ドーラがいた[2024/10/16(水)〜10/22(火)]
2024/10/16(水) ドーラがいた
娘と一緒に、月に一度のぬらし絵に行く。
適当に描いていたら、真ん中の赤が鳥のように見えてきて、鳥にした。空を飛ぶ火の鳥だ。
ぬらし絵を終えて、自転車で帰る。本屋さんに立ち寄って、雑誌を一冊買い、ついでに「母の友」の定期購読を申し込んだ。3月に休刊するまでの間、短い応援とありがとうの気持ち。
自転車を走らせていると、あちこちで金木犀の香りがした。
14時に娘のお迎え。山の中腹でのお迎えで、ゼーゼーと荒い息をしながら解散場所にたどり着く。柵の外で遊んでいる娘が「戻れなくなっちゃった」と言うから「じゃあひとりで帰ろうかな」と応えると、慌ててこちらへやってきた。
駅前の小さな食料品店で、今季初という原木椎茸やなす、どら焼きなどを買って帰る。コンビニでアイスを買う。娘の希望でソフトクリーム型のアイスにした。
帰宅して、私は仕事。先週に引き続き、もりもりにやることがある。動画が見たいという娘にスマホを貸す。ついつい長くなっちゃうから時間を決めて。ちょうど決めた時間になったとき、私のスマホの電池も切れた。
娘は「エルサになる」と言うと、おばあちゃんに作ってもらったエルサの衣装をクローゼットから取り出して着る。そして自分で髪を一つ結びにして三つ編みを編み、ティアラをかぶって、メイクやネイルをしていた。
ブロードウェイ版の「Let it go」を歌う。歌詞はほとんど適当だけれど、手袋を取ったり、魔法をかけるような素振りをしたり、ティアラを投げたりしなたら、一曲歌いきっていった。「お母さん見てて」と言われるからパソコンの手を止め、歌い終わったら「おぉー!」と拍手をした。
いつの間にか私の後ろに来て、私の髪の毛を二つ結びにして編み始める。不用意に引っ張るものだから痛くて「やめてー」となる。それでもめげずに、娘は私の髪の毛を三つ編みにした。
夕飯は鮭を焼いたり、かぼちゃを煮たり、椎茸にチーズを乗せて焼いたりしたのと、味噌汁と余っていたポテトサラダなど。
お風呂に入る前に鏡が目に入る。太い三つ編みを顔の横にぶら下げたそれは、ラピュタではない。ドーラがいた。
2024/10/17(木) 布団はみだし選手権優勝
4時の目覚ましを止めてしまって、6時前に起きる。すぐに原稿に取り掛かったものの、娘が起きてくる7時半までに終わらなかった。
着替えて、朝ドラを見て、ご飯を食べる。ようちえんのお当番の日。昨日の夕飯の残りの鮭の切り身を半分にしてそれぞれのお弁当に入れようと思っていたのに、娘は「チーズ焼きおにぎりにして」と言う。仕方なく娘のためにチーズ入りの焼きおにぎりを握り、私の弁当は豪華鮭弁となった。
10年前ぐらいのこの時期は、もう少し秋らしい格好をしていたのではないだろうか。そんなことを思いながら、今日も半袖のTシャツを着てようちえんに行く。
どんぐりに穴を開けて、コマや人形をつくったり、年少の子たちとお弁当を食べたり、手をつないで丸くなってはしゃいだりした。たまにちびっこギャングが小さな子にタックルしにきて平和が乱されるけれど、それ以外はとても穏やかな一日だった。
放課後も子どもたちを預かる当番で、はらっぱへ移動する。子どもたちは「キャンプする」というと、みんなでリュックを背負ってはらっぱの坂になっている方のエリアへと移動していった。「どうしているだろう?」と様子を覗くと、並んで座って柿をかじっていた。
あっという間に16時半になって子どもたちのお迎えが来た。1日外で過ごしていると、10時から12時になるまでは時間が長く感じるのに、その後はぐんぐん時間が進むのが速くなる。
夕飯は満月バーで食べようと思っていた。満月の夜にカフェの庭で開催される満月バー。今月はずっと楽しみにしていたお肉屋さんのとんかつが食べられる。私以上に楽しみにしていた夫は、残念ながら出張でいない。
