LGBTとバレエ~ゲアダ・ヴィーイナ~
バレエ・リュスの事が多くなっていますが、私にとっての両輪はバレエ・リュスとバレエ・スエドワ。
今日はバレエ・スエドワにまつわるお話し。
以前こちらでもヘッダーに使ったり、自分のネイルにしてもらったりしているバレエ・スエドワ『愚かな乙女たち』・・・を描いたコメディアイ・いリュストレ誌の表紙にもなったこの一枚。
バレエ自体の美術・衣裳を手掛けた人物ではないのですが、何とも1920年代らしい雰囲気で大好きなデザイン。
描いた人を何となく調べていたら、まさかの事が分かりました。
だから研究はやめられない。
点と点が線になって、更に物語になる・・これが歴史研究(だけではないかも)の醍醐味です。
何が分かったのか。
先日Zoomトークでも触れたのですが、これを描いたゲルダ・ヴィーイナの夫は、世界初のM→Fの性転換手術を受けた人物「リリー・クールトー(男性の頃の名はアイナ・ヴィーイナ)」だったのです。
それなのにあまり知られていないように思いますけれど…。
しかも、アイナは性転換手術後「リリー」としてパスポートを取得、デンマーク国王による結婚無効宣言により男性との結婚も果たしています。日本で1930年代にそんなことは到底考えられませんね‥。
そして、そんなかつての夫リリーをゲルダは生涯支え続けたのです。
この二人の物語は映画『リリーのすべて(原題:」The Danish Girl)』にもなっています。ネットフリックスでも今配信中ですので是非。
公開された時に見たものの、まさかバレエ・スエドワとの縁があるとは考えもせず、今回改めて見ました。
残念ながら映画にはバレエは登場しませんが、当時の時代の雰囲気はたっぷりで楽しめるはず。舞踏会がしばしば出て来るのもあの時代ならでは。
個人的には、ゲルダが描いたデザイン画の脚は「リリー」のものだったというのはなるほど!でした。
ずっとジャン・ボルランの脚だと思っていましたが、違いました。
何ともフェティッシュで独特の魅力を放つ脚が実は後に女性になった夫の脚をモデルとしていたと聞いて、何だか納得してしまったのです。
そんな脚の魅力を感じるのは私だけではない証拠(?)に、昨年、プログラム表紙をお見せしてお任せで書いていただいたネイルがこちらです。
(昨年はバレエ・スエドワ100周年を全力でお祝いしたくて、祇園祭の時期以外ネイルはバレエ・スエドワを何かしらテーマにしたものがほとんどでした)
左端がゲルダの描いた『愚かな乙女たち』の脚。
ここだけを抜き出すセンスがさすがです!
(ちなみにそれ以外のデザインもどこから取ったか分かったかたがいらっしゃったらかなりスゴイ!! すべてバレエ・スエドワ作品です。)
話を戻して…そんなゲアダとリリーの経緯を読んだのはこちらの本です。
荒俣宏著『女流画家ゲアダ・ヴィィーイナと「謎のモデル」』
出版は『ダンス・マガジン』でバレエファンにはおなじみの新書館!
2016年に発行されていますが、私は今年まで気づきませんでした…反省。
本の中には『愚かな乙女たち』のデザイン画も(バレエとは残念ながら、紹介されぬままではありますが)掲載されています。お手に取って探してみて下さい。
それだけではなく、1920年代のイラスト、デザインは今見ても素敵なものが沢山。
荒俣コレクションが惜しみなく披露されていて、全点カラーで見たい!という気持になります。
まとまりませんが、そんなバレエ・スエドワと「リリー」の意外な接点のご紹介まで。