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とおくへ


風を身に纏うような
そんなふうにはじまる恋が
あってもいいはずなのに
なのに
胸をつらぬくほどの
痛みをともなうのはなぜ
触れられた肌がゆっくりと
熱をおびたとしても
扉を閉めた瞬間に
目を閉じなければ
わたしのすべてがこわれる

だからはやくとおくへ
とおくへとにげるの
裸足で
一度もふりかえらないと何度も
何度も
つぶやきながら
息をきらし
涙をぬぐう腕をうばわれても
けっしてけっして
ねぇだれかたすけて

他人だらけのこのまち
見知らぬ誰かになるために
ただそれだけがのぞみなの
なのに
まるで必然みたい
わたしたちがであったのは
歩幅をあわせるやさしさも
てのひらの温度さえ
忘れることができればいい
目をとじてるから
永遠にあらわれないで

だからはやくとおくへ
とおくへとにげるの
ひとりで
胸に抱いたたからものをいくつも
いくつも
なげだしながら
息をせずに
細いあしくびをうばいとられても
けっしてけっして
ねぇまえがみえない


言葉はいらないから
わたしのことをきらいになって
にくんで
だけどわすれないで


だからはやくとおくへ
とおくへとにげるの
裸足で
一度もふりかえらないと何度も
何度も
つぶやきながら
息をきらし
涙をぬぐう腕をうばわれても
けっしてけっして
ねぇだれかたすけて


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