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祝これぽーと1周年│美術館・博物館のコレクション展のすすめ

美術館・博物館という"場・空間"が好きなわたしは、全国各地、そして世界各地でいろいろな館に出かけてみて、長らく不思議に思っていたことがありました。

なぜ、日本の美術館・博物館のコレクション展や常設展示のスペースは、だいたいいつも空いているんだろう・・・
もしかして、その魅力も存在も、ほとんど知られてない・・・?


だとしたら、もったいなさすぎる!!!
・・・でも一方で、そうなってしまう理由もわからなくもないなぁ、とも思っていました。

そんな中、2020年8月にスタートしたのが、これぽーと でした。

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これぽーと って何?

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これぽーと は、Webメディアの名前です。

全国各地にある美術館・博物館のコレクション展・常設展のレビュー(展評)が、毎週日曜21時に公開されています。

レビューを書いているのは、全国各地にいるさまざまな人たち。
大学生だったり社会人だったりします。いわゆるプロの書き手は少数のようです。
広告メディアではないので、メンバーはボランティアで参加しています。

スタート時の書き手は、主宰する みなみしまさん が、Twitterで募っていました。
わたしはちょうどその投稿をタイムライン上で見かけて、参加したい!!!とすぐにDMしたんです。確か2020年の5月頃、何だか懐かしいなぁ。

以降、何度かzoomで参加メンバーの方々とお話してきましたが、直接会ったことはないまま、1周年を迎える運びとなりました。

ちなみに現在も書き手を随時募集してますよ!
書きたい方は、ぜひ「お問い合わせ」からか、みなみしまさんのTwitterのDMで ご一報ください✨


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そもそも コレクション展・常設展って何?

コレクション展、常設展、所蔵作品展。
呼び方は館によっていろいろありますが、基本的には、その館が集めて所有している作品を展示・公開している場です。

これに対して、『ゴッホ展』『フェルメール展』『鳥獣戯画展』『若冲展』や、『大英博物館展』『ルーブル美術館展』『ハプスブルク展』などなどの名前で、日本各地や世界中から作品を集めて全国を転々と巡回したり、雑誌で特集が組まれたり、新聞広告やテレビCMも見かけたりするような展示は「特別展」、美術業界の関係者内では「ブロックバスター展」なんて呼んだりします。(ものすごい効く痛み止め薬っぽいですよねw)

美術館・博物館に行こう!というときはおそらく、多くの方がこういった特別展に足を運ぶ場合が多いのでは。

言わずもがな、特別展はとっても貴重な機会です。
観てみたいなぁ、気になるなぁと思った展示はぜひぜひ、機会を逃さずに出かけていただきたいんです。
でも、できたらついでにコレクション展へもハシゴして、ちょろっとでも観てみてほしいなぁ、と。


ちなみに、コレクションを持たない館もあります。
これは、良い悪いではなく、単に館の運営方針の違いです。

例えば都内だと、六本木/乃木坂にある国立新美術館が有名ですね。
また、上野の東京都美術館は、以前は現代美術のコレクションを所蔵していましたが、清澄白河にある東京都現代美術館ができた時にまるっと移して、特別展のほか、美大・芸大の卒展など市民のための展示スペースとして活用されるようになりました。

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なぜそんなにコレクション展・常設展が目立たない?


特別展やブロックバスター展などと比べれば、どうやったって目立ちませんよね。集客力なら、断然、特別展です。

だって、広告にかけられる予算も手段も、雲泥の差だからです。
(その分、経費がものすごーくかかってるんですけどね、作品の輸送費とか。だから、チケット代がちょっとお高め、なんですけども)

もちろん、館のホームページを見れば、ちゃんとコレクション展・常設展を紹介しています。現在、展示している作品や、展示のテーマ、見どころの作品なども丁寧に書かれています。

そもそもの目的とか立ち位置が違うので、比べるものでもないのですが・・・にしても全然目立たないですねぇ。
特別展・ブロックバスター展が比較対象になってしまえば、どうしたって目立ちませんよねぇ。


ということで、これぽーと に集う書き手のみんなは こんなことを思って書いています。一部抜粋してご紹介します。

あまりにふつうの試みに映るかもしれない。美術館の使命はコレクションの収集と保存、そして研究にあり、その成果として常設展やコレクション展が開かれるのだから、それについて語ることは当たり前のことではないか、と
 けれど、日本ではそうなってはいない。日本の美術館では、大手マスコミの協賛によって、海外の有名作品を展示する「○○美術館展」が成立している歴史的な経緯があるために、マスコミの広報や美術メディアも「企画展」を大々的に取り上げることになるからだ。
 だから、常設展やコレクション展は軽視されてしまう。
 少なくとも、言説のうえでは。
 
 こうした背景のうえで、私たちはこの展評企画を始めたいと思う。
 つまり、ふつうのことをふつうにやってみるということだ。(中略)
展評を通して、マスコミ協賛モデルによって見えづらくなった美術館の中核にある常設展やコレクション展への関心を高めること。また外部から定期的に批評することで、学芸員を中心とする美術館の内部の仕事を見える化し、その存在意義を社会一般に提示すること。


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Naomi_Nが思う、コレクション展の魅力って?

