたが、そのうち脚長差があった方が4名。一人の方は学童期の骨折が原因で9ミリも違いました。補高用インソールで是正した途端に別人の様な歩きに変わり感動されてました。これが歩くっていう感覚なんだ!と。
【現状の問題点】
現状、医療保険下では3㎝以上の差でなければ是正する必要はないとされています。3㎝ですよ。驚きませんか?
確かに根拠はあります。
健常者を対象とした呼気ガス分析や歩行速度、ケイデンスなどのパラメーターでは3㎝未満では差が出ないのです。
でもこれって小学生でも分かると思いますが、うまく代償しているということですよね。机が傾いているという事実自体は変わらないわけですから。
僕たち理学療法士は重心の変位や関節にかかるストレスを見ています。また、外傷とは異なり「障害」という小さなストレスの蓄積によって引き起こされる症状を見ています。
脚長差が3㎝未満は問題ないという報告には愕然とします。
もちろん一方で素晴らしい報告もあります。
東海大学医学部生理学教室の三好基治先生の報告(体力科学,1986,35,200〜208)では、大学の陸上選手52名を対象としてレントゲンで脚長差と骨盤傾斜、腰椎の側屈角度を測定しています。
すると驚くことに9割に平均6㎜の脚長差を認めています。脚長差と骨盤傾斜には正の相関が認められ、骨盤傾斜と腰椎側弯も密接な関係が認められています。
医療保険下では、残念ながらこれらの報告にある様にスポーツの影響でできている9割6㎜の脚長差は相手にしてくれません。
このままで歳をとったことを想像してみて下さい。当然今度は腰椎などが変形してきます。
ですから、僕は3㎝未満の脚長差の方々を救おうと補高用インソールを作成しました。サポーターも作りました。もちろん保険外です。
僕だけでなく、脚の長さを測定できる専門家を養成すべく「脚の長さコーディネーター」という資格も作りました。
【具体的な対処法】
補高用インソールを靴の中敷や、靴下の中に入れてもらいます。専用のサポーターを使えばサンダルや裸足でも補正が可能です。
よく質問される項目をまとめました。
Q:インソールをつけ続けていると治りますか?
A:大人は変わることはありません。メガネと一緒と思って下さい。ただ、成長期の子供の場合は、補正すると徐々に脚長差が整ってくるという報告があります。ちなみに、補正しないと増悪すると報告されています。
Q:入れていて違和感があった場合はどうしたらいいですか?
A:インソールのいいところはすぐ外せるところです。体にとっては補正といっても急激に環境が変わるので、上半身含めて慣れるための時間は必要でしょう。違和感や痛みが出た場合は外して、徐々に慣らせる様に様子をみて下さい。
Q:なぜ踵だけの補高なのですか?全面的に補正しない理由はなぜですか?
A:全面的な補正でも構わないのですが、爪先立ちになれば長さは補正できるので、補正できない踵のみインソールを使用しています。また、全面的な補高では靴がキツくなってしまうという弊害もあります。
Q:何㎜までインソールで補正可能ですか?
A:基本的には9㎜までだと思います。それ以上ですと靴から踝(くるぶし)が出てきてしまうことがあり不安定になってしまいます。ハイカットであれば可能だと思いますが、、、。1㎝以上はアウトソールといって靴の外を補高する方法がいいと思います。ただ、靴屋さんでの対応になり一足1万円くらいの負担となる場合があります。
補高すると一気に歩き方が変わります。後姿ということで承諾を得ていますので写真ですが一例を紹介します。数ミリの変化でこの変わり様です。
【専門家】
補高のミリ数などは、姿勢や骨格の評価と必ず歩きの分析をして決定しています。素人考えで適当に補高することは逆に障害を起こしかねません。
必ず理学療法士や脚の長さコーディネーターの様な専門家に見てもらって下さい。
もちろん僕が運営しているピラティスのstudio TAKT EIGHTで対応可能です。
病院やクリニックでは前に述べた様に3㎝未満は相手にしてくれない所がほとんどです。治療指針としてそうマニュアル化されていますので、整形外科の先生が悪いわけでもなんでもありません。ただ常識になっていしまっているということです。
中にはリハビリテーションに力を入れていて対応してくれるところもあるかもしれません。
この記事が脚の長さが原因で困っている人に届けば嬉しいです。
当たり前の予防医学はまだまだ課題がたくさんです。スポーツが大きく影響していますので、その点も予防医学的には改革が必要なところです。そのことに関してはまたの機会に。
少しでも多くの方にこの現状と対処方法をして頂きたいです。
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