ぼくが見たサンクトペテルブルク 第2章 過去へのフライト、運命の乗り換え
サンクトペテルブルクと日本との時差は6時間。
日本から見て目的地は「過去」である。
スパッと消し去られる思い出ではない。でも区切りはつけないといけない。だからせめて「過去」へと向かう機内でだけは、カッコ悪く後悔させていただきたい。それで終わり。
機内食のメインはタラのグリルだった。肉料理の「ヤキトリ」とやらも気になったが、品切れらしい。トルコの独特の風味を醸すビールとともにやや薄味の食事を堪能する。
「性格の不一致」。その言葉を硬いパンといっしょに口に含め、味がなくなるまで咀嚼した。
自分が何を噛んでいるかもわからなくなってきてようやく、初めは分からなかったその言葉の意味が、じんわり口の中に広がってきた。
ようやく納得できた。
まとわりつく重い鱗もこれで脱ぎ捨てられる。
思い出すのはこれが最後。
水族館が好きな人だった。
いつか逃した魚として、でっかくなって、分厚いアクリルの水槽を隔てた向こう側で力強く泳ぎたい。
経由地のイスタンブールについた。時差はサンクトペテルブルクと同じく6時間。
もう時間は戻らない。
さあ、乗り換えだ。
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