オランダの生活文化に馴染めない?馴染もうとしない?
こんにちは!オランダに暮らし始めて5年が経ち、その中でオランダに移住してくる人たちと出会い、オランダを去る人たちとの別れがたくさんありました。そんな中、先日、同じくオランダに移住してきた中国人ママと立ち話をしました。
彼女のパートナーはドイツ系中国人で、ドイツ人と中国人のミックスなのだとか。家族でオランダに暮らし始めたのが同時期の私たち。そんな彼女は近所に住んでいて、近くのカフェでも働いています。近所で顔を合わせたら立ち話をするのですが、先日彼女に、
「オランダの生活には馴染んできた?」
と聞かれました。
「うん、そうやね〜。市民化テストも受験して今は結果待ち。いわゆるオランダ社会では働いていないけど、その代わりにボランティアを始めたよ。あと、学校で英語も教えてる。そんなに毎日毎日オランダの人たちと関わる訳ではないけど、日数とか時間は増えてきてるって感じかな〜。けど、一生この国に住みたいかと言われたらちょっとまだわからんって感じ。とにかく、子どもが現地校に通ってるから、今すぐ帰国するっていう予定もないけど」
と、正直なところを話したところ。
「そうか〜。私はカフェで働き始めたけど、なんかこの国でずっと生きていくっていうのはやっぱりないな〜って感じがしてる。"自分の国じゃない"っていうのが払拭できないっていう感じ?ずっとどこかで"別の場所に住みたい"っていう気持ちがあるんよ〜。家も買っちゃったし、子どもたちも現地校に通ってるから、今すぐどうこうできないっちゃできないんやけどな〜」
と教えてくれたのでした。
オランダの人たちのコミュニティには意外と入りにくい?
実はここ2、3年でオランダを去り、日本へ本帰国したり、別の国に移る日本人移住者の話がちょくちょく聞こえてきます。交流のあったご家族や知人を次々と見送っている感じです。事情はそれぞれ。最も大きい理由はこの「円安」かもしれませんが、文化や生活が合わないというのも大きいかもしれません。
5年目を迎えて思うのは、日本人として、意外といわゆる「オランダ人」のコミュニティに馴染めない人たちも多いのではないかということです。かくいう私も、毎日彼らと頻繁に交流しているかと言われればそうではありません。子どもの送迎でパパママたちと話をしたり、その中でお茶しに行こうか〜なんて話になることもありますが、その他には放課後の遊びや誕生日パーティーで簡単に会話をするくらい?たまに食事なんかもしますが。あとは前述した通り、ボランティアや現地校勤務で彼らと話をする程度でしょうか。
例えば、オランダのニュースをまとめている日本語のサイトにはこんな記事がありました。
これ、本当にそうだと思います…が、意外とオランダだけに言えることではなく、よその国でもそうなのかもしれません。とりわけ、オランダでは移民政策に対して良い印象を持っていない人たちの数も増えているようで、いわゆる「右派」の人たちも増えているのだとか。それはある意味「自分たちの国が危ぶまれている」という意識の表れなのかもしれません。
一方で、別の国や別の文化からオランダにやって来た人たちの方が「自分」というものを「この国の生まれではない人間」と捉える時、共感や生きやすさを求めて「他のコミュニティに属する人」と関わろうとする傾向があるのだとか。いわゆる「移民」というバックグラウンドを共通項として「わかる〜」みたいな気持ちを共有したいというのがあるのかもしれません。
「馴染めない」じゃなくて「馴染もうとしていない」?
さて、そんな私もここ数年、「そろそろオランダの文化に"自分から"入っていくか〜」という気になって、現地校での仕事やボランティアを始めました。保護者との関係とは違う部分に飛び込んでみようと思ったのです。
現地校の勤務とボランティアを始めてから働き出してから、職場は全員オランダ人になりました。すると、その異なる2つの場所を通してオランダ人の働き方や考え方のようなものが共通点として浮かび上がってくることもあって、色んな意味で面白くなってきました。
結局、自分が日本人として日本に生きていて、外国から来た人が「日本語を学んでいる」と言ってくれたら嬉しいもんです。「日本の文化に馴染みたい」と懸命に生きていたら、それを助けたいとか、尊重したいと思うのも自然なこと。オランダの人たちに囲まれる中で「オランダ語頑張って勉強してんねん!」なんて言うと、とても喜ばれます。
これまで、オランダに住む自分はこの国の人たちに近づこうとしているか?馴染もうとしているか?「住まわせてもらっている」という気持ちを表しているか?と聞かれたら、そこまで積極的ではなかったと反省し、自分からもこの国の文化に馴染みにいこうと思ったのが数年前でした。
そうやってこの国の文化に馴染もうとしていることを、学校の保護者に話すと誰もが喜んでくれました。ある保護者は、ボランティア活動をしていることに対して「あんたはすごい!!」とハグをしてくれました。笑
「馴染めない」のではなく、「馴染もうとしない」ことが自分の課題だったのだと気付かされたのは大きかったように思います。
ハードルを超えていけるか
オランダ語のレッスンを受講している時、先生が言いました。
「オランダに駐在として出向してくる人たちはたくさんいるし、それでオランダの経済が潤っていることも確か。そうじゃない移民難民の人たちのおかげで労働力が補われていることも確か。でも、結局それだけになってしまって、言語を含めて自分たちの文化が尊重されていないと感じているオランダ人がいることも確かなの。馴染むためのきっかけが少ないのかもしれないし、馴染もうとする意思が人々にないのかもしれないし、どっちにも原因があるのかもしれないわね」
いわゆる「まだオランダ語が話せない人たち」がオランダという国でどのように振る舞い、生きていこうとするのか…そこに「リスペクト」が足りないと感じているオランダの人たちがいるということを知りました。
どんな問題があるにせよ、所詮は人と人の話。交わろうとすればドアは開くもの。というのが今の自分にはあります。私がアジア人だろうが、見かけが中国人や韓国人に見えようが、私がどのように関わり、話し、何をするかを彼らは見ているのだということも強く自覚するようになりました。むしろ、彼らの意識はそこにフォーカスしている場合も多く、それが分かれば私がアジア人であることなんて全く気にしていないように見えることさえあります。
「住まわせてもらっている」を大切に
ここが自分の母国ではないから、移民として生きているからといって、自分を卑下したり遠慮したりする必要はありません。でもどこかで「住まわせてもらっている」と思っていなければ、その態度は節々に出るような気がします。
ここはオランダ。オランダ語を話す人たちの国。
いくら生活ができているからって、彼らの生活文化を尊重しない生き方は好まれません。私が日本人として日本の文化を尊重されると嬉しいのと同じ。
…とはいえ、異国でその土地の生活や文化に飛び込んでいくのはちょっと勇気がいります。でも、逆にそれをしなければ、この国の生活、文化、教育、考え方の解像度が上がることもなかったりするのかもしれません。
「馴染もうとしない」自分にさよならを告げて「馴染もうとする自分」に。
そんな風に考えて、オランダに住まわせてもらっている日本人として生きていきたいと思います。