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サントリー・オールドを。

ときどき、ウイスキーを飲んでいる。
若いときは、
もっぱら日本酒とビールだけだった。
その頃イギリスに出かけた友だちが、
スコッチウイスキーを買ってきた。
グレン・リベット12年。
友だち宅で御相伴に預かったら、その旨さに
感嘆して、飲むようになったのだった。
その頃は、マッカランやグレン・リベット、
グレン・モーレンジなどのスコッチに、
山崎、白州、余市に宮城峡などの国産と、
上等な銘柄ばかり買っていた。かつて、
懇意にしている日本酒の蔵元さんが、
若いときは吟醸など上等な酒を飲み、
歳を重ねたら、安い普通酒に戻るのが粋な
酒飲みと言っていた。
この頃は気が向けば、コンビニで
ブラック・ニッカなんぞを買うときもある。
肩ひじ張らず、枯淡の境地で酒のひとときを。
それが好い歳になっている。
久しぶりのかたが訪ねて来た。開口いちばん、
これ飲んでと紙袋を渡された。
中身を見たら、サントリー・オールドが入っている。
息子さんが会社を経営していて、お中元とお歳暮に
酒をもらうことがある。お歳暮にウイスキーを
もらったものの、息子はビールと焼酎しか
飲まない。御好意をこちらに回してくれたのだった。
サントリー・オールドは懐かしい。
子供の頃、台所の戸棚に置いてあり、ときどき父が
飲んでいた。
その頃はまだ山崎も白州も出ていなかったから、
サントリーの高級ウイスキーの位置づけだった。
薄給の父が自ら買ったとは思えないから、
おそらく美容師として羽振りの良かった母が、
知り合いから頂いたものかと想像がつく。
オールドのCMがなかなか好くて、内村準や
長塚京三、田中裕子がしみじみとした
味を出していた。
恋は、遠い日の花火ではない。
ユーチューブで再見したら、やはり田中裕子の
静かで切なげな佇まいが好い。好いなあ。
子供の頃から目にしている、通称ダルマと呼ばれた
黒いボトルは、口にするのは初めてだった。
ショットグラスに注いで利いてみたら、爽やかな
樽香を感じさせる、やや乾いた麦の味がする。
寒い夜、お湯割りにして飲んだら、甘みが
すっと伸びて旨い。調べてみたら
二年前に、日本洋酒組合が、日本ウイスキーの
定義を定めたという。
原材料は麦芽を必ず使用する。
日本国内の水を使用する。
国内の蒸留所で蒸留する。
原酒を700リットル以下の木樽に詰め、日本国内で
3年以上貯蔵する。
日本国内で瓶詰めする。
オールドもこの定義に当てはまるという。
二千円でお釣りがくるのに良心的なこと。
感心しながら、早々にボトルを空けたのだった。

寒明けやダルマのお湯で迎えおり。







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