末娘のレラが突然いなくなった
一昨日5月3日に、飼い犬のレラが9歳で亡くなりました。
大学進学のため郷里を離れていた長女が、帰ってくるその日、いつもどおりの朝を、いつもどおりに元気に過ごしていたレラが、突然失禁し、動けなくなった。
レラは、フラットコーテッドレトリバーで、次女の誕生と同じ頃、我が家の家族となった。
ペットショップの売れ残りで、臍ヘルニアを持っていた彼女だったが、明るく人懐こい性格で、「この子しかいない」という確信を持って迎え入れた子。
大きな病気をすることもなく、長女、次女と一緒に天真爛漫に育ってきたのだが、突然の病魔に襲われ、あっという間にこの世を去ってしまった。
大好きなお父さんの椅子の下で、おしっこをしてしまった後、下半身に力が入らなくなり、そこから動けなくなってしまった。
口の色がどんどん白くなり、呼吸が荒くなっていく。
次女が、「これはやばい。すぐに病院に連れて行って!」と。
かかりつけの病院に連絡が取れたのは、40分後、病院で診察を受けたのは、約1時間後のこと。
血液検査、レントゲンと検査をしましたが、先生の診断は、
「免疫介在性血小板減少症」ではないか?
さらに、「免疫介在性溶血性貧血」も併発しているという見立てだった。
すなわち、「エヴァンス症候群」を発症していると。
「非常に危険な状態です。
すぐに、入院させてください。」
でも、いつ事態が急変してもおかしくない、とも言われてしまった。
その日は、長女が北海道に帰ってくる日。
何かあればすぐに知らせるということで、彼女を病院に預け、その足で私達は駅にむかう。
さっきまで晴れていた空が、黒い雲に覆われ、雨が降り出した。
長女の乗った新幹線が駅に到着した時、電話が。
「呼吸が止まった。」
「すぐに、来てください。」
長女が故郷に帰ってきたその時、レラは息を引き取ったのだ。
その後のことは、よく覚えていない。
まだ暖かい彼女を引き取り、うちへ帰り、
いつもの場所に寝かせると、いつものようにただ寝ているだけに見えた。
呼べば、ムクッと起き上がり、尻尾をブンブン振るような気がして、
誰も、「死」というものを信じられなかった。
でも、彼女の体はどんどん冷たくなり、固くなっていった。
もう、呼んでも、戻らない。
滅多なことで落ち込まない、泣かない夫くんが、彼女をずっと触りながら、泣き続けていた。信じられないくらい泣き続けていた。
「もう、立ち直れないかもしれない。」
そう言いながら、レラのベットから離れることができなかった。
次の日、小さいながらも、心のこもったお葬式をあげていただいた。
小さな骨壷に入ったレラ。
「いなくなってしまった」現実を、受け入れるしかなかった。
夫くんは、 沢山の人に可愛がられてきた子だったので、「どうしたの?」と
聞かれるのが怖い、と。
一人でいつもの散歩ルートを行くのも、辛いと言う。
こんなにも辛いものなのか。
静かな朝も、毛の落ちていない絨毯も、噛み跡のないカーテンも くしゃくしゃにされない新聞も、本当はそれが正しいはずなのに、ちっとも嬉しくないのだ。
いつかは、乗り越えられるかもしれないけれど、
今はまだ、私達家族は混乱の中にいる。
命の終わりというものは、
予測不可能であり、
乱暴であり、
突然やってくる
その残酷な現実に、まだ立ちすくんでいるのだ。
いつか見た、
夫くんとレラの楽しそうな散歩を
この1人と一匹に重ね合わせ、
泣けてしまうことを分かっているのに、
何度も観てしまう。
あの日に、もしかしたら 戻れるんじゃないか。
できることなら、戻りたい と
叶うことのない願いを抱きながら。