ぼくが見たサンクトペテルブルク 第6章 ロシアのマクドナルド事情
腹が減っては戦はできぬとは言うものの、言語と文化の壁の前では、食べることもまた戦である。
空腹に耐えかね、旅行中に禁忌としていたハンバーガーをあっさり解禁してしまった。
あえてマクドナルドを利用することで、その違いが見えそうだったから、ということにしておく。
一方でロシア語が話せない状態では、マクドナルドすら鬼門に思われた。しかしこれも杞憂。店員は例に漏れずロシア語だが、多言語&クレジットカード対応の「券売機」がある。マクドナルドではお目にかかったことがなかったが、きっと問題ないだろう、と思っていた。
ところがどっこい、触っても触ってもパネルが反応しない。一回休み。昨日からスマートフォンの操作も調子が悪いだけに原因はぼくにありそうだ。これももしや、おそロシアの魔力なのか。
ぼくの後ろには女性。やむなく先を譲り、別の機械を試すと難なく操作ができた。念のため先ほどの機械を見てみると、やはり女性が困惑していた。なぜか少し悪い気がした。
海外のマックのバーガーはやたらと大きいという偏見もあり、「ビッグマックのスモール」という哲学じみたメニューを選んだ。出てきたビッグマックは日本のものと同じサイズ。スモールなのはセットのポテトだった。偏見は良くない。偏らずちゃんと見よう、メニューを。
ちなみにここまで、一言も話していない。
ビッグマック特有の刻んだレタスと格闘していると、男が近づき、何やら話しかけてきている。ロシア語は当然わからないが、ペットボトルの底を切り取った「賽銭箱」で物乞いをしていることだけはわかった。すぐさま、昨日覚えたロシア語「ニェット(いいえ)」とだけ答えると、彼はすぐに隣のテーブルにターゲットを変えた。テーブルの若者たちはお金こそ出さないが、丁寧にお断りしているように見える。やはりロシア人は基本的に優しいのだと思う。賽銭箱にも、多少入ってるし。
それにしても、店内で物乞いをするとは、この国の人間は貴賎を問わず本当に神経が太い。優しさのことといい、国民性をはっきりと示してくれるのがロシア人。
かと思えば、隣の優しい若者たちは、片付けもせず颯爽と店を出て行った。優しさにも色々な形があるんだなぁ。もしくは、この国ではマックでバッシングをすることはマナーではないのかな?
グローバルな店でもやはり違う文化に触れられ、考察も捗る。これだから一人旅はやめられない。
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