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ノルウェーのサイエンスファーム(農業科学館) ~農業はクールでおもしろい

ノルウェーに来て訪れた最初の博物館が、サイエンス・ファーム(農業科学館)です。あまりなじみのない「農業」がテーマで、どんなもんかな?と思いながら行ったのですが、予想以上に面白く、楽しい学びがありました。

Vitengarden とノルウェーの農業

スタバンゲル市内から車で約40分、周囲に畑や牧草地が増え、のどかな風景が広がったところに VITENGARDEN(サイエンス・ファーム / 農業科学館)はあります。Jæren地区に12ある農業博物館グループ、Jærmuseet のひとつです。

実際、このあたりはノルウェーでも農業が盛んな地域とのこと。飛行機から見た、緑の農地が広がる美しい風景は印象に残っていますし、酪農地が多いせいか、スーパーではチーズやヨーグルトの種類が豊富で、実際に美味しい。

とはいえ、農用地面積は国土の2%ほど(日本は12%)¹で、GDPのうち農業が占める割合は2%¹ と、ノルウェーの主要産業ではありません。そのため、食料自給率は低めの50%²。安全保障の面からも自給率は重要な数字なので、大切な産業であることは間違いありません。

そんな背景もあるのか、この博物館では、未来の子供たちに農業の面白さと奥深さを伝えたい思いが感じられ、そのための工夫がたくさんありました。

Jæren地区にある Vitengarden
周囲は牧草地がひろがっています

未来のファーマーの種をまく

  • 家畜と親しむ
    広大な農場の中に位置する博物館。メインの建物のまわりには牛小屋、馬小屋、豚小屋があり、自由に見学できるようになっています。歩いているとガチョウの群れがやってきたり、ニワトリの鳴き声が聞こえてきたり。ちょうど数日前に豚の赤ちゃんが誕生したとのことで覗いてみると、それはまぁかわいいブタちゃんベビーと、立派なママブタが!

  • トラクターはカッコいい
    博物館の地下に行くと、トラクターの一大コレクション!クラシックカー並みに渋くてかっこいいものから、アメリカからやってきた大きくてカラフルなものまで。ほとんどのトラクターに乗れるので、視界の高さに驚きワクワクします。

トラクターの種類が多くて圧巻
  • 厳しい自然と共存する
    ノルウェーにはMyraと呼ばれる沼地が多かったらしく、開拓するのは大変だったそう。その真っ黒な沼を体験できるコーナーがありました。ドアをあけると真っ暗で狭い洞窟のような空間があり、手探りで進んでいきます。泥沼は現在は少ないようですが、厳しい自然の中、農地を開拓した歴史を感じる事ができました。

お化け屋敷に入るようで子供たちは楽しそうでした

未来のエンジニアの種をまく

現在の農業・酪農は機械化が進んでいます。人の手で農作業した時代から、馬を使ったり、てこの原理を利用した農機具を使った時代へ。そして電力や石油の時代となり大きな発展を遂げ、現在はコンピューターでプログラム化できるようになりました。

博物館内だけでなく屋外にも、実際に触ったり、動かすことのできる機械がたくさんあり、楽しみながら機械の仕組みと動きを体験できます。子供たちは、ピタゴラスイッチ的にピンポン(野菜や卵の代用?)を動かすゲームに夢中になっていました。

UFOキャッチャーのような機械でボールをつかむ
ハンドルを使って盤面を動かします
広いスペースに多くの機械が並びます
ガラスケースの中には生きてるヒヨコちゃん

DIYの精神をはぐくむ

博物館の一角に、いろんな形の木材が並ぶコーナーがありました。ミニチュアから本物まで、様々なサイズの木材が用意されており、小屋を実際に組み立てられます。ねじや釘を使わず、板をはめこみながら家を作るようです。周囲には、木材の種類を説明したパネルと現物が展示されていました。

実際に木材を組み立てて家の形にしていきます

博物館のおもちゃコーナーにも小屋作りキットがあったり、ノルウェーでは小さいころからDIY精神を育てているのが感じられました。

Museum Shop で見つけた丸太小屋を作るおもちゃ

博物館を五感で楽しむ

子供たちの「触ってみたい」「やってみたい」を満足させる展示がたくさんの博物館。カフェではここの農場で作られた野菜が使われ、販売もされています。館内のガラス館で作られたミニトマトは実際に甘くて美味でした。
パーティテーブルがあったので、博物館でお誕生日会を開催することもできる様子。

広々としたcafeにはパーティテーブルも

農業って面白い、楽しい、クール、と少しでも感じることができたら、農業や酪農をもっと学びたい、という子供たちが自然と育ってくる気がします。広大な牧場地のなかで、五感をつかって学べる博物館。子供だけでなく、大人も大いに楽しんだサイエンス・ファーム体験でした。


¹ 農林水産省、「ノルウェーの農林水産業概況」、2020年、1頁。(https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokusei/kaigai_nogyo/attach/pdf/index-154.pdf)
²  International Trade Administration, "Norway - Country Commercial Guide", 2022-09-12 (https://www.trade.gov/country-commercial-guides/norway-agricultural-sectors-food-agriculture-fishery-and-forestry)


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