大人の本気(ベーゴマ考37)
数々のベーゴマを見てきたが、
基本は子どもたちは自分の力をで
どのような加工を施せば
より強く、よりかっこよくなるかを研究した。
そのなかで、たまに
明らかに子どもの力じゃないものが存在する。
「蒸着」
寄贈していただいた、葛飾のA氏との話の中で「蒸着」がでてきた。
A氏の話
『色鉛筆はみんなが持っていましたし、クレヨンではすぐなくなってコスパが悪かった。
裕福な家の子は親のパステルとかプラモデル用の塗料を使って字のくぼみを埋めて更にクリアラッカ-を塗るなんて強者も一人いました。
あとお送りした中にもありましたがローソクをたらしたり、粘土、真鍮をとかして落とすとか。町工場だらけだったので、蒸着なんかも大人に頼みました。
蒸着は10才頃に隣町の工場でやってもらいました。メッキ工場です。確か説明も受けました。スズだか亜鉛だか忘れましたが気化させて吹き付けると聞きました。当時のメッキは溶かした溶剤や金属に品物を入れてメッキするのが普通でしたから当時としてはしかも小さな町工場としては先端だと聞きました。とてもきれいで滑らかでした。
実際の蒸着ではないと思います。
イメージが近い物をお送りします。
メッキの方が厚いイメージで
蒸着は薄いイメージ、何回か繰り返すとメッキに近くなりました。
メッキしたものはツルツルで、1回の蒸着は扱う金属にもよりますが少々ざらついていることもあったと思います。金とか銀のマジックを全くムラなく塗った感じ』
「蒸着」とは、物質を蒸発させて膜を形成する方法を意味し、素材の表面にコーティング成分を付着させるための表面処理技術のひとつとして知られている。
私はA氏からの話ではじめて
蒸着なるものをしった。メッキの薄い皮膜のようなものなのか
寄贈された葛飾コレクションと
今回手に入れた芯付きバイの中に
「蒸着」っぽいものをみつけた。
しかし、これは
ただ金のラッカーを塗っただけかもしれない。
ほんまもんの蒸着を見に行くしかないとおもっている。
金属加工
ある時、オークションで落としたベーゴマの中に異質という呼び方が相応しいものが混ざっていた。
昔、六角のボルトの先を加工してベーゴマにする者がいたという情報があったが
これは明らかに
金属用の旋盤で、削り出されてつくられたものだ。
①の旋盤加工ベーは
薄いものと鬼のようにとがらしたものを上下で接着している。
対戦によって、薄いものを下方に回せば、上からの攻撃、(ガッチャキ)などにはそのトンガリ形状でいなせるであろう。
とんがった方を下にすると、突き上げられやすいためそこまで強くはない。しかしながら
威圧感は抜群にある。
つぎに、②旋盤加工ベーは
サンガンの加工ベーと同じ大きさをしている。
サンガンの、加工ベーとは
こち亀でもたびたび登場する、高王、ペ王
中王といった、大きいサイズのベーゴマ(サンガンベー)を通常使用のサイズまで削り込んで、バレないようにホンコ勝負で使ったものだ。
肉厚な金属のため、ベーゴマ同士であたる接触面も大きく、当然強い。
この旋盤ベーもそれを模して作ってもらっものであろう。
今の時代、町工場と子どもたちには
なんとなく大きな距離がある。
きっと、
仕事の邪魔にならない時間帯を考えて、
「おっちゃん、これ加工してくれんか?」
などと話する
交渉力、コミュニケーション能力、場を読む力
そして、細やかな
加工をしてくれる
後ろ姿は、働く大人に対する憧れにもなったであろう。
蒸着の原理を説明しながら
こどもの遊び道具であるベーゴマを加工する姿は
実に粋な姿をそうぞうする。
きっと
子どもたちだけでできない塗装や最新技術を施したベーゴマはみんなからきっと羨望の眼差しでみられたことだろう。