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させていただく

10年以上前、ある旅館で仲居さんがテーブルに料理を並べる度に、「失礼させていただきます」と言っていて違和感を感じた。
丁寧に言っているように聞こえるし、間違っていないようにも聞こえるけれど、過剰な表現だと思った。

そして、ここ数年「〜させていただく」という表現を頻繁に耳にするようになった。
「ご連絡させていただきます」「ご報告させていただきます」「ご案内させていただきます」
など、みなさんも聞くことが多いのではないだろうか。

これらはどれも「連絡いたします」「報告いたします」「案内いたします」
で十分丁寧な言い方である。
それに、「ご連絡・ご報告・ご案内」だが、自分が目上あるいはお客様に対してする行為なのだから、「ご」を付けて敬語にするのはおかしい。

「させていただきます」は「させてもらう」の謙譲表現で、行動を遠慮しながら行うという意味、へりくだった言い方である。
文化庁がまとめた敬語の指針では、
 ○相手の許可を受けて行うこと
 ○恩恵を受けているという事実や気持ちがあること
この2つの条件を満たすときに使う、と定義されている。

「前回お話させていただきたときに」
「○○の番組に出演させていただきたときに」
「明日は臨時休業させていただきます」
いずれも伝える相手の許可を得て行うべきことではなく、ここまでへりくだった言い方をする必要はないはずだ。

なぜ、過剰に丁寧な言い方ををするのだろう。
近年は、テレビやブログ、Twitterなどでの発言が揚げ足を取られたり、誤解されたりして非難を浴びることが少なくない。
必要以上にへりくだった言い方をするのは、そうしたことから身を守ろうとする、自己防衛のためなのかもしれない。

最近は、テレビのアナウンサーも、「詳細はホームページでお知らせさせていただきます」などと言っている。
どうしても違和感を感じるが、当たり前の表現として、これからますます使われるようになるのだろう。

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