海辺のバレエ『青列車』
友人からバレエ・リュスが取り上げられる!と教えていただいて知ったEテレの番組、見てみました。
こうした番組でバレエ・リュスが取り上げられることは本当に素敵。まずそれは素直に喜びたいと思います。
(ちなみに私は今回は画像も内容も一切関知しておりません。放映を友人から聞いて知ったのですから…)
ですが、「NHKが言っていたから」と今でも信じる人がとても多いのですから、正確に伝えて欲しいものです。
日本語の書籍もありますし、ネット検索で分かるような間違いでとても残念に思いました。現場は時間がないことも良く分かります。
これまでのNHKさんのお問合せでも時間がないケースもありましたし・・。それでもできる手段を使って正確に伝える責任はあるのになぁ、とかなしい気持ちになりました。
バレエ・リュスへのレスペクトがないからあのような短い番組の中に間違いが多数あるというのが何よりかなしい。
Twitterについ一番気になった「スポーツとバレエ」の件だけ書きましたが、それ以外にも間違いが多かったのが気になりました。
見る方は少ないかもしれませんが、ここで数回(分もあるのがツライ)本当のところやあの作品を紹介するならば、ここも知ってほしいなと思う事をお伝えします。
まず『青列車』から。
1924年にバレエ・リュスによって初演された海辺を舞台としたバレエです。タイトルの「列車」は登場せず、その列車が連れて行ってくれるビーチが舞台となっています。
ココ・シャネルはバレエ・リュスへの出資によって社交界で認められ、さらにバレエ・リュスの主宰者ディアギレフの依頼で『青列車』の衣裳を手掛けたのです。美術はアンリ・ローランス(1885-1954)という、今ではほとんど忘れられてしまっていますが、当時は大変人気のあった彫刻家。ピカソ、ブラック、レジェらとも近しい存在でした。
台本は映画『美女と野獣』『オルフェ』などでも知られるマルチ・タレントとしかいいようのない才能を持ったジャン・コクトー、音楽はダリウス・ミヨー、振付はニジンスキーの妹ブロニスラワ・ニジンスカが手掛けています。
1920年代のお洒落なビーチシーンをぎゅっと圧縮したような作品です。
実はこの映像、今週大学の講義でお見せしたばかりなのですが、当時水着(シャネルデザイン)も大変ファッショナブルなものでしたし、大きな人口パールの一粒イヤリングも大変おしゃれな最先端のものでした。
ダンサー達は衣装合わせでカンボン通りのシャネルの本店ででのフィッティングに心躍らせ楽しんだことも伝わっています。
振付には泳ぐ姿をそのまま取り入れた場面や、スポーツではゴルフ、テニス、海水浴が登場、それぞれに実はモデルも存在します。
また、サンオイルを肌に塗るあたらしい流行りや、ヘリコプターで頭上から広告を撒く新しい広告方法、そしてコンパクトカメラでの撮影シーンに動画撮影シーンなど「モダン」な要素が沢山。
そんな1920年代のお洒落パッケージのような作品が『青列車』なのです。
パリ・オペラ座ではもう長らく上演されていませんが、是非にと祈らずにいられません。
2024年は100周年、上演したらいいなぁ、と思っています。