夕方まで一緒に遊んでいた友達二組と合流。揚げたてのとんかつをおいしいおいしいと頬張る。娘が「お父さんにも食べさせてあげたいね」と言う。食べさせてあげたいお父さんの分まで、二人でおいしくいただいた。
子どもたちは夜の庭で走り回る。「こっち来て!」と娘に引っ張られて立ち上がると、雲から満月が顔を出したところだった。
帰宅してシャワーを浴びて、娘と床に就く。
22時半にむくりと起き上がる。やらなければならない原稿を書く。
書き終えて、2時前に真っ暗の寝室に戻る。自分の枕を手探りすると、やわらかいものが手に触れた。娘の顔だった。体は布団の上の方にはみ出している。自分の枕で寝かせてやろうと娘の体の下に手を入れると、「なぁにぃ なぁにぃ」と言いながら足元に転がっていった。今度は下の方に体をはみ出して寝ている。布団はみ出し選手権があったら優勝だなあなどとぼんやり思いながら寝た。
2024/10/18(金) カエルのつくりかた
6時前に起きた。昨日寝るのが遅かったものだから眠たい。
今日も「焼きチーズおにぎりがいい」というリクエストでチーズ入りの焼きおにぎりを作る。海岸まで自転車で送っていく。海岸までの下り坂をぴゅーっと下るのが心地よくて、雨さえ降ってなければ、海岸集合のときは自転車で行くようにしている。
娘を送って帰宅すると、ワンピースの裾に大量の緑のとげとげが着いていた。くっつき虫だ。
仕事する。気がついたら13時になっていて、慌ててご飯を食べる。外に出ると、庭の草が濡れていた。雨が降ったらしい。
海岸をぴゅーっと下ってお迎え。リュックの上に腰掛けていた娘は、手に大きな貝殻を持っていた。「これケータイ」カーブがほどよく顔に沿うようになっている。「拾ったの?」「買った」。貝殻屋さんをしていた友達から、石のお金で購入したらしい。
ニューケータイを携えて、下って来た道を今度は登って帰る。
帰宅して、夫の出張土産をおやつにする。「眠たい」という娘は昼寝することにしたようだ。リビングにごろんと寝転んだのを見届けて、私は自室へ行く。戻ったときには、娘はすっかり脱力していた。
20分ほど寝たところで起こし、まだトロトロと眠たそうな子を乗せて、車を発進させる。友達を拾ってバレエへ。雨はあがり、光が差して、いつもの道は金色に染まった。
今日もハロウィンのイベントに向けて母たちは作業があり、ひらすら新聞をちぎっては新聞に貼る。めずらしい「農業新聞」があって、梨が旬だとかシャインマスカットが上出来だとかのニュースで埋められた紙面を興味深く見た。短歌や俳句の投稿コーナーの名前が「あぜみち文芸」でなんだかいいなと思う。
いつの間にか娘のレッスンが終わる時間になっていた。1時間必死で新聞をちぎっていた私の手は、薄黒くなっていた。
ふと昔勤めていた会社で、「新聞は読まないの、手が汚れるから」と言っていた美しい先輩がいたのを思い出す。「新聞を読まない」と言うのは恥ずかしいことだと思っていた私は、自分の美意識を優先して堂々としていていいのだ、と軽くショックを受けた。たしかに新聞て手が汚れる。でもやっぱり私は、洗えばいいじゃない、と思う程度の美意識のままだ。
買い物をして、友達をおうちまで送って、帰宅。娘とお風呂に入る。湯船の中で「Kちゃんは手でカエルがつくれるんだよ」と娘が言う。こうでしょ、と指を組むと「なんでできるの!?」と娘が驚く。やってみたいと言うから、私の手を見せてやったり、娘の指を動かしたりしてカエルをつくった。2回ぐらい繰り返すと、自分でできるようになった。「できたー!めっちゃうれしい」なかなか習得するのが速い。
夕飯はナスとベーコンで、ちゃちゃっとパスタにした。
睡眠不足で眠たい。布団に横になると、あつあつのトーストにバターが溶けるかのごとく眠れた。
2024/10/19(土) うつわよりチャイ
睡眠不足は2日引きずる。7時になって娘も夫も布団の上で起きた様子。でも私は起きれない。
「カエルできるんだよ」娘が夫にやって見せている。「えーなにそれ知らない」と夫。「え、知らないの?」思わず布団の中で身を捩る。全小学生が通る道ではないのか。
