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井出先生の川口ベーゴマ探究記(ベーゴマ考92)
全日本ベーゴマ学会会長井出先生
先日から幾度となく話にでてきはる
井出先生。
これまた勝手に名乗ってる
全日本べーごま学会の会長さんです。
(ちなみに中島さんは顧問、私は事務局長です。)
井出先生はもともと小学校の先生
現在「川口市郷土資料館」に勤務してはります。
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日三鋳造所が移転するとなって、中にあった
唯一のベーゴマ資料館の資料が
川口市郷土資料館にうつることになった数年前。
ちょうど葛飾コレクション3000を譲ってもらった時で、中島名人に頼んで、資料館にあるベーゴマの写真を全て送ってもらい、資料館になくて、私が持っているものをピックアップして全て寄贈した。
その頃から
井出先生の話はいろいろ
ベーゴマの鉄っぽい匂いとともに風に乗って
関西まで響いていた。
いつか会いたいなぁと思っていた7月
縁が重なり
わざわざ来神いただき
お会いすることができた。
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そして。先日は私が川口市郷土資料館へ!
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面白いのが井出先生の見識に
私の知っている情報が加わると
不思議なことだが
1➕1がなぜか4くらいになる感覚。
それぞれ持っている点と点がつながり。線を飛び越えて形になる感覚に近い。
私たちはコレクターではなく、
探究者であり研究者です。
それでは今回は
井出先生からの報告です!
聴き取り調査①
北條木型製作所
(川口市中青木3-14-12)
ご主人に、ベーゴマを鋳造していた工場やベーゴマの木型のことを聞く。
ベーゴマの仕事は今、那須木型さんから受けている仕事で、それ以外に昔も今もベーゴマ関連の仕事を受けたことがない。何も聞いたこともない。日三鋳造所でわからなければ、ほかにわかる人はいないんじゃないかな?
聴き取り調査②
三ツ星鋳造株式会社
60代の娘さんと話す。
うちで作っていた、という話は聞いたことがない。
(他の方が三つ星鋳造で作っていたと証言)
日三鋳造所しか知らない。ほかの昔からやっている工場に聞いてみるとわかるかもしれない。
・シバカワ(芝川鋳造株式会社)
・マスキン(昔、三ツ星の隣にあった大工場)
・イトウ(伊藤鋳造株式会社)
・タナカ(株式会社田中鋳物工場)
・フタバ(不明)
・マルミ(不明)
・オオイズミ(株式会社大泉工場)
・トメジュウロウ(株式会社永瀬留十郎工場)
・ヤゲンヤ(永瀬鉄工所)
あとは、寺社なら昔のことを知っているかも?
・錫杖寺
なかなかヒントをもらった。
ひとまず、これらの工場を回ってみよう。
聴き取り調査③
株式会社永瀬留十郎工場
職員さんたちと話す。
明治4年創業だから、期待できるかも・・・!!
鋳物組合や日三さんで知らないなら、だれも知らないね。
ご苦労様。
残念!
聴き取り調査④
富和鋳造株式会社
小学校で務めている頃から社会科見学でお世話になっていた富和鋳造。
ここにいらっしゃる超すごい鋳物職人さんが、
吉田秀夫さん。
鋳物の仕事を子どもたちに伝えたい!という自分の思いを面白がってくれていて、いつもお世話になっている方。
76才・吉田秀夫さん(黄綬褒章受章、「現代の名工」のひとり!)と話す。
「25年ほど前、遊びでベーゴマを作ったことがあるよ」
なんと、ここに来てヒット!
