展覧会レビュー:おいしいボタニカル・アートー食を彩る植物のものがたり場所@SOMPO美術館
「ボタニカル・アート」をメインとする一風変わった展覧会。
展示の性格としては、美術館より博物館に近い。アートに触れるというよりも、当時の文化をアートをもって知り、勉強になる側面が強かった。
休日でも観覧者が少ないので、ゆっくり鑑賞できるのは良い。
ボタニカル・アート(紙に手彩色)がメインの展示です。
色鉛筆?水彩絵の具?で彩られた果物や植物の絵は確かにキレイだが、それ以上でもそれ以下でもない。アートとして、1点1点の作品そのものから何か学びや気づきがあるというわけではなかった。
アートとは、アーティストの思想感情の表現であり、美術館での鑑賞は、作品を通じてアーティストと鑑賞者の対話だと、私は考えている。ボタニカル・アートには、思想感情の表現がないため、私には物足りなかった。
美的好奇心よりも知的好奇心を得られる展示会だと思った。
主に大航海時代(15〜17世紀)には、欧州から珍しい植物、フルーツ、香辛料を求めて世界に旅立っていった。
当然、当時はカメラもなく、そのままの状態で祖国に持ち帰ることもできないため、精細に模写するしかない。ボタニカル・アートとは、アートよりもサイエンスの方が性格が強いのだ。サイエンスを追求した結果、現代で「アート」呼ばわりされていることに近い、と感じた。
当時は柑橘類のフルーツが貴重だったなどの事実を勉強できて良かった。
最初はボタニカル・アートばかりの展示で単調だったが、途中からの紅茶やそれに付随する食器、テーブルセットなどの展示の方が興味深かった。
当時のティーキャディーボックス(茶葉を入れる容器)では、鍵がついたものもあり、当時、紅茶が貴重だったことがよくわかる。
私は紅茶検定を持っている。当時、教科書で勉強したものの本物が展示されていると、より実感をもって当時の知識が理解できた。
ボタニカル・アートの展示はかなり単調なので、日本のそれを数点でも併置したら、日英の文化の違いも際立って勉強になると思った。
静かに鑑賞しなかったり、自撮りしていると監視員に注意されるなど、割とルールに厳格。マジメ腐って静かに見るような展示でもないし、自撮りした人がいた方がSNSにも載って、展覧会の宣伝にもなると思うけれど…。
なお、キャプションの文字数が少なかったため、読みやすいのは良かった。
総合すると、満足度はそこまで高くはないかもしれないが、期待しないでいくと想定外の学びもあるため、行って損はない展覧会だと思う。
展覧会名:おいしいボタニカル・アートー食を彩る植物のものがたり
場所:SOMPO美術館
満足度:★★★☆☆
会期:2022.11.05(土)- 2023.01.15(日)
アクセス:新宿駅から徒歩約10分
入場料(一般):1600円(事前ネット購入:1500円)
事前予約:不要
展覧所要時間:約1時間
混み具合:休日でも快適
展覧撮影:1/6くらい撮影可能(肌感覚)
URL:https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2021/botanical-art/