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熊の捕獲について考えたこと 〜長野県泰阜村R5年度12月定例会より〜

2024年12月定例会が終わりました。

今回の議会では
・熊の捕獲について
・森林経営について
・遊休地対策について
・村道を廃線にするための判断基準について

考えさせられました。

その中で、今回、最も議論された熊の捕獲について振り返ってみたいと思います。

村民の方から、
熊の被害が甚大で、養殖している魚の水槽が壊されてしまった。被害総額も数百万程度にもなるとのこと。熊をなんとかしてほしい、なんともならないのならば、保障をしてほしいという陳情がありました。
感情は最もですよね。。。

熊に関しては泰阜村だけではなく、全国各地で人的被害が増えています。(4〜11月で約200件。例年の2倍とのこと)

・・・とにかく、クマのことばかり考えていた1ヶ月でした🐻


熊の捕獲について考えたこと

1️⃣現状では、市町村判断での熊の捕獲に制限がある。

ツキノワグマ出没時の対応マニュアル🐻によると、
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.pref.nagano.lg.jp/yasei/documents/kumamanual.pdf

現状、市町村判断で熊の捕獲が許されるのは、対応基準レベル4の人身被害が起きた場合か、人身被害が起きそうな場合のみ。それ以外は市町村判断での捕獲は制限されており、県への報告が必要である。それも熊を捕獲しても良いかと伺いを立てて、許可が降りてもその申請で捕獲できるのは原則1頭のみ。

熊が出没した、農作物への被害がある、という現状を持って県に申請をあげたとしても許可が降りない場合もあるのだと・・・。

村には猟師さんがいらっしゃいますが、「猟期」というのが決まっていて熊を捉えて良いのは毎年11月15日~翌年2月15日と期間が定められています。
この猟期期間外に熊を捕まえるには、県への届出が必要なのだとのことでした。

2️⃣被害があるだろう、ということで個体数調整をしてはいけない。

3 個体数調整許可基準
(1) 個体数調整は、原則として「現に被害が発生しているか又は人身被害の発生のおそれがあ り、被害防除又は再発防止策を講じてもなお被害が防除できない場合」に申請に基づき許可 する。

(2) ツキノワグマは、生息数と被害発生の間に顕著な因果関係が認められないことから、例年 の状況から被害発生を予察して行う個体数調整は原則として許可しない

(3) 個体数調整の許可に当たっては、クマ対策員等の専門家と連携し、可能な限り現地におい て被害状況を確認するよう努める。

ツキノワグマ出没時の対応マニュアより

ここにあるように、今年は熊の目撃情報が増えている、という程度では熊を捕獲してはいけないのですね。
熊が増えているから被害が増えるわけではないという前提に立っているわけですが、その前提は果たして正しいのか?ということを考えました。

猟師さんと話をすると、目撃情報も増えているし農作物への被害もあるのに人的被害がないからという理由で捕獲できないのはなぁ。。。
と仰られていました。
撃った方がいい、と口を酸っぱく言っているが、熊が増えているからといって被害が増えるとは限らないというのが国・県の考え方なのだと。
むやみやたらに撃てないとのこと。

だけれども、国や県はそもそも熊の生態や個体数をしっかり把握しているのか?
それに基づいた計画になっているのかは、多面的にみていかないといけないし、熊の捕獲に関しては机上だけでなく現地の猟師さん、農家さんの話を聞いて一緒に考えていく必要があると感じました。

2️⃣市町村判断で熊の捕獲を許可するための「ゾーニング」が長野県では未実施

環境省熊のは広域的な保護・管理の推進、ゾーニングによる管理、モニタリングの実施を推奨しています。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.env.go.jp/nature/choju/plan/plan3-2c/panfukuma.pdf


実効性のあるこれからのクマ類の保護・管理のために特定鳥獣保護・管理計画作成のためのガイドライン より


ただ、委員会で質問したところ、泰阜村ではまだこのゾーニングができておらず熊の捕獲は猟友会のメンバーが猟期中に捕獲できるのみ。
長野県下でも第5期ツキノワグマ保護管理は5カ年計画であり、ゾーニングが完了するのはR9年度までと先の長い話であるようです。

熊類ゾーニングの実施状況
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.env.go.jp/nature/choju/conf/conf_wp/conf04-h30/mat03-1.pdf

長野県第二種特定鳥獣管理計画 (第5期ツキノワグマ保護管理) (R4年5月策定)
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.pref.nagano.lg.jp/yasei/documents/dai5kikumahonbun.pdf