指でカエルを作ってみせる。これがカエル、ブタ、ウサギ、と、指をしまったり出したりしながら展開して見せる。「どこがブタなの?」真剣にツッコまないでほしい、と思いながら、手をほどいて布団にくるまる。
私の足の指を娘がひとつひとつ揉んでくれる。「ママ頑張ってる」。そう、私の体は頑張っている。
えいっと起きた。朝ご飯は卵かけごはんに、しその実の醤油漬けをかける。「プチプチがおいしい」と娘が喜ぶ。夫にも薦めると、夫も「おいしい」と食べる。しそはクセがあるから二人とも食べないかと思ったら思いの外好評だ。
10時頃に母がやってきた。娘のために作ってくれたエルサの衣装のマントの糸がほつれてしまったから、直してもらう。11時頃に家を出発して電車で隣町へ。
町のいろんなお店で器の展示販売をしている「うつわの日」をたずねた。夏のような暑い日。ウォーキングのイベントに参加していた人と、途中同じ道を歩く。この人たちも、本当は涼しくて良い季節だと思って参加を決めただろうに、ご苦労なことだなあとゼッケンの背中を眺めながら思う。
お目当ての作家さんの器を私も母も最初に買う。もう目的は半分以上果たした。あとはごはんを食べる。それからお散歩しながら、パウンドケーキのお店で休憩。
そこかしこに出店しているお店があるので、色々と立ち寄りながら見る。初めてみる作家さんのお茶碗がかわいくて、ほしい...!となったけれど、すでにたくさんのお買い物をしてしまったからぐぐっとこらえた。次に立ち寄ったお店の、小さなお花が描かれたお皿にもキュンキュンしたけれど、これもぐぐっとこらえた。
次はチャイのお店で休憩しよう、と言っていたら娘がちょっと歩くたびに「チャイはまだ?」、お店で立ち止まるたびに「チャイはまだ?」と言う。ようやく到着したチャイ屋さんではアイスチャイを注文。サービスで並々ついでもらったチャイをごくごく飲んだ。
母と別れて、家に帰る。帰宅すると娘はカフェごっこを始めた。「ちょっと待っててね、ごめんねー」と見えない行列に優しい声で話しかけている。私が顔をあげると「子どもが並んでて」「おやつにいいんだなーと思って」と大人びた顔でこちらを見て微笑んでいる。
夜のイベントに出かけようかと思っていたが、娘はやっぱりカフェに夢中で、そしてたぶん歩き疲れていて、出かけることはできなかった。あきらめて夕飯を作る。娘のリクエストで、今日はタコス。タコライスではない。
随分前に買ったタコスシェルを取り出してみたらシケっていた。ひとり4枚ずつ食べられる想定だったけれど、3枚でやめにした。「お母さんの残り食べる!」と張り切っていた娘も3枚食べると「もういいや...」と口の周りと手を真っ赤にしながら、トロンとした目で言った。そういうわけで、私と娘の残したタコスシェルは、事務所の引っ越しを終えて帰宅した夫がバリバリと口へ放り込んだ。
娘は自作の「プリンセスカード」をつくっている。最近ようちえんの友達の間で「ポケモンカード」が流行っているのを受けて娘もつくってみようと思ったらしい。ディズニープリンセスが描かれた折り紙を折ったものを、白いカードに貼り付けている。
自作のプリンセスカードで、夫と娘は神経衰弱をしたり、ジジ抜きをしたり。「もう1回ずつ!」と言うのを繰り返して、なかなか寝ようとしなかった。
夜中トイレに行きたくて起きる。4時前だった。娘は今日も、布団の下の方にはみ出して寝ていた。トイレを終えて寝室に戻ろうとしたら、ドアが開かない。娘の足が当たっているようだ。眠りに戻るのはあきらめて、そのまま起きることにした。
2024/10/20(日) サラダのつまみ食いばかりしていた
4時前に起きたものだから、朝からいろんなことができる。見ようと思っていた動画を見たり、ラジオを聞いたり、原稿を書いたりしていた。
夫と娘が起きてきたのは10時過ぎだった。朝ご飯ならぬ、ブランチにする。
