申し訳ない
日本語を生業にしているからか、間違った日本語の使い方が気になる。テレビや雑誌、車内広告、折り込みチラシなど。
気をつけていると、意外と誤用や誤字は多い。
ここでは、気になる表現や、好きな言葉など、日本に関する様々なことを思うままに書いていこうと思う。気軽に読んでいただければ幸いだ。
言葉は生き物である。
だから、新しい言葉、表現が生まれたり、同じ表現を以前とは違った意味で使うようになったり、時代と共に変化する。
「〜で候」とは、今では誰も言わない。
例えば、「申し訳ありません」。
これは本来、間違った言い方である。
それは、「言い訳ができないほど相手にすまない気持ちがする」という意味の「申し訳ない」は形容詞で、「ない」を変化させて使うことはできないからだ。
丁寧に言いたいのであれば、「申し訳ないことです」「申し訳なく思います」とするのが正しい。
しかし、もう何十年も前から「申し訳ありません」「申し訳ございません」が定着し、国語辞典にもそれらは丁寧な言い方だと書いてある。
いつ、誰が言い出したのか分からないが、申し訳ないの「ない」を丁寧に言おうとしてこうなったのであろう。
私は、いつ頃から「申し訳ない」という言葉を使うようになっただろうか。たぶん社会人になってから、クライアントに謝るときだ。そして、何の迷いもなく「申し訳ありません」と言っていた。
正しい使い方を知ってからもそうで、時々思い出したように「申し訳ないことです」を使っている。
ずっと広報、編集の仕事をしていたので、日本語を正しく使うことに気を配ってきたが、「ライター」という肩書を名刺に入れるようになってから、より意識するようになった。
普段何気なく使っている言葉でも、その意味を調べてみると新たな発見があったりして面白い。
元々の意味とは違った使われ方をしている言葉、使われなくなった表現、新しく生まれる言葉。
いつの日か、誰も「申し訳ないことです」とは言わなくなるかもしれない。
でも、本来は間違っている、「申し訳ありません」は時代の流れによって変化した言葉だということは伝わっていってほしいと思う。
次は、今、まさに新しい使われ方が定着しつつある表現について書く予定だ。