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ベーゴマ型の作成方法から(ベーゴマ考87)

先日。
川口郷土資料館の井出先生と考察した
元型考

それを井出先生が
伝道師の中島さんに話をしたところ
興味深い話をききだしてくれた。

中島さんと辻井社長は
つっつけばつっつくほど
ベーゴマの重要な歴史がでてくる。

しかも、かなり重要なやつ
なので、ここに記しておく。

関東の元型ができるまで

私たちの考察としては
関西の銭づくりのような枝でつながる
葡萄型ではなくて
関東はこの独楽と独楽の八角形の
辺同士がつながる形にしたことで
量産を可能にしたとしたが
実際はそんな単純なことではなかった。

中島さんの話によると

辺で交わっているわけではなくて、
わずか1mmくらいの幅で、
隣のベーゴマと距離を空けている。
あの部分が厚いと隣同士のベーゴマが離れない。
かといって、
薄すぎると湯が流れない。
だから、幅を広くして、
流れる湯の量を増やしているのと、
厚すぎず、薄すぎず、絶妙な厚みで
木型を彫っている。

1個分の木型を彫ったら、
それをもとに樹脂で寸分たがわぬコピーを作る。
そのコピーが並んだ元型をつくって、
次の金型職人に渡す。

金型職人は、
もらった樹脂型をもとに、金型を作る。
しかし、
金属にするとサイズが若干縮むため、
木型職人は、金型にしたときに縮む分を計算に入れて、経験と勘で少しだけ大き目に作る。

ところが昨今は3Dプリンターで元型を作れちゃうから、木型職人が激減しているんだそう。
次世代のなり手もいないし。
失われゆく技術です。

これに支えられたのが、関東流の木型からつくるベーゴマ。

むちゃくちゃ、すごい。
というか
どうやって元型を作るのかは考えたことがなかった。

効率的関東木型技術・製法が関西に逆輸入されなかったわけ

井出先生と中島さんが
なぜ関西から関東にはいったベーゴマ文化
後日、関東の技術革新が関西に逆輸入されなかったかを
考察した

説①そこまでの木型職人がいなかった
説②井出先生の推測(個人的な希望です)は、飛鳥時代から続いた貨幣鋳造の技術にプライドがあった!

個人的には私も関西プライド説
「なにいうとんねん。こちとら上方が、バイまわしの原点じゃ」を推したいところだが
少し推測を進めてみる。

もう一度わたしがもっている
関西バイの元型画像から、いつの時代の元型かを推測する

こちらは赤中型の文字変換である。
赤中メンバーは前後の一番初めのプロ野球人気を支えたメンバーで
王・長嶋のひと世代前。2人の時の監督が川上である。
関西の型では
「川上」の三本の縦線がまっすぐなことが特徴である。

小鶴誠(和製ディマジオ)1942〜58
藤村富美男(物干し竿)1936〜58
西沢道夫(初代ミスタードラゴンズ)1937〜59
大下弘(青バット)1946〜59
川上哲治(赤バット打撃の神様)1938〜58
別当薫  1947〜57
青田昇(ジャジャ馬)1942〜59

年代はプロ野球に在籍していた時期
各自あだ名がつけられるくらい活躍したスーパースターだからこそ
この赤中メンバーの型からは
つくられた年代を確定しずらい

つぎは球団型だ
関西の型なので関西球団が多い
私はほんまはこれが欲しかった。
(この時オークションに出た型は全部で10万弱になったので落とせなかった)
こちらは

この型の表記のなかで
このうち、巨人・阪神はいまもあるから除外

松竹ロビンズ(1950年〜1952年)
南海ホークス(1947年〜1988年)
阪急ブレーブス(1947年 〜1988年)

おぉ!
松竹!!
ありがとう松竹

ということは
型によってつくられた年代が違うかもしれんけど
この型は間違いなく1950年から52年の間に作られたことはわかる。

このころは
球団が再編により乱立したにもかかわらず
ベーゴマがそれぞれの球団で残っている

ということは
裏を返せば
型を作っても元を取る勝算があったから
球団が変わってもすぐに作ったと言うことだ。

それだけ
ベーゴマが売れていると言うことだ。
まさにベーゴマ全盛期


赤中や球団など同時期のベーゴマ型が
関西型にも存在すると言うことは、
関東の大量生産手法を
知っていても導入できなかった
か、
あえて、導入しなかった

関西に関東の型の手法が移動しなかったのは
新しく型を作るためには
費用も技術もかかる筈だ。
型だけではなく、外枠などの形も変える必要や
システム(鋳造方法)もなにかしら違うかもしれない。新しい職人も探さないといけないかもしれない。
いままでのやり方のまんまのほうが
職人さんもそろってるし
たとえ鋳造数が少ないままでも
あたらしい技術の型をいれるよりも費用対効果が高いとの判断であろう。
…あとプライドとw

というわけで第3の説
③あくまでバイ作りはメイン産業ではなくオマケであり、単価も安い。
この型を作った当時のベーゴマブームは関東にうつっており、そこまで大量に作る新しい技術を導入する費用をかけるメリットまではなかった。

こんな感じかなと思う。



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