なるべく早くゾーニングがなされ、熊に対する適切な対策を市町村単位で行えると良いなと思います。

4️⃣建設産業委員会としてお願いしたこと。


人身被害の有無に関わらず市町村判断で熊の捕獲ができるように、ゾーニングの早期実施を検討してもらいたい。

ということを委員会ではお願いしてきました。

今後、委員会としてできることは、

  1. ゾーニングの実施状況の確認

  2. 熊の個体数の把握について言及すること

  3. 熊の管理計画に地元の猟師の意見を取り入れるように訴えること

かな?と思っています。他にあれば教えて頂きたいです。

※村では補正予算で熊のドラム式捕獲器を2台新たに購入しました。(1台15万円)

5️⃣個人的に思うこと

スギ、ヒノキなどの針葉樹単相の育林が進み実のなる広葉樹林づくり(針葉樹との混こう林化)が忘れられた。おそらく相当長期にわたるだろうが、将来を見据えて森の形を徐々に変え、動物と人間が共生できる地域社会、豊かで優しい循環型・持続型の生態系に戻さなければならないと考える。  これには時間がかかるが、やりがいのある事業だ。日本初の林学博士・本多静六が計画した「神宮の森づくり」は、100年後を想定して始まり、見事に実現された。いまからでも決して遅くはない。

「相次ぐクマ被害に今からできること」より



「長期的には森林の生態系回復が不可欠」との意見に、深く同意しました。

⇧こちらの記事にある通り、日本の人工林のほとんどは針葉樹とのこと。
その針葉樹が今、使い道がないのが現状です。
村も戦後大規模な植林を行いました。
その木材を運び出すために、先日約60年間工事をした「林道千遠線(ちとおせん)の期成同盟会に理事として参加してきました。千遠戦も、間もなく開通するのですが、開通当初は木材の運び出しというのが目的でしたが、当時は主要産業だった林業は衰退し、林業従事者はほとんどいないのが現状です。当時植えられた木たちは、今は使い道がなくなってしまっています。
「当分切れない」というのが、今回の委員会での当局での答弁でした。

当時、泰阜村だけでなく日本の約半数の広葉樹(熊のご飯になる木の実のなる木)が切られ、熊のご飯にはならない針葉樹に置き換わってしまったわけで。。。

熊の気持ちとしたら、自分のお家に人間が勝手に入り込んで大切なご飯の木を切って行ってしまった。代わりに木を植えていってくれたけど、それはご飯のならない木だった・・・と思うと、確かに被害があるから一方的に熊を撃て!というだけではいけない気もします。もちろん、人的被害があってはいけないのですが、熊の個体数調整を人間が行って良いのか?という議論は続けていかないといけないなと。。。

ものすごく個人的な見解ですが、クマの出没と人里への影響は、生態系を維持していた木を「早く育つ木」「お金になる木」に変えてしまった人類に何か警鐘を鳴らしてくれているようも思うのですね。。。だからと言って、自分が被害に遭ったら「なんで私やねん」と思うと思います。
だから、仕方ないと諦めることなく、考え続けていかないといけないなって思います。

人工林を、豊かな生態系を保っていた頃の森に戻せないのかな?
これから人口はどんどん減っていくでしょう。戦後、人口が増えていく際に無理に拡大した土地を、どうしたら安全に安心に元に戻せるのでしょうか?

来年度(R6年度)から徴収が始まる森林環境譲与税。
その配分比率に「人口」が含まれていることで泰阜村への配分は500万円程度にしかならないという当局の答弁でした。
500万円しか、なのか、500万円も、なのか。
その中でできることはないのかな?
ここからまた森林計画に関しては、考え続けて行きたいと思います。

6️⃣私個人にできることは「木を使うこと」なんじゃなかろうか。

こんなことを考えるようになってから、私個人的にできることは、「木を使うこと」だと思うようになりました。
もちろん、私ひとりが木を使える量は限られていますが、
木を使う喜びを感じ、そんな暮らしを発信することで少しでも里山の生活や林業に興味を抱いてくれる人がいたら少しずつでも増えて行ったら、今、お荷物扱いされている人工林も喜ぶんじゃないかな?と。

そんな背景もあり、昔泰阜村の基幹産業でもあった炭焼きを経験してみたいと思うようになりました。

先日は父に頼んで、山に入らせてもらいました。
父と、弟と炭焼き用の木を切り出しました。
私も、チェーンソーを持ち、細い木を何本か切りました。
この冬に、軽トラ2台分の木を集めて、今は使われていない炭窯で炭を焼いてみたいと思います。
炭ができたら、その炭で仲間たちと五平餅を作ってBBQをしたいと思っています。
そんな風に、木のある生活を楽しみたいと思うようになりました。

少しずつでも、木のある生活をしてみたい人が増えたらいいな。
そしてずっと先になるかもしれないけれどいつか、また、村の森が広葉樹に戻るといいな。
熊も、山の木の実で十分生活できていくといいな。
そんなことを一緒に考えて、取り組んでくれる人と出会いたいな〜

なんてことを思った、R5年12月の定例会でした。

一般質問は村のH Pについてしてきました!
また備忘録を残したいと思います。

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