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「のらくろ」が子ども達のヒーローだった訳


「のらくろ」が漫画であること
そして、戦争ものであることはなんとなく知っているが
その内容はほとんどわかってなかった。
「のらくろベーゴマ」を手に入れたことで
少し、のらくろのことを知りたくなって
復刻版を購入してみた。

原本の初版は昭和7年(1932)11月30日

満洲国建国や、ルーズベルト大統領就任、ナチスの台頭、5.15事件など歴史的な事件が多い年である。

ここには
凸凹黒兵衛の文字が!
くろべえは
どんぱっぱのときに書いた。

のらくろは天涯孤独


のらくろは猛犬連隊に入隊し、
はじめ二等兵からはじまって、だんだん昇進して階級があがっていく。

いちばんはじめのコメントには
のらくろの生い立ちと、入営にいたった理由が書かれている。


野良犬黒吉、これがのらくろの本名です。
お父さんもお母さんもいない宿無しの野良犬の黒吉は、かはいさうな仔犬でした。

「艱難汝を玉にす」と諺にもあるように、のらくろはどんな辛いことにも悲しいことにも我慢して、いつも明るい心持ちで、元気に尻尾をふっていたのです。

のらくろは
世界一の名将軍になろうとおもったのです。

いまでいう、
キングダムの孤児だった信が「天下の大将軍になる!」と言うてる感じ。

艱難汝を玉にす…さまざまな苦労や逆境であり、それが人を磨いてくれる

決して恵まれた身の上ではないながらも
今の辛い状況に屈するのではなく、
たちむかって、(しかも面白おかしく)出世していく
子ども達からすると
自分たちの憧れを重ねることができたのかもしれない。

お話はギャグ漫画に近い

はじめて、
ちゃんと内容を見たが、
内容はギャグ漫画の要素を持っている

ただし、時代が時代であるから
お国の批判にならない程度である

作者の田河水泡先生は
弟子にサザエさんの長谷川真智子先生がいるので
なんとなく、お笑いの感じは似ている感じがする。

よく寝てて、なんとも愛嬌があるから
みんなに愛される感じ

洗脳

そして、
戦時中ということもあり
戦争を正当化し、子ども達に憧れを抱かせる役割も漫画の中に入っている。

このシーンは
間違いなく、「爆弾三勇士」をオマージュしたものだ。

爆弾三勇士とは、独立工兵第18大隊(久留米)の江下武二(えした たけじ)、北川丞(きたがわ すすむ)、作江伊之助(さくえ いのすけ)の3名の一等兵である。1932年に第一次上海事変で敵陣を突破して自爆し、突撃路を開いた英雄とされる。肉弾三勇士とも言われた。

当時、この3名は英雄とされ
映画や爆弾三勇士の歌もでき、
グリコのおまけにもそのモチーフがつかわれた

爆弾三勇士が亡くなられたのが2月22日、
こののらくろの発売日が11月30日
急激に英雄化されているのがわかる

どちらかというと、
時代によって美談に仕立て上げられたといってもよい。

国や部隊の名誉のため
死ぬことが良いこととと漫画でイメージづけている感じ。

そしてこのシーンには
土人表記の原住民が「海賊」とされのらくろに全滅されるシーンがある。

基本的に
のらくろは猛犬連隊に所属していて、
敵として出てくるのは
犬猿の仲である「猿」や「ゴリラ」であるが
このシーンは明らかに「人」

いまでこそ
なんだか違和感を感じるが、

今の鬼滅の刃で
鬼達を正義の元に殲滅させるのも
キングダムなどで殺略シーンがあるのも同じなのかもしれないが

原住民であっても
敵である可能性がある場合は
殺してもいいと言わんばかり

時代と背景がわかっているだけにさもそれが正義であるように、妙な生々しさを感じてしまうのである。


のらくろ玩具

私が持っている
のらくろ玩具は
「のらくろベーゴマ」

「地雷」
の二種

どちらも
第二次世界大戦より前
こののらくろブームの頃に作られたのもであろう。

いつだって
男の子は
たたかいものが好きで
常に見えない誰かと戦っているし
長い棒を持てば振り回したくなり

鉄砲や刀などの武器玩具が好き
戦争ものは
いつだって人気なのにはかわりはない。
そんな
本能にすりよって

可愛いキャラクターをつかいながら
戦意高揚につかわれた
田河水泡先生だって、
ほんとはこんなふうに使われたくなかったと思う。

平和な時代なら
シンプルに
トムとジェリーのような
おかしな黒犬とブルドックたちの
凸凹コメディだったのかなぁ。
きっと舞台は
猛犬連隊でなく、
当時のどこかの町の路地裏で
野良犬と、野良犬の群れや、飼い犬との
お話だったかもしれない。

内容に違和感があるのは
今の時代にいる私たちからみた戦争だからであり
今も、ルパンは泥棒で
アンパンマンにしても
キングダムにしても
ドラゴンボールにしても
戦いもんであることに違和感を感じるわけではない。

同じ戦争ものなのに、
キングダムとかより違和感を感じるのはなんでやろか

生々しい背景をかけらだけ
しっているからなのか、
けど
「犬」やけどなぁ。

いまのこどもは
どう感じるのだろう。

かつて、こののらくろ玩具で遊んだ子ども達は
常に完璧ではなく
凸凹でいて、
それで愛されながらも出世していく
のらくろに
じぶんだって
戦地で活躍するぞ
という
ヒーローと自分の憧れを重ねていたのかもしれない。

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