「校則の改正」と「18歳意識調査」
私が教師として勤めていたのはわずか7年ですが、その間にたくさんの「なぜ」を抱えて仕事をしてきました。
その中の一つが「校則」や「ルール」です。
私が経験した変な校則
私が働いていたとある高校では、冬服の着用に関して理解不能な校則がありました。
まず、その高校の制服について説明します。
冬服
・ブレザー
・スカート/ズボン(冬素材)
・カッターシャツ(学校指定)
・学校指定セーターベスト(校章入り)
学校現場は夏にとても暑く、冬にとても寒いところです。
教室内に入れば、エアコンがありますが、登下校や廊下は例外です。
冬服の着用規定の中に、
・セーター姿の場合は学校指定のセーターであること
・市販のセーターの着用は認めるが、その場合は必ずブレザーを着用すること
というのがありました。
つまり、授業中やその他の場面でも、市販のセーター(UNIQLOなど)姿でいることは禁じられる。ということになります。
また、ブレザーの下にフード付きのパーカーを着用することも認められません。フードがブレザーから出ているのはだらしないそうです。
カッターシャツでは寒けれど、ブレザーを着ると暑い。
そういうことはないでしょうか?
つまり、セーター姿が一番心地いい。という状態です。
しかも、ベストではなく、袖のあるセーターが良い。という時です。
しかし、それを言うと、
「では、学校指定のベストかブレザーを着なさい」
と言われます。
何故、市販の長袖セーターではダメなのか。
それは校則に「そう」定められているからです。
過度な秩序は生徒を思考停止に追いやる
私にはその校則が一体何のためにあるのかがわかりませんでした。
よって、私自身が明確な説明理由を持たず、生徒にその校則を強いることはできませんでした。
周囲の教師たちにその理由を聞きましたが、
「この学校はずっとこのルールでやってきた」とか、
「服装の乱れが学校の風紀悪化に繋がる」とか、
「校則を変えるには同窓会の許可がいる」とか、
「せっかく指定セーターがあるんだから、それを着れば良いだけの話だ」とか、
何だか納得のいかない回答ばかりをもらっていました。
また、市販のセーターで過ごす生徒たちを教師が指導する姿を幾度となく見てきましたが、その指導に歯向かう様子の生徒がいなかったことも印象的でした。(いや、時々います)
そこで、生徒の本音はどこにあるのか。私は授業で探り続けました。
「みんな、冬服の指導に文句とかないの?」
「どういう根拠があって、あんな風に指導されるか考えたことある?」
私は何度も、自分が授業担当するクラスで問いかけました。
「意味わからんよ。でも仕方ないやん。決まってるって言われるから」
「先生、俺らに暴動でも起こさせたいの?笑」
「生徒を煽ったらあかんで、先生」
「自分たちが何かしてもどうせ変わらんよ」
こういった意見をたくさん聞いた時、私は日本の未来を憂いました。
今、高校生である彼らに罪はありません。
でも、彼らが大人になった時、きっとこの国のことや、政治に関わることに対しても、こうやって諦めるような言葉を口にするのではないか。
そんな風に思ったのです。
彼らの発言は、完全に「思考停止」がもたらすものだと感じました。
「そう言われるから仕方ない」
と、当事者意識もなく、ただ「流れに任せるが善」だと思い込んでいるのです。
そして、それは高校生である彼ら自身の責任ではない。ということを忘れてはいけない、と強く思いました。
世界9ヵ国で行われた18歳意識調査の結果
2019年の冬、一時帰国に向けて東京にある麹町中学校の工藤先生に手紙を書き、学校視察会のご招待いただいたことがありました。
その時、工藤先生が紹介してくださった資料を見て、私の中の何かが繋がりました。
18歳意識調(9カ国)「第20回 –社会や国に対する意識調査-」 (2019/11/30)
この調査は世界9カ国で実施され、調査の中では17歳〜19歳の青年たちが「社会や国に対してどのような意識を持っているか」ということが問われています。
私はそこで衝撃的な結果を目の当たりにしたのでした。
第20回テーマ「国や社会に対する意識」(9カ国調査)
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/11/wha_pro_eig_97.pdf
少し画像が見えにくい場合は、↑上記のURLにアクセスしてみてください
画像で見ても分かるとおり、あらゆる質問項目において日本の結果は9ヵ国のうち最低値を記録しています。
・自分を大人だと思う
・自分は責任がある社会の一員だと思う
・将来の夢を持っている
・自分で国や社会を変えられると思う
・自分の国に解決したい社会課題がある
・社会課題について家族や友人など周囲の人と積極的に議論している
特に、
「自分で国や社会を変えられると思う」
という項目においては、18.3%です。
今思えば、40人いるクラスの多くが82.7%だったのです。
そして、18.3%の生徒たちが声を上げずにいたのです。
規則やルールの意味を一緒に問う大人
私が7年間教師として働く中で感じたのは、
「こう決まっているからこうなの」
という大人の意見をいとも簡単に飲み込めてしまう生徒たちの従順さです。
世の中には解のない問いがたくさんあるはずなのに、与えられた「解風」の回答を「そうなんだ」と受け入れてしまう。
「本当に?」
「絶対そうだと言い切れますか?」
という生徒の発言を「反抗的」だと捉えてしまう大人の未熟さを、子どもたちは教育の中で受け入れ続けた結果、18歳になってしまったのだと思いました。
とは言いながらも、私自身も主体性を育む教育を100%実践してこれたか、と聞かれれば「はい」と答える自信はありません。
自分は生涯を通して日本の教育を受け、その良さも悪さも享受し続けてきたと言えます。
そうやって身体に、心に、脳に染み付いた教育を取り除くことはとても難しいと感じます。
だからこそ、今学校教育を受けている子どもたちの教育の行方をきちんと見据えたいと考えています。
もしお時間があれば、18歳意識調査を覗いてみてください。
「ただの調査だ。嘘の数字も含まれているのではないか」
そう思われるかもしれません。
それでも一度覗いてみてもらえたら、と思います。
その結果を見ても、
「日本の未来は安泰だ」
そう言えるかどうかを確かめていただきたいのです。
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