これからどうする?機能性食品
この記事でわかること【一般消費者・食品事業者・機能性食品研究者向け】
1.機能性表示食品の経済効果
2.事後チェックの影響?
3.消費者の購買行動の推移
4. なぜこのような記事を書いているのか?
1. 機能性表示食品の経済効果
機能性表示食品の届出の質が低いということ、しかもその事実は国内にとどまらずに全世界に発信されてしまったということをお伝えしました。
それでは制度の本来の目的である経済への波及効果についてはどうなんでしょうか?
機能性表示食品が発売された2016年から2020年の、健康食品・トクホ・機能性表示食品の売り上げ推移を以下に示します。
なんということでしょう・・・。全体的には増えていません。
最新の調査でも健康食品市場全体はだいたい9000億円を行ったり来たりと増える傾向はなく、国内のパイの奪いあいにしかすぎません。
2. 事後チェック機構の影響?
トクホと機能性表示食品の大きな違いは、
・トクホ:よっぽどのことがない限り、永遠に表示が許可される
・機能性表示食品:以下の制度によって定期的にチェックを受ける
①”機能性表示食品に係る機能性関与成分に関する検証事業”によって、関与成分の定量・定性分析方法に疑義がある場合には追加資料の提出を求める
②”機能性表示食品に対する食品表示等関係法令に基づく事後的規制(事後チェック)の透明性の確保等に関する指針”および”景品表示法(優良誤認表示)”及び”健康増進法(食品の虚偽・誇大表示)”の観点から表示の適正化に ついて改善・指導が行われる
という点で、大きな違いがあります。
実際に①によって、2021年には表示よりも含有量が少ない商品が注意勧告を受けています。
また②については、2022年に認知機能の低下を予防(?)する131商品に対して表示の改善指導が、また一般消費者に対しては以下のような注意喚起(TwitterとFacebookのみというところが謎)が行われました。
もとより、認知症治療薬・予防薬については、世界中の製薬会社が
何十年もかけて開発を進めてきて、未だ決定打に欠けるのに、
それを機能性表示食品ごときに求めるのがしょせん無理かと。
こういった消費者庁の施策は、機能性表示食品の売り上げ鈍化につながっているのでしょうか?
3. やりすぎ?機能性表示食品
以下ににこれまでの機能性表示食品の機能表示をまとめてみました。もうここまでくると、食品企業の開発担当者も、次の機能性表示を考えるのは大変困難な状況に追い込まれているのではないでしょうか?
上述したように、残念ながら規制緩和による経済効果は見られなかったというのが、機能性表示食品制度の結論になりそうです。また、監督省庁である消費者庁も、優良誤認・虚偽・誇大表示については今後も目を光らせていく様子です。
以下に消費者庁の食品表示に関する消費者意向調査における機能性食品購買行動に関するアンケート調査を記載しました。直近の調査だと、摂取してみたいが減少し、摂取する予定はないが明らかに増加しています。これらのことからも、体感がないクレームの連発は、消費者の機能性食品離れを加速してしていることが示唆されます。
以前お伝えしたように、1980年代半ばに先輩方の研究成果により、健康食品は「機能性食品」へと変貌を遂げました。その後、トクホ・保健機能食品・栄養機能食品・機能性表示食品といった制度が設けられ、一兆円規模の産業へと成長してきました。
一方、人口減少に伴い購買者層が減少していく昨今、市場の拡大には限界があり、少ないパイの取り合いになっています。また機能性表示食品制度の失敗によって、その質は大きく低下し、消費者の信頼を失いつつあります。筆者はこの間、企業での開発・大学での研究を通じて、このフィールドの発展と膠着状態を肌で感じ取ってきました。
だからこそ、今何か手を打たないと、1980年代以前の状態【市場のシュリンクと非科学的な「健康食品」の蔓延】に戻ってしまうのではないでしょうか?
そんなことは誰も望まないと思いますので、今後は解決策を考えていきます。