友達でいられるよねなんて 思ってもいないくせに ただこの場をやりすごすための空気が 窒息しそうなほどに薄い 喉をきつくおさえてみても まるで深い海の底にいるみたい おぼれる おぼれていく 泡にのまれて消えてなくなりそう ほんとうに好きなのはきみなんだよ 耳のそばで囁いた 嘘みたいな言葉に胸をはずませた日が懐かしい 抱きしめた時の髪の匂いがたまらなく好きで 好きで 好きで 大きく深呼吸をする まるで私がここにいる意味を 深く求めるみたいに 瞳の奥に映るその人があまりに綺麗で
聞かせて あなたの声で 胸がやぶけそうになるくらい 震わせてほしいの 陳腐な言葉でもいい たった五文字でかまわないから あなたの指先に灯る 小さなあかりをたよりに 恋をしてきたの 吐息で消えてしまわないように 大切に守ってきた 流行りの歌をくちずさむ 調子はずれのくちびる いとおしすぎて 永遠につづけばいいのにと そっと息をひそめる すぐ前を歩く背中の 隣に追いつける日はきっとこない なのに願ってしまう 誰か今すぐ世界をおわらせて 聞かせて あなたの声で 胸がやぶけそう
長い旅をしてきたみたいに 終点を見つけたみたいに ただたちどまって 伸びた前髪を掠る はげしい音に目を細めた ゴールテープだと思えば 思いきり駆け抜けられるのに 向こう側に未来はないと わかっているから 足がすくんで動けない ぼくは弱虫だから 隣にいると言ったくせに その唇は嘘ばかりが得意 もう会えないけど すべてをかき消すほどのノイズのなか ぼくの声が できればどうか聞こえていますように きみがいたこの世界は 痛みしか与えてはくれないけれど それより きみを忘れてしま
風を身に纏うような そんなふうにはじまる恋が あってもいいはずなのに なのに 胸をつらぬくほどの 痛みをともなうのはなぜ 触れられた肌がゆっくりと 熱をおびたとしても 扉を閉めた瞬間に 目を閉じなければ わたしのすべてがこわれる だからはやくとおくへ とおくへとにげるの 裸足で 一度もふりかえらないと何度も 何度も つぶやきながら 息をきらし 涙をぬぐう腕をうばわれても けっしてけっして ねぇだれかたすけて 他人だらけのこのまち 見知らぬ誰かになるために ただそれだけがの