やはり頼れるのは吉田さん♪
ガサゴソと何やら探して持って来てくれたのが、これ。
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「木型を木型屋につくってもらったんだよ。それをうちの工場で砂型をつくって、オモテ面は、友達や会社の同僚たちの子どもさんたちの名前を聞いて、樹脂で作ってもらってさ、プレゼントしたんだよー。」
と懐かしそうに笑う吉田さん。
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その話を横で聞いていた女性の職員さんたちも
「うちの子もつくってもらったね」
「うちも甥っ子と姪っ子がさー」
と懐かしそうに盛り上がる。
「あれー、いつだっけ?」
「うちの子が小学生のときだから、いま30過ぎだから・・・25年くらい経つかねー」
「そんな前かー」
出た!25年前。1999年、世界がノストラダモスの大予言に怯え、ベイブレードが生まれ、2000年問題でパソコン業界が戦々恐々としてた、あの年。
吉田さんは続ける。
「細かい砂でないと、デザインの細かい部分が出ないんだよ。ベタッとした砂だと、細かいところがつぶれちゃんうんだよね。」
「今あるベーゴマを使えばさ、木型がなくても砂型はつくれるんだよ。簡単だもん。ただ、日三のように数を作ろうとしたら、金型が必要になるな。でも、採算がとれないよ。金にならないよ。」
「金になる仕事じゃないから、昔の職人も遊びで作ってたんじゃないかな。近所の子どもとか、俺みたいに周りの子どもさんにあげたりね。中にはこっそり、工場の余った鉄を使って、小遣い稼ぎ程度に子ども相手にこっそり安く売ったりしてたやつもいたんじゃないかな。駄菓子屋で1個、10円とかだったから、5~6円だとかね。」
「あんまり大きな工場じゃ、ベーゴマはやらないだろうな。うちなんかも、とりべ(熔けた鉄を入れる大きなバケツ状の容器・富和鋳造では2トンのとりべをクレーンで吊って2つ使って巨大な型に流すなど、大工場だ)じゃ入れらんないもん。だから、これ(写真のベーゴマ)も、俺が手でこうやって(湯汲みを持つ動作)入れたんだもん。」
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貴重な情報が得られた。
昔の話も、もちろんだけど、勲章までもらっている大工場の職人さんが自分でやってみた実感として語るベーゴマ鋳造の話は、昔の職人も同じ気持ちだったんじゃないか、という気がする。
この富和鋳造、実はひと昔前に『ほこ×たて』という番組で一躍有名になった工場。
「なんでも壊す鉄球 対 絶対に壊れない●●」の対決シリーズに、少年の胸を熱く燃え上がらせた現・30代後半以上の方も多かったのではないだろうか。あの、鉄球をつくったのが、この富和鋳造。
そんなすごい会社ですごい話が聞けただけで、今日の3打席連続空振りは帳消し。
当時、『ほこ×たて』を観て日本のものづくりにかける職人の気概や高い技術にあこがれた、少年の心に戻って郷土資料館への帰路についたのでした。
雑感(井出先生と金坂の考察)
今あるベーゴマを使えばさ、木型がなくても砂型はつくれるんだよ。簡単だもん。ただ、日三のように数を作ろうとしたら、金型が必要になるな。でも、採算がとれないよ。金にならないよ。金になる仕事じゃないから、昔の職人も遊びで作ってたんじゃないかな。近所の子どもとか、俺みたいに周りの子どもさんにあげたりね。中にはこっそり、工場の余った鉄を使って、小遣い稼ぎ程度に子ども相手にこっそり安く売ったりしてたやつもいたんじゃないかな。
→これは実際には可能性がかなり低い。というのはこうして簡単に複製して、職人がつくったのであれば、もっと低品位のものが世に出てもおかしくないからだ。
私が集めた4000くらいの、ベーゴマの中で
ほんとに低品位のものはこれくらい
これはベーゴマから型をとったかもしれない。
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私が調べて
関西の鋳物工場や
徳島の鋳物工場のことが少しづつわかった
その一方で
本陣川口の鋳物工場や作っていた場所の情報は
少なく。
かつて作っていた工場はどこか
何ヶ所あったのか
それぞれの型がどこにいったのか
謎が多い。
また、ベーゴマは
各鋳物工場の主となる製造品ではないため
「おまけ」として作られたケースが多く
会社の歴史にも残らない。
賭け事として
忌み嫌われた経緯から表の文献にも少ないのだ。
その謎を井出先生と2人で解いていきたい。
いま、私たちが調べないと
もう2度とわからないことがたくさんあるから!