シナリオライターの映画観て歩る記No.3ケビン・コスナー編その2

ケビン・コスナーの映画は色々ありますが、今回は『ボディガード』をシナリオ作りの視点からお話したいと思います。 

コスナーのカッコイイのは勿論。映画の作劇と語り口、映像の迫力が素晴らしく、シナリオ作りの構成も見事です♪

筋をおおざっぱにまとめますと、
 何者かに命を狙われているスーパースターと、彼女を警護するボディガードとのラブサスペンスと、なります。

私の持っているビデオに付いている、 
渡辺祥子さんによる解説書から、映画の紹介をします。
        ☆

日本で公開されたのは1992年12月。
大人気でゴールデン・ウイークが終わるまで上映された。


「好きなキャラクターを全部持った脚本だったから、ぜひやりたかった」
と、ボディガード役のフランクについてケビンは言う。

相手役のスーパースターに、ホイットニー・ヒューストンを起用することを思いついたのは、ケビンだった。
制作、脚本はローレンス・カスダン。
監督はミック・ジャクソン。

愛のためにできること。
それは、命をかけて守ること。

この映画はこの言葉に尽きるのですが全編にみなぎる緊迫したシーンに引き付けられます。

大統領の警備をしていたフランクの役には、
誠実で意思が強く、心に優しさを持っているようなケビン・コスナーがピッタリ。

対するスーパースターには、歌唱力抜群で長い手足のスタイルの存在感は、
ホイットニーあってこそ! あの歌声を今もありありと思い出します。 

さて、本題にはいります。

      ⭐
ファーストシーンは、フランクがまさに、或る人物の警備をしているところが紹介されます。
こういう紹介は、"人物を売っておく"というシナリオの手法です。

次に、スーパースター歌手レイチェルのライブ中に爆破が起こる画面があり、
続いてフランクが警備を頼まれるシーンに。
ここまでが導入部です。

フランクは乗り気でないまま、レイチェルの邸宅に向かいます。
スーパースターらしい豪華な大邸宅。門をはいると小さなプールくらいの水槽があって黒人の男の子がひとり、船の模型を手にしています。
そこにやってきたフランクが、男の子に近寄っていきます。

実際に映画を観ていると、このシーンはさりげなく見やってしまうでしょう。話の先が気になるからです。

ですが、このシーンはこの映画全体を象徴する暗示が込められています。
水槽の池、子ども、船……。

映画はどのシーンも監督の狙いがあって何かしら意味があります。
先程の水槽のシーンも、映画の後半を観ていくうちに、思い当たるのです。
(ああ、船を持っていたっけ)とか。
これもシナリオ作りの伏線(ふくせん)です。

なので、ストーリーだけを追わずにシーンを観ておくこと!
私はシナリオを勉強している人には、ファーストシーンとラストシーンを、しっかり覚えておくようにと言います。

シナリオを書く時は、初めと終わりをどうするか。あれこれ悩んで苦心さんたん……。やっと始まりとラストの見当かついてから、シナリオを書き始めるのです。

話を映画に戻して、ラストまでの構成を
みていきます。

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  ️
フランクとレイチェルが惹かれ合うラブストーリー。その縦線にレイチェルを狙う殺し屋を突き止めるサスペンスの横線がからんで、話は進んでいきます。

いくつか事件があって、犯人か!と思った人物は真犯人ではなく、謎のまま。
このシーンで、冒頭にあった男の子と船を思い出してハッとなります。伏線がここに繋がるのです。

真犯人は分からないまま、いよいよクライマックスのライブシーンに持ちこされます。
緊迫するライブ会場。焦るフランク。
レイチェルはどうなる? 犯人は誰、どこにいる? 
フランクはレイチェルを守り抜くことが出来るのか⁉︎

思わず身を乗り出してしまいます。
上手い構成です。画面から目を離すことが出来ません!
犯人は意外な人物だと分かり、アッとなります。
これも、映画の始まりの方で伏線が張られていたのですが…。

ラストシーンも、なかなか粋(イキ)な計らいでした。

あぁ面白かった! 文句なしにそう言えるのがいい映画です♪

        ⭐️

ここで、シナリオ作りと映画作りの裏話をしたいと思います。
映画をご覧になるうえで、シナリオは役に立つのではないかと思いまして。

ライター業は50年になります。
アニメやドラマなど400本ほど書いてきましたが、残念にも映画化されたものはありません。

シナリオは脚本とも言い、アニメもテレビドラマも映画も基本は同じです。
アニメ脚本については、実は最近80代でインスタグラムとブログを始めて、
そちらで書いてあります。

        ☆
シナリオは手書きからワープロ、パソコンになって楽になりました。シナリオは書き直しが多いのです。

先ず話のストーリーやプロットを、プロデューサーや監督と打ち合わせをします。意見が色々出て修正します。
それからホンに入ります。
業界では脚本家は、ホン屋と呼ばれたりします。

最初に書いた脚本を初号と言い、何回も書き直していきます。
内容についてのあれこれのダメ出し、日程のスケジュールなどなど、直しが出るのです。いかに直して仕上げるかが、脚本の勝負どころです。

さて次に、ボディガードのレイチェルの邸宅シーンを例に撮影の様子を想定してみましょう。
あのゴージャスな邸宅を映画のために作るとしたら、設計者の製図を元に家を建て水槽を作り、邸宅を取り囲む庭木を植えなければなりません。

撮影となると、監督、助監督、カメラマン、照明、音声、録音、衣装、メイクその他など…それぞれの助手たち、何十それ以上のスタッフが関わることになります。
映画は大勢の人の総合作品なのです。

話の元を書いた脚本家は現場にはいません。映画のポスターや新聞の広告に脚本の名前は小さく載っていますが。
映画がヒットすると、俳優さんや監督が評価されます。
 ヒットしない時は脚本がよくなかったとされたりします。

それなのに脚本を書くのは、総合作品を作ったひとりだという喜びがあるからです。
 映画のエンドロールにたくさんの名前が上がってきます。映画に関わる人はそこに名前があるのが嬉しいのです。
脚本家もそのひとりなのです。

#80代インスタグラマー
#好きなこと見つける魂のアンテナ術
#あなたも書けるシナリオ術

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