
江戸時代のベーゴマはどうやってまわしてたの?その2動画編(ベーゴマ考116)
前に考察したこの記事
江戸時代までベーゴマは
上方(関西)で行われており
東京側で行われた記述はない。
明治の終わりごろ
貝独楽は東京にも伝わったと思われる
ここでは
江戸時代から明治にかけて行われた
巻き方と投げ方の考察を行い、
上方の当時の投げ方を3つに絞って考える
①江戸上投げ
お団子・1
巻 き・右巻き(時計方向)
投 げ・上投げ
難易度・⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
普通→紐の先端にコブを一つ作り、バイの先端にコブ配置、バイを一周させコブのところでヒネるようにねじって巻き、右巻き、上投げ
貝独楽でやると割れるので
初期のオチョコベーで上から投げてみた。
独楽の上部が上を向いていると
うまく回らない。
九州独楽のように、左側に向けて投げ落とすことで、紐が解ける間に方向が修正され、ストンと床の上におちる。
②江戸内投げ
お団子・1
巻 き・左巻き(時計と逆方向)
投 げ・内投げ
難易度・⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
紐の先端にコブを一つ作り、バイの先端にコブ配置、バイを一周させコブのところでヒネるようにねじって巻き、左巻き、内投げ
内投げの感覚は、現代の「女巻き」そのものなのでやりやすい
③十字巻き
お団子・1
巻 き・右巻き(時計方向)
投 げ・外投げ
難易度・⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
こちらは「ベーゴマ堂」さんの動画。見やすいので
こちらを載せておく。
十字巻きはひもに、コブを一つ作り、それを独楽のてっぺんにおき、ほっかぶりのように一周したのち90度まわして荷造りのようにして十字に巻く。先端でキリキリと締め上げることで芯を固定する。
考察
江戸期のイラストや
「上方」による、明治の記述をみるかぎり
上方で行われたバイゴマの当初の巻き方は
九州独楽に近い
①の江戸上投げだったと思われる。
しかしながら伝承遊び
こどもたちのすごいところは
常に工夫を行い、進化させていくことろだ
①の「江戸上投げ」の問題点は
一つコブのため、頂点の固定が難しく安定しないことである。
そのため、紐がずれやすかったことが想像され
それを打開するため
安定を目指した様々な巻き方が生まれたと考えられる。
女巻きへの進化
②の内投げは巻き方というより、安定して投げ入れることを想定して派生したと思われる。
上投げや外投げはすっぽ抜けやすく、コントロールが難しいのだ。
これがもう一つ団子を並べての「女巻き」に進化したと思われる。「女巻き」は東京石版圖絵にもでてくることから、明治の東京ではすでに貝独楽でありながら、女巻きだったことがわかる。
個人的には二つの団子の真ん中のよりを少し戻す形で貝の先端にぶっさす形で安定させたのではないかと考える。
十字巻きへの進化
③の「十字巻き」は明らかに頂点の固定をしやすくするために十字にほっかぶり状に巻くことで対応したと思われる。
関西ではいまでも、80代の方に聞くと「十字巻き」だったと答える人が多い。
団子が一つではなく、より安定した「十字巻き」が
主流として昭和の頃には定着していた可能性がある。
男巻きへの進化
①の進化としてもう一つできたのが、「男巻き」で
コブが頂点に一つだったものが、一周してきた時にもう一つコブを作ることで、捻って固定する方法を編み出した。(現在の聞き取りなどからは関東)
しかし、「男巻き」の弱点として、独楽のサイズ(貝の個体差やベーゴマの種類)によって団子の位置が変わることから、汎用性に欠ける。
このことから関東では昭和一桁には汎用性が高い「女巻き」が主流となったが、
独楽を確実にホールドして締め上げる「男巻き」に対して、先端に力をかけて締め上げる「女巻き」。現在も、女巻きは弱いと少し小馬鹿にいう人がいる。
「男巻き」「女巻き」の名称はその見た目が双方の性器に見えることから、もともとは「◯◯こ巻き」と直接的な呼び方であった。
現男巻きは、見事なまでにボールが二つにピョンと尻尾が立つ。
この呼び名がなぜついたのかを考えてみると、
見た目からが主ではあるが、今も遊びの中で、簡単な方を少し小馬鹿にしたように揶揄う傾向があるが、当時の子どもたちが難しい方が良しとして、
少し小馬鹿にして「おとこのくせに◯◯こ巻きなんかかっこわりぃ」なんていうところからこの呼び名がはじまったのかもしれない。
左巻きの不思議
より紐は右利き用なので、時計と反対巻きである左巻きを行うとヨリが解けるのだ。
組紐でない限り、既製品の「より紐」では崩れていく。
江戸期の紐は
和漢三才図会に「細苧縄」と、細い麻紐をよりあわせたものとでてくる。
「上方」にも子どもたちは布を細く切って自分でよって作った。とある。
そのため、投げ方、巻き方に合わせて逆ヨリで紐を作ったと思われる。
まとめ
遊びの面白さは、与えられたものでは無く、そこに工夫の余地を見出して
子ども達が各地域で工夫を積み重ねて、発展が生まれていくことであろう。
いかに強いベーゴマにするかの加工
そしてさまざまな巻き方投げ方の工夫を子ども達がしていくなかで
多様な巻き方
多様な投げ方
が生まれたのではないだろうか。
今回投げ方を調べる中で、
やはり、九州独楽の上投げの
投げ方がもともとのルーツに近い気がする。