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秋めいて。

長野にようやく秋の気配が感じられるようになった。
夜明けが遅くなり日暮れが早くなり、朝夕に涼しい風が
吹き、日中の暑さが収まってきた。
この夏の暑さはすごかった。連日気温が余裕で三十度を
超え、陽射しの強さが肌に突き刺さるようだった。
スーツ姿のかたや、外で作業する作業服姿のかたは、
この暑さの中大変だなあと、見掛けるたびに思って
いたのだった。
ふだんの外出に車を使うことがなく、てくてく歩いている。
休日の蕎麦屋の昼酒に行くときも、カメラをぶら下げて
あちこち写真を撮るときも、夕方、馴染みの飲み屋に行く
ときも、暑い中を歩いていた。仕事のときはエアコンの
効いた室内にいるから、外の暑さと中の涼しさの温度差に
体の調子がおかしくなって、この夏はずっと体がだるかった。
用事を済ませに歩いて行って、帰ってくると、どっと疲れが
出て、なんにもする気が起きない日が続いていた。
九月に入っても暑さが衰えることがなく、まったく今年の
暑さは異常だねと知り合いに会うたびにこぼしあっていた。
暑さで体が弱ったのがいけなかったのか、ここのところ
持病の坐骨神経痛がよろしくない。痛みがまして、
なにをするにも顔をしかめているありさまだった。
暇さえあれば腰に手を当ててさすっているのだった。
九月の下旬になって、そんな暑さがようやく落ち着いてきた。
早朝、町をひと回り歩いている。一時間余り、少し速めの
テンポで歩いている。夏のさなかは、歩きだして五分もすると
汗が噴き出して、帰ってくる頃にはシャツもパンツもびしょ
びしょだったのに、この頃は風も涼しくなって、汗もそこまで
かかなくなった。
雲が青空のあちこちに散らばって、彼方の山々は淡い色で
並んでいる。目にする景色も秋の柔らかさが感じられるように
なっている。この頃は、以前のように穏やかに季節が移る
ことがない。秋になったらなったで、いきなりの寒さがやって
くるかもしれない。季節に体が追い付かない。そんな歳に
なっていると、この夏はつくづく実感した次第だった。
体調を気遣って、今年の秋を満喫したいものだった。
秋の彼岸、ご先祖様に我が身を見守っていただくよう、
よくよくお願いしたのだった。

腰痛をこらえて参る秋彼岸。


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