ベーゴマのでっぱりの科学(ベーゴマ考98)
バリとは
ベーゴマを鋳造した際に、溶けた鋳物が流れてくる湯道とベーゴマが繋がっていたところを
「バリ」と呼ぶ。
人によっては「ヘソ」とよんだりするが
確かにメインの湯道から繋がるところは
「へその緒」みたいではある。
「ひょっとこ」のバリ
長年、面バイの鋳造方法がいまいち分かってなかったが、
先日、買った「ひょっとこ」に
バリがあったのだ。
「ひょっとこ」には、上部に二つ巴がある
家紋で言うと「左二つ巴紋」となる。
上部と底部にそれぞれ模様がある場合は確実に上下の型があったことになる。
ひょっとこにある半円形のバリと上下の模様から
私が持っている関西の元型のような葡萄型の元型があったことを示している。
狗(いぬ)
次に岡本さんがもっていた、「狗(いぬ)」と呼ばれるもの
こちらは、反対側に「肉弾三勇士」が描かれていることから、
1932年以降、1933年から35年くらいの鋳造であることがわかる。「面バイ」の製造年は
この頃がメインなのだろうか
もう一つの可能性として
大正期くらいに、おかめや力士などはつくられ
それから昭和になって、
日中戦争の戦意高揚のため、数種が作られたものの、日中戦争の長期化に伴い進み、1941年8月30日に「金属類回収令」が公布され、同年9月1日から実施されたことにより、製造数が少ないものがあるとしたらしっくりくるかもしれない。
これがなぜ「狗(いぬ)」と呼ばれるかは
…忘れたw
誰かに聞いたんだと思うが、どうだったかな
とりあえず面バイに関する資料は少なく、
その中でも「狗」と「鬼」は出てこない。
絶対数が少ないような気がする。
この狗もよくみると、
顎の下に「バリ」が確認できる。
裏表がある故に当然ではあるが、
また岡本さんのとこにいって、見せてもらわなあかん。
鬼
つぎは「鬼」のバリを見てみよう。
鬼の現物は確認しておらず、
資料でしか見ていない
鬼とされているが、
この画像の他の資料は皆無であり
たしかに牙がある…程度なかんじ
資料の画像を見る限り顎の下に
バリが確認できる。
現物を見てみたい。
誰か情報求む
「オカメ」と「力士」のバリ
先日手に入れた「オカメ」
裏面は真っ平で、インクがのっている
これは鉛メンコにもみられた。
バイ回しとして戦った時に、双方とも
鉄の色の場合、自分のものがわかりにくい。
そのため、もともと色をつけていて売っていたと思われる。
そして、力士も裏側は真っ平でオカメと同じようになんもない。
もしかしたら、
泥メンコや鉛メンコのように
型にいれて上から溶けた鉄を流し込み
そのまんまつくったのか…?
こんな感じで!
とおもったけど、井出先生がおっしゃるには
この形で鋳造すると
上の写真のように、流し込んだ金属が中央部で少し凹む。これは鋳造するときにぴったりの量の鉄を入れると、冷えて収縮したときにできる凹みらしい。
オカメと力士の面バイには
この凹みがない
ということは、上下の型で整形された可能性が高い。
そんななか検索で出てきた
日本玩具博物館の
この写真の
ここに注目!
これはオカメではあるが、そのまわりに縁がついている。これは鋳造の時に型のズレなどで
できたミスである可能性が高い。
なんと言うレアの中のレアをお持ちでw
そんなこんなで
井出先生の持っている
力士とオカメの横から写真をとってくれた。
(私のベーゴマは某企画により出張中)
バリあるやんw
しっかりと!しかも力士のバリは半円形だが
オカメのバリは台形っぽい
横から見るとあきらかに
力士を形成する際に必要な湯(溶けた鉄)量と
オカメを形成する際に必要な湯量がことなる
オカメのバリが太い台形なのは
一気に湯を入れて、上まで充填しなければならないから、湯の通り道も太くしている、と思われるそうだ。
給湯タイプのお風呂を沸かすイメージで、
バリの位置から察するに、下(もしくは上)から湯が入るわけです。
途中で温度が下がって固まってしまうと、詰まってしまう。
熔けた鉄は水とは違い、ドローっと入っていくので、上まで到達せずに固まると、顔面がつぶれてしまいます。
玩具博物館の面バイはまさにその失敗例の
レア中のレアではないかと思うのです。
はいるバリの太さが違うということは
力士、おかめ等それぞれの型が存在したということである。
ひとつの型に、太さや形のちがう湯道を切って、別々のデザインの面バイを鋳造しようとするとは考えられないです。
というのも、湯道の太さや大きさ、鋳造したい製品の厚みや大きさが違うと、鋳物職人は湯を入れるスピードや入れ加減を変えるんですよ。
同じ型に、これだけ湯量が異なる
力士やおかめなど、違う型がはいってると、
高王様・角六・ペチャ
を、ひとつの型で同時に鋳造する
みたいな話ですから、それは難しいし、頑張ってやろうとしても、かえって手間がかかると思います。
これは、鋳造を知り尽くしている
井出先生しかわからん。
鉄兜
残る問題は「鉄兜(てつかぶと)」と呼ばれる
面バイ。
こちらは凸部ではなく平面部に顔があり
顔も何種類か違っていることから、
型には様々な顔が彫ってあったことがわかる
しかし、バリがわからない
後ろから見ても、周りを見ても
裏側のポッチから湯を入れて
鋳造したとは考えにくい
ちょっと、
丸六や高王のバリについて調べんとわからん
しかし、そっくりだな。ネーミングセンスよ
面バイの誕生日はいつか
ところでこれら「面バイ」の誕生日はほんまはいつなんやろか。
面バイの成立は
基本的には昭和一桁くらいの時期といわれる。
世の中に出回る量として
感覚としては、
鉄兜 が多く
力士(15年でオークションに出た数5
ん回くらい)
おかめ(15年でオークションに3回くらい)
ここまではまだでる
ひょっとこ・のらくろ
と続く
くずれ顔は(岡本さんのとこと、日本玩具博物館にある)→これは面バイっぽくないので気づかずスルーしてるかもしれない。
狗(実物は岡本さんのところのみで確認)
鬼(本でのみ確認)
狗や鬼よりは真鍮バイのほうが
オークションではみとる。
つまり、
鉄兜はかなり量が作られてるが面バイは少ない。
仮説の域は出ないが
昭和初め1926年(昭和元年)から数年の間くらいに、おかめや力士、ひょっとこなどが先に作られた。
反対側に「肉弾三勇士」が描かれていることから、「狗」は1932年以降、1933年から35年くらいの鋳造であることがわかる。
日中戦争の戦意高揚のため「狗」「鬼」が作られたものの、日中戦争の長期化に伴い進み、1941年8月30日に「金属類回収令」が公布され、同年9月1日から実施されたことにより、製造数が少ないものがあるとしたらしっくりくるかもしれない。
とりあえず、
のらくろ
ひょっとこ
オカメを手に入れた今
あともっていないのは
「狗」
「くずれ顔」
そして
「鬼」
だれか
「鬼」ください。
せめて見せてください!
「鬼」のバリと裏側がみたいのだ!