【番外編・カカオ抽出物大規模摂取試験】2万人･3.6年間摂取の心疾患に対する作用
この記事でわかること 【一般消費者・機能性食品研究者向け】
アメリカで行われた高齢者を対象としたカカオポリフェノール画分の
長期大規模摂取試験結果(COSMOS trial)の速報
一日500mgのカカオポリフェノールの摂取は、
心臓血管系疾患死を27％抑制した
2015年6月から2020年12月まで、アメリカの年齢72.1（±6.6、標準偏差*）歳の21,442人の参加者を4群；カカオポリフェノール（500 mg flavanols/d, including 80 mg (–)-epicatechin]）± vs マルチビタミン の４群に割付け、心血管系疾患に対する影響を平均3.6年間、観察した研究結果（通称COSMOS trial)の第一報が報告されました（Sesso DS ら, Effect of cocoa flavanol supplementation for the prevention of cardiovascular disease events: the COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study (COSMOS) randomized clinical trial, Am J Clin Nutr, 115, 2022, 1490-1500, https://academic.oup.com/ajcn/advance-article/doi/10.1093/ajcn/nqac055/6548186で）。
＊標準偏差：いわゆるバラツキ
実施機関はHarvard Medical School, スポンサーはMARS®とPhizer®という豪華ラインナップです。当初5年の予定でしたがコロナの関係で短縮されたようです。以下、実験群と被験者推移です。
被験食品です。
カカオ抽出物中のポリフェノールは500mg(赤い方）となります。
下の写真は試験途中に発行されたNews Letterに掲載されていたカプセルの形状ですが、持っている女性の小指と比べると、ほぼその半分ぐらいの大きさがあります。
どうも米・英・アイルランドで限定的に発売されているCOCOVIAというMARS®の商品と同様の物のようです。
さて、結果です。スポンサーの一社であるMARS®がHPにわかりやすく（?)まとめてくれていましたので、そちらを引用したいと思います。
https://www.mars.com/news-and-stories/articles/cosmos-large-scale-trial-shows-promise-of-cocoa-flavanols
評価項目は上から、
・心臓発作/脳卒中/心血管系疾患手術による死（回数）
・心血管系疾患死
・心臓発作/脳卒中（人）
となっており、
左側は Intention treat解析、右側はPer-protochol 解析となっています。
・Intention treat解析とは？ 試験に参加した全員を対象とした解析。途中でやめた人、あるいはサプリをあまり摂取しなかった人を含む解析。
・Per-protochol 解析とは？ 試験中プロトコールに従って参加した人の解析。と言っても今回、プロトコールには毎日摂取とありましたが、飲みにくいのか(?)月あたり8回さぼった人を抜いた という解析になっています。
Intention treat解析では、残念ながら主要評価項目である心臓発作/脳卒中/心血管系疾患手術による死について、プラセボ群と被験食品群の間に差異は認められませんでしたが、心血管系疾患死の有意な低下が見られました。
一方、Per-protochol 解析では、いずれの項目についても、有意な低下が見られ、やはりカカオポリフェノールの摂取は心血管系疾患のリスクを低下させると結論できると思われます。
ここからは私見ですが、今回の研究でネックとなったのは、被験食品の大きさ・飲みにくさだと思われます。平均72歳の被験者に、ポークビッツ大のカプセルを一日3錠飲ませるのは、別な負担がかかるのでは・・・・との不安が的中した結果となっています。
さてCosmos trial ですが、これ以外の多くのデータがとられており、以下の解析が進んでいます。
COSMOS mind : 主に認知に関わる影響を観察
（評価項目）
・グローバル認知機能
・軽度認知障害
・エピソード記憶
・アルツハイマー病/その他認知症
・実行機能（言語流暢性、演算スパンテスト）
COSMOS cataract : 目の疾患に関する影響を観察
（評価項目）
・白内障
・加齢性黄斑変性症
ということで、解析結果の発表が待ち遠しいですね。