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アビイ・ロード・スタジオを訪れた時のこと

1998年の夏、アビイ・ロード・スタジオを幸運にも見学することが出来ました。一生忘れられない体験だったし、自分のためにもここに記録しておきたい。

自分の顔を晒すのは嫌だけど証拠なので(笑)

最初はストーンズのロンドン公演を観に行く予定だったんだけど、ツアーが翌年に延期。その時期に夏休みを取ってたのでイギリス一人旅になった。インペリアル・ホテルに滞在し、ロンドンをあちこち回り、リヴァプールへも行った。

IMPERIAL HOTEL
ブライアン・ジョーンズやシド・ヴィシャスも泊まったことあるらしい。恐っ!(笑)

アビイ・ロードはSt. John's Wood駅から歩いて数分です。見学の前日に下見もしたので経路はバッチリ覚えました。当時はスマホもGoogleマップもありませんしね。

地下鉄St. John's Wood駅

着いたらいきなりあの横断歩道が現れ感動。記念写真撮る人が多くて、車も止まってくれます。

壁には落書きだらけ。後から聞いたけど、あえて白い壁にして落書きは容認しているそう。定期的に消すそうです。世界中から愛されるのを分かって、心が広い対応です。

こんな風に皆んな落書きしていく

正門から中に入る。入り口のドアの前に「入れるのはここまで。ここから先は許可された人だけです」みたいな事が書かれてました。つまり、玄関までは入っていいですよ、記念写真とかもどうぞ、ということ。全世界からロック・ファンが訪れるから、こんな太っ腹なことをしてくれる訳です。ただ、ポールとかU2、エルトン・ジョンみたいなビッグ・アーティストが来ることになってたら厳重な警戒態勢でしょうし、今はセキュリティ厳しくて入れないかもですね。実際僕が行った日もレコーディングが入ってなかったので訪問を許可されました。実際は敷地の中まで入る人はさすがに居ませんでしたけどね。でも「Abbey Road Studios」と書かれた看板見た時は胸いっぱいになりました。
【追記】
現在は敷地内には入れないようです。

こういう写真もスタッフの方々気軽に撮ってくれる。素敵な方ばかりでした。

こちらはビートルズ。アルバム「ABBEY ROAD」の頃。

ABBEY ROADのSuper Deluxe Editionのブックレットより

こちらはビートルズがデビューする1962年(アビイ・ロードのスタジオ公式インスタより) 

上のロゴは定期的に変わっているようです。今はこんな感じ。

Abbey Road Studios公式FBページより

スパイス・ガールズがレコーディングで訪れた時は90年代なのでロゴが一緒ですね。

並べてみた(笑)


玄関のドアを開けて名を名乗り、「エンジニアのミスター◯◯さん(以下Dさん)にアポイント頂いてます」(この英語、行く前に何度も練習した)(笑)と言うと、中に通されました。お土産の博多人形とビートルズの日本盤シングルを渡すと、とても喜んでくれました。

渡したのはこれじゃないけどイメージです(笑)

スタジオ1(主にオーケストラ用)から順番に案内してくれました。英語はバリバリ得意という訳ではないけど、音楽やビートルズの話が中心だし知識もあるので、解説はすんなり理解出来ました。英語を真面目に勉強しといて良かった(笑)。スタジオ1が終わり、「もちろん知ってるだろうけど、ビートルズが有名にしたスタジオ2だよ」と!踏み入れた瞬間、「ビートルズと同じ空気を吸った」と思いました。

THE BEATLES ANTHOLGY(本)より


アビイ・ロード・スタジオは、輝かしい功績が中心なんだけど、80年代のデジタル・サウンドが席巻してた頃は、時代遅れのスタジオみたいな言われ方で、存続の危機に瀕していたそう。Dさんが、こんな話をしてくれました。


一時は博物館にするという案もあってさ。それが、OASISとかブリット・ポップの連中が救ってくれたんだよ。スタジオに来て『スゲェ、ビートルズが使ってたノイマンのマイクがあるぜ!』ってな調子で喜んで使ってくれてさ。60年代からなるべくそのままにしてたんだ。あのピアノもそうだよ。君もビートルズ好きだろ?ポールが弾いてたのを見たことあるだろ?


この時「カメラ持って来たか?」と聞かれたので、撮影禁止と言われるかと思いきや、「あのピアノの前に座りなさい。写真撮ってあげるから」と!めちゃ感激しました。

弾くポーズまで撮ってくれました
後ろに当時のアビイ・ロード・スタジオのロゴが見えますね


スタジオ2でピアノを弾くポールとメンバー。

アンソロジー本より


ここから階段でミキシング・ルームへ。上から見る光景がかつてビートルズ本で見たのと同じでさらに感激。

階段の上の方からスタジオを見下ろす
ビートルズのレコーディング風景

こんなことも言われてました。


スタジオ内部も機材も当時から殆ど変えてない。それで復活出来たんだよ。日本のメーカーがデジタル機材を売り込みに来るけど、導入してないんだ。


60's的なアナログで温かみのあるサウンドを大事にした来たからブリット・ポップのバンドマン達に愛されたんだな。

この辺りから写真撮ってません。目に焼き付けて記憶に残そうと思ったので。こちらは現在のミキシング卓。

公式FBページより


スタジオ3やレコードのアセテート盤(正規盤を作る前のテスト盤)を作るカッティング・マシンなんかも見せてもらいました。廊下には沢山のゴールド・ディスク。すべて見終わってエンジニアのDさんにお礼を述べてスタジオを出た後も「これは現実だったんだろうか?」と夢見心地でした。

スタジオの中を見て話を聞いて、伝統を重んじるヨーロッパの良さを十二分に感じました。世界中の音楽ファンから愛されてるのを誇りに思っている。

こんなに落書きされるほど愛されてる。
誰だよ、「徹」って(笑)

アビイ・ロード・スタジオのドキュメンタリーを以前観たことあるけど、音が変わってしまうかもしれないからと、壁の色すら変えたりしないそうだ。リアム・ギャラガーもスタジオ入りする時は「朝から着ていく服を考えた」そうだ。気合いを入れてたと。それだけ特別なのです、アビイ・ロード・スタジオは。自分にとって最高の音楽体験の一つですね。帰国してから、案内してくださったエンジニアのDさんにお礼の手紙を書きました。「おかげさまで最高の、音楽巡礼 “music pilgrim" の旅が出来ました。ありがとうございました」と。


翌日行ったリヴァプールのことはこちらに書きました。


※記載したことは1998年なので現在はスタジオの運用方針やルール、仕様など変更されている可能性もありますし、記憶違いもあるかもしれません。ご了承ください。

my note #140

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