No.1 更紗マニアへの道 ~はじめの一歩~
naomariaです。
ここ数年、私の感情の針はあまり大きく揺れ動くことはない。
そのことに妙に落ち込み考え込むことが多くなった。
すごく喜んでたり悲しんでたりする人を見ると、引いてしまうほど、感情がフラットなのだ。冷めてる、とでも言うのかな?
ただ、そんな私にでも何か「きゃー♡」という瞬間があるはず!
これでも一応血の通っている人間。
絶対に何かあるはずだ!
数年前までは、周りの人たちと同じように気分高揚したこともあったしね・・・と、数ヶ月もの間、自分の感情をひたすら観察し続けていた。
更紗へのはじめの一歩
「更紗」へ到達するのにまずやったこと。自分の好きなこと・ものを挙げ、どうして好きなのか?なぜ今はそうでもないのか?もう今後はやらないのか?なぜこれはいつまでも好きなのか?などといった、リストアップと検証。これらをていねいにひとつずつ重ねていった。
昔から好きな「版画」「アナログ」「さまざまな模様」「ステンドグラス」「布」「紙」。。。いろんな「好き」があったな、と思いだした。
約10年続いている着物の収集。古布を使ったアート作品(のちの”着物コラージュアート”へと発展する)を作り始めたのがきっかけで、まずはちりめんのハギレから収集が始まった。古典柄の模様自体の美しさと配色の美しさ。作品に取り入れるだけで気持ちが上がった。本格的に着物を収集するようになり、いつしか「布」というものが作家活動をする私にとってかけがえのないツールとなり、欠かせないアイテムとなっていく。ただ、布に限らず紙も好きだという事実に冷静に向き合うと疑問が湧いてきた。
見つけた更紗への糸口
布も紙も私の中で同じ扱い。ただ素材が違うだけ。布や紙だけじゃない。商品パッケージもなんでも好きだったりする。そこにある共通点は?
デザイン
ハッとする。目が覚めた。そうだ!そうだった!!私はそこに描かれているデザインや配色にいつも心を奪われていたんだ、ということを。さらに追求し始める。私はいったいどんなデザインが好きなのか?
文様
たくさん文様を作品にしてきた。心動くデザインは、どこか均整保たれたパターンだったり、銅版画風の繊細なイラストだったりする。そういえば、何年も前にアラベスク文様の図案集を買っていた。イスラム美術の本も借りて読んでいた。今手元にある本。それらを見渡すと、全ての要素を持ち合わせた「更紗」に行き着いた。買ったものの読んでなかった更紗の本『更紗ーいのちの華布ー』。この内向の時、初めて開いた。開いて衝撃を受けた。
【布や紙が大事なのではなく、そこに描かれているデザイン~更紗と繋がるもの~が私にとって大事なものだった!】
目覚めた更紗愛
更紗の発祥はインド。インド更紗の模様は、手書きとブロックプリントの二つの手法で布に描かれる。私が30年ほど前に手にしたものは全てブロックプリントだった。30年前にはすでに気付いてたんだね、私自身の潜在的な好みを。このとき、私の版画好きにリンクした。ブロックプリントに使われる木製の版。手彫りで作られ、専用の天然染料で捺される。シナプスがガッツリ働いたかのように、太いパイプで繋がった。
【版画・アナログ=ブロックプリント=更紗】
そういえば、ウィリアム・モリスも好き。植物などのデザインをパターン化し、ブロックプリントで捺し壁紙などを作っていた。まさに、更紗の技術と手法だよね。
更紗の歴史を調べていくと、大航海時代にヨーロッパに渡ったとされる。それまでのヨーロッパでは毛織物が主流だったが、軽くて丈夫な扱いやすい綿がもたらされ台頭し、多くの毛織物に関わる人々が職を失ったとされる。そんな事情もお構いなくインド更紗に惚れ込んだ貴族たち。商人や職人たちがそんな貴族たちを顧客に持つため、更紗はヨーロッパで独自に発展していった。フランスでは、ブロックプリントから独自発展した銅版画でプリントされた更紗が人気となる。ヨーロッパでは、より写実的な描写が好まれるので、銅版画の更紗が誕生したのだろう。
銅版画。はじめて銅版画の作品を見た時から惚れ込んでいる。もう25年になる。どうしても自分でやってみたく2年前教室へ通い始めた。無我夢中で楽しんだが、手首が腱鞘炎になりそうだったので、後ろ髪引かれながらも辞めた。着物コラージュアートの作品が作れなくなるのが嫌だったから。
ここでもまた更紗に繋がるパイプが現れた。
【銅版画=中世ヨーロッパ=ジューイ更紗(フランス)】
更紗は中東にも伝わっている。ペルシャ更紗として、インド更紗と同じようなスタイルで発展している。これはペルシャの職人がインドを訪れ技術を学んだこともあるが、それだけに限らずインドとペルシャとの交流が深く長かったこともある。他の地域の更紗と比べても、広い意味でインド更紗の特徴を厳密に受け継いでいるように見受けられる。
ペルシャとは今のイラン。ペルシャ更紗の特徴は、モスク型のアーチ、生命の樹、立木、ペイズリーなどである。時代を経ると、唐草など今でもおなじみの模様も描かれるようになる。アラベスクのような対称形の文様をはじめ、自然のものをモチーフとした更紗はさらに精度を増し、一歩抜きんでた印象を放つ。このアラベスク文様のような美しいモチーフは、見ていて気持ちがいい。均整がとれているので、惚れ惚れする美しさを放っている。さまざまな模様が好きだが、昔からこのアラベスクは好きでたまらない。
【さまざまな模様=アラベスク=ペルシャ(更紗)】
こうしてみると「こじつけ」が多々あるように感じられるかもしれないけど、自分が「そうだ!」と腑に落ちればそれでいい。誰の許可も伺いも必要ない。こうして、点在していた「更紗」に繋がる要素が線で繋がり、太いパイプとなり、自由自在に双方を行き来できるようになった。
更紗を深く知り、深く愛する
いくら「昔から更紗が好きだった」と気づいても、更紗のことは知識として深く知っているわけではないので、自分が納得するために勉強を始めた。「深く知り、深く愛する」。それをしたいと思った。その過程で、ただ自分の中にしまっておくのではなく、こうして「書く」ことにより自分自身の理解がより深まるし、更紗への愛がさらに強まる。それがどのように人の役に立つかは知らない。そこはもう私の範疇にはないので、そこは意識せず書き続けていきたいと思う。ただ、読んでくださる方が少しでも理解しやすいように、は意識する。回数を経て文章力は磨かれていくと思うので、その辺は大きな心で長い目で見守ってくださると幸いです。
naomaria
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