巡査どの!その節は。。2. 通報 (O_O)
生きるに覚悟はつきものです。
でも、いくら覚悟したって
不便はあります。
これはかつての独り暮らしで
お世話になったおまわりさんへの
感謝と懺悔の話でございます。
(よろしければ前の記事もございます)
私は大阪を離れ、関東に移りました。
ここでも私の
人とズレた日本家屋に対する憧れがあり、
4件見た中で、
最も年季の入った
和風アパートを選びました。
新しい会社の部長さんが
ヨソ者の私のために、
一緒に部屋探しをしてくださる。
東京の人って、
なんでこんなに優しいんだ、
道産子の母の方が
ちょっと根性悪の一面がありました。
スーパーマリオ似の口ひげ部長が、
ええっ!!本当にココがいいのか?
お前はバカか?と
まだ2回しか会っていない私に対して
ていねい言葉を使うのを、
すっかり忘れておられました。
玄関を入り、短い廊下を挟んで
右、4畳半角部屋、日当たり最高。
左、6畳台所付き、壁の向こうは、お隣。
古い木造の2階。木枠の窓から空を仰ぐと、
寅さんの妹さくらが
葛飾柴又の部屋、
窓から座布団干すのを、
印刷工場の職工、光夫は
寮の部屋から恋こがれて見ている。。。なんて
また不要な妄想グセが出ました。
風呂は玄関の横にあり、
窓の外は人が通る通路。
お風呂の様子が丸わかり。
落とし穴でした。
ふつうわかるだろ、と言われますが
私はそこがぬけます。
結果、お風呂はずっと体を折り曲げ
窓に私の影を感じさせぬよう努力する。
が、しかし、音で丸わかりとなる。
のぞかれるわけがない、と
信じきるしかありません。
私は6畳を使いませんでした。
気持ち悪いからです。
気配が寒い。
壁が暗い…。
だったら借りるなよ、と言いたい。
でも借りちゃって
気持ち悪くて、なにも置けない。
4畳半だけで住んでいる。
お前はバカか、と
言った部長は正しいんです。
気持ち悪い部屋は、
何も置かないと、もっと気持ち悪いです。
部屋が孤独を訴えてきます。
4畳半角部屋は二方向の窓から光が差し、
すこぶる気持ちよい。
本来、モノを増やさぬジプシーおりーぶは、
押し入れがあれば4畳半OKです。
音楽聞く、本を読む、手紙を書く、
十分にやりたいことはできました。
事件は、夜中におきました。
私が最も愛するステレオコンポで、
ジャズ、ブルース、ソウルなどを
ヘッドフォンで聴きまくっていると、
ふと、異なる音がする。。。耳を澄ますと、
それは、赤ちゃんの泣く声でした。
それも玄関前です。
真夜中なのに、
イヤ!!!
私の人生最大の、もらい事故!
誰かが玄関前に赤ん坊を捨てていった。
どうしよう! でも待って!
赤ん坊の泣き声は
6畳から聞こえるようにも思えました。
とても家の外とは思えない、近さ。
いやーーー!どこどこ!
私は気持ち悪い6畳の電気をガンガンにつけ、
風呂場もつけ、
なになになになになに、
もうやめてーーー!!
近所迷惑など関係ないです。
すると、やはりそれは玄関前です。
まるで、ドアを開けて抱いて、と泣き続ける。
すでに、見当がついた方が
いるかもしれませんが
私は・・・
110番しました。
「玄関の前に赤ちゃんを捨てられました!」
「え!赤ちゃん!その子、今いるんですか?」
「玄関の前にいます」
「見たんですか」
「恐くて見れません!」
「見てないんですね?」
「見てないけどいます、来れば見えますよ」
「それ、ネコじゃないですか」
「ネコ?違いますよ!!赤ちゃんです」
「たぶんネコです、よく似ているんでね、間違うんですよ、近くにご家族おられますか?』
「独りです。ネコなら私だってわかります。あれはぜったい違う!ネコはあんな泣き方しないです」
「いや、サカリのついたのは赤ん坊に似てるんですよ、よく間違えるんだよねえ。この時期は、ちょうどサカるんだろうなあ、」
「サカリがついてもネコはネコでしょう。あれは人間の声です」
「いやあ、僕はネコだと思うけどなあ。ちょっとね、スキマから見てくれますか?」
「できませんよ、おっかなくて!ネコだったらどうするんですか?』
「ネコなら安心じゃないですか」
「安心じゃないです!私、動物全部だめなんです!犬もネコも追いかけられたんです、無理です無理無理」
「え?ネコは追いかけないでしょう」
「ネコも追いかけます!私、追いかけられました!」
「無理かあ。、、、、、、まだ、泣いてる?」
「え?・・・・・・・・泣いてます」
「わかりました、じゃあね、行きますから、おたく、どちらですか」
こうして私は、ドアの向こうの赤ちゃんが怖くて布団を被って耳をふさぐうち、
朝になりました。恐々ドアを開けましたが、
何事もなく、平和に
出勤をしました。
おまわりさんから何も連絡きませんから、
事件性がなかったのでしょう。
大変ご足労おかけしました。
一件落着です。
でもこのアパートで、再び私は、
おまわりさんのお世話になるのでした。
この続きは、また。
お読みいただき、誠にありがとうございました。