歴史地理学 これからの課題
私が歴史地理学を学び始めた時、歴史地理学とは、単に古い地図や風景絵画等から昔の土地認識や、土地利用を知ることで、現代の土地利用に活かす…ことを目的とする、恥ずかしながら、単なる昔の土地利用を研究する学問だと思っていた。
しかし、少し学びを進めると、土地そのものというよりは、古地図や絵画、写真、銅像などと言った資料そのものを研究することで、当時の政治や人々の思想、考えを知る、つまり、地理資料を通じて、土地というより、人の歴史を見つめる学問なのではないか?と、考えが変わって行った。
歴史地理学のこれからの課題とは、こうした画像資料が、政治的コンテクストとして存在したことを解明することで、歴史、そして過去の地理の解明を進めることである。
の部分にある通り、地図は知的武力という言葉に象徴される。地図には、帝国主義、人種、ジェンダーなど、特定の社会関係が描かれ、権力の様々な側面を読み取ることができる、とハーリーは主張する。
地図というものは、単に地理を視覚化したものでは無く、例え写真を元に描いたとて、結局誰か人間の目を通して描いたものに仕上げられるのだ。
写真を撮る場合でも、その視点を変えれば、見え方は変わってくる。その見せ方によって、支配や従属というコントロールを行えるのである。
故に、その「見せ方」のトリックと言うか、技法を研究者も分析出来なくてはならないだろう。
つまり、歴史地理学とは、過去の人々による、
「地域像」「国土像」「世界像」の解明が目的とされ、それらが現実的な事実とは別に、どの様なコンテクストを持って作られたのか?という視点もまた重要な課題である。
地図、または絵画などの画像資料には、様々な視覚イメージの伝達方法が施されている場合が在り、これらの資料をありのまま当時の地理と思い込むのではなく、その地図や画像には、現実の歴史、そこで起きていた事実が描かれていない可能性も含め、誰がどの様な目的で作成したのか、また、こうした仕掛けの様な視覚伝達手法により、どの様に支配や権力といったものが実現化したのか?という歴史そのものを知るてがかりとして研究する必要性がある。
また、その権力や支配の裏側で起きていた庶民の現実的な実態を研究することが、現実的なに起きていた歴史、そして当時の地理を本当の意味で知る方法だと思われるのである。
その様ならことが、歴史地理学の今後の大きな課題と言えるであろう。
(2024.12.7)