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【僕たちは母を介護する】-42「転院③」

「力んだくらいで破けることはないんですけどね」

この言葉で母が救急車でB病院に運ばれ、その後、手術前に担当医と交わした話を思い出す。

あの日、御袋はいつもの腹痛と思われるようにトイレに行ってそのままうずくまっていた。
おそらく、その時、力んだため破けたのではと私たちは思った。
もちろん、確証はない。
B病院でも担当医師へ、御袋の症状を説明している。そして破ける要因に癌があるなど説明してくれた。《第7話参照》
しかしその時も結局は原因不明としている。

ただ、

私は調べていた。
【原因不明のS字結腸穿孔の例】という資料を読んでいる。
《以下、作者が読んだ資料から抜粋したものを記載する》

〇70代、男性
 朝、突然下腹部にた痛みがあり病院へ
 以前より便秘気味
 症状、検査から開腹したところS状結腸に穿孔あり
 組織標本で悪性は認められない

〇60代、女性
 朝、排便の後、下腹部痛により病院へ
 症状、検査から開腹
 S状結腸に裂け目あり
 周辺組織は健常
 悪性腫瘍などの異常は認められず

◎年齢
 60~80歳の男女が多く発症
◎穿孔の誘因と考えられるもの
 便秘が多く41%
 排便が19%

このように、便秘や排便により穿孔となることはあるようだ。
この男性がどのような意味でそんな発言をしたのかわからないが、私も弟もそれに答えなかった。
今からお世話になる病院だし、こちらも素人だ。
上から目線の発言に苛立ちを覚えたが、余計な発言は避けた。

その後、病室へ行くことになった。
その前にレントゲン撮影をするという。
感染症の関係で付添は一人ということなので、私がついていくことにした。
撮影が終わると、御袋は病室へ進んだ。
看護師から、
「入院の手続きがあるので、待合室でお待ちください」
と言われ、私はそのまま待った。

しばらくすると事務員らしい女性が現れた。
女性は、入院における書類や、衣料レンタルなどの説明をした。
説明が終わると、
「面会されますか」
と言われるので
「お願いします」
と言って病室に向かった。

病室は4人部屋だった。
見るとテレビがない。
さきほどの事務の女性から、テレビの料金についても説明は受けていた。
周りを見渡しながら、御袋に話しかけていると、別の女性がテレビを持ってきた。
(使うときだけだすのか)
そう思いながら、作業を見ていた。
続いて看護師が入ってきて、血圧などを測りだした。
そして、病状などを質問してきた。
間違いがないためにだろうか、病院というところは同じ話を何回もしなければならない。
説明をしたが、看護師は御袋の着替えなどをしながら聞いているので返答がない。
どうやらこれ以上いる必要はないと判断し、
「よろしくお願いいたします」
といって、病室を出た。

病院を出ると、次男が待っていた。
次男を家に送る途中で、内容を説明した。
特に何もなかったが、今後の面会は各々が行くことにしようと話した。
次男は承諾した。

最初の入院から45日目が終わった。

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