まずは何と言っても、館の個性と歴史が見えるところ  です。

美術館・博物館の成り立ち・歴史には、例えば私立のところは特に、個人のコレクションがベースになっているところが少なくありません。
わかりやすい例を3つほどご紹介すると・・・


●国立西洋美術館 (上野)
"松方コレクション"とよばれ、印象派を中心とした絵画群やロダンの彫刻群などが有名ですね。 ※2022年春まで休館中。再開が楽しみです!


●アーティゾン美術館 (東京・京橋)
ブリヂストンの創業者・石橋正二郎さんが収集した作品群がたくさんあります。

FireShot Capture 1699 - コレクション - アーティゾン美術館 - www.artizon.museum

こちらにもモネやルノワールなど、印象派の絵画が多数ありますが、それだけではなく、石橋さんと同郷である洋画家・青木繁さんをはじめとした近代の洋画作品、ブランクーシなどの彫刻作品、アボリジニアートまで、その内容は多岐にわたっていて、超絶豪華です。
なので、専用のアプリで音声ガイド&解説テキストが利用できます。便利!

しかも、現在もかなりのハイペースで点数が増えてます。
こんな豪華な館なのに!学生は、なんと事前予約すればいつでも無料です。
だから学生のみんな!もっと通って!!!


●根津美術館 (東京・青山)
東武鉄道の初代社長など、鉄道王と呼ばれた上に稀代の数寄者だった、実業家・根津嘉一郎さんのコレクションがベースです。

FireShot Capture 1700 - コレクション|根津美術館 - www.nezu-muse.or.jp

館内では、なんと大英博物館とここにしかない(!)とっても貴重な古代中国の双羊尊(そうようそん)や、饕餮文方盉(とうてつもんほうか)といった、祭礼や儀式に使われていた貴重な青銅器や、季節に合わせた展示が月替わりで行われる茶道具など、各専用展示室でたっぷりと鑑賞できます。
茶室が点在する広いお庭もすごいですよ。ここが青山だってことを忘れます。

ちなみにわたしはこの根津美術館で、饕餮文や青銅器の魅力にすっかり取りつかれました・・・。


また、全国各地にある公立博物館・美術館なら、例えば、ゆかりのある作家の作品を特に収集していたり、地域の歴史や風土に関する資料の展示を行っていたり。

地元の歴史を親しみやすく伝え、美術をより身近に感じるような取り組みをしている館が多くあります。なかなか遠出の難しい時世ですし、ぜひ一度、館のホームページなどをのぞいてみてください!

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そしてもう一つの大きな魅力が、実は結構、有名な作家の作品が、じっくりたっぷり鑑賞できる"穴場"なこと。

例えば、みんな特別展に行くだけでお腹いっぱい・ぐったりして帰りがちな、トーハクこと東京国立博物館は、まさにそんな作品の宝庫です。

先日も本当にしれーっと本館に、伊藤若冲が自画自刻、つまり下絵を描いて自分で彫った木版画『玄圃瑤華(げんぽようか)』が展示されていました。
なんと写真撮影もOKです。

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極彩色で緻密な若冲作品も良いですが、こちらも素敵ですよね!
実は、トーハクのポスターにも使われているこの名作。
作品保護のため常に展示されているものではないので、ついに今回、実物を観ることができて、わたしは本当に嬉しかったです!!!

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でも!わたしが観に行ったタイミングでは、周りには誰もおらず。
あれ、みんな気づいてない?  と淋しくなりました・・・。

この後しばらく、ひとり一心不乱に見つめては写真撮影していたのですが、その様子があまりに目立っていたのか、たまたま通りがった方が若冲だと気づいて足を止めていました。良かった!

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◎トーハクの魅力や展示の楽しみ方については、また別の記事で書こうと思いますので、お楽しみに。

また、ちょうど1年前にも、好きすぎるあまりnoteで暑苦しくご紹介しましたが、大好きなMOMATコレクションが楽しめる、東京・竹橋の東京国立近代美術館も、びっくりするくらいの作品がしれっといつも並んでいます。

現在なら例えば、大好きな小原古邨さんの新版画がたっぷり鑑賞できたり、東山魁夷さんや横山大観さんなどの日本画、梅原龍三郎さんや岸田劉生さんなどの洋画、石内都さんの写真など現代作家の作品まで、本当に幅広くたっぷり楽しめますよ。

補足:特別展と比べて、入館料がリーズナブルな館も多いです。MOMATのように高校生以下は無料、ってところや、トーハクや西洋美術館のように特別展のチケットがあればコレクション展は無料ってところもわりとありますね。

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ぜひ、コレクション展へ!
そしてNaomi_Nがこれぽーとで書いた記事もご紹介✨


ということで最後に、わたしがこれまでにこれぽーとで掲載した、3つの記事をご紹介させてください。
どの館も個人的に好きで、ぜひその魅力を伝えたい!!!と、できるだけ堅苦しい文言にはせず、でも暑苦しくw書かせてもらいました。

わたしの記事に限らず、これぽーとには、全国各地の魅力ある美術館・博物館のレビューが掲載されています。どれも書き手が現地に足を運び、コレクション展・常設展をあれこれ取材して書いています。

ぜひのぞいていただいて、今度ここに行ってみたい!と思っていただけたなら、とっても嬉しいです。


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次の記事は 9月5日(日)に公開します。


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