冷蔵庫にある野菜としその実でチャーハンをつくった。
娘と夫は今日は段ボール工作をする約束をしていた。二人がトレーシングペーパーに型を写したり、カッターを使って段ボールを切ったり、ボンドで貼ったりしている間、私は書きかけていた原稿を完成させようと取り組む。
16時過ぎ、工作が落ち着いた二人と、図書館に本を返しに行こうと外へ出かける。昨日とは打って変わって空気が冷たい。
図書館の駐車場に着こうというとき、駐車場の中を、元団地仲間の友達とその子が歩いているのが見えた。車に乗り込んで発車しようとしたのを見て、隣に車をつけり。すれ違いになりそうだったところ、間に合った。
友達が後ろの座席にある段ボールの中に手を伸ばすと、そこから柿を2つ取り出して渡してくれた。「あんまり甘くないからサラダにするといいかも!」。手を振って二人と別れる。
本を返して、買い物をする。1/4で190円の白菜と、丸ごと大きなサラダ白菜220円があって、迷わず大きなサラダ白菜を選んだ。
帰宅するとすぐにお風呂を沸かして、夫と娘が入る。その間に、豚バラと白菜のミルフィーユ鍋をつくり、さっきいただいた柿と残りの白菜でサラダをつくる。白菜パーティーだ。
お風呂からあがった二人は、図書館で新しく借りてきた「アルプスの少女ハイジ」を見始めた。私は暇で、サラダのつまみ食いばかりしていた。
食事を食べ終え、片付けをながら、ビールを飲もうと思ったのに忘れていた、と思う。なにかお酒が飲みたい、と思ったら冷蔵庫の中に、芋焼酎を見つけた。随分前に開けて、しばらく飲まないでいたものだ。芋焼酎をコップに注ぎ、飲む。体がぽかぽかしてきた。
お風呂に入り、芋焼酎が良い感じに効いてトロンとしてくる頃、布団に入る。今夜は肌寒い。まだ夏掛けな毛布をしっかり体に巻き付けて寝た。
2024/10/21(月) 電池が切れる瞬間を見た
今日も娘は「朝ドラ始まるよー」の呼びかけで起きてくる。まだあたたかい娘を膝に乗せて暖をとりながら朝ドラを見る。私の手に触れると「つめたっ」と言った。
朝ご飯を食べて、着替えに行く。「お布団の中で着替える」と言うから、娘が選んだブラウスや茶色のジャンパースカートをクローゼットから取って、布団の近くに置いてやった。
お弁当をつくって娘を集合場所の海岸まで送る。海岸までの下り坂をピューッと下りるときに感じる風が、随分冷たくなった。
帰宅して、あちこちへ連絡を済ませ、再び自転車に乗り、アフリカンダンスへ向かう。今日新しく教えてもらったダンスは、跳ねるところがたくさんあってウキウキした。汗をかいてすっきり。
夫と待ち合わせていたから、急いでレッスンの部屋を出る。夫が新しく借りたオフィスの隣にある飲食店で、挨拶がてら食事をした。
オフィスで仕事する夫と別れて帰宅。仕事。内容や媒体が違っても、とにかく一日ずっと文章を書いている。
はじめてChat GPTというものを使ってみたら、あまりにも速くきれいな文章が返ってくるからびっくりした。そのスピードと正確さに嫉妬しつつ、「でもキミこのままじゃ使える文章じゃないわね」と、新人をいびるお局のごとく眺める。驚異の新人。ますます私にしか書けない文章を書いていくしか、生き残る道はない。
夕方、ダンスの疲れがじんわり体に沈んできた頃お迎え。娘は海岸に土俵を描き、ピンク色の空を背景に、年中のYくんと相撲をとっていた。
帰り道、娘と、夫の新オフィスに立ち寄る。すぐに夫はオンラインミーティングを始めた。娘と部屋のソファに座ってこの部屋でどんなことをしたいか、妄想会議をする。どんな棚を置こうかとか、ラグを敷いてみるのはどうか、とか。
ミーティングが始まって40分。スマホの電池も切れてしまったし、そろそろ帰ろうと声をかけるが、娘は「まだ帰らない」と言う。夫に目配せして、私はひとりで帰ることにした。自転車にまたがると、ガラス窓越しに見えた娘はニコニコと手を振っていた。
お風呂を沸かして夕飯をつくる。今日は冬瓜を使って豚汁、それからナスの煮浸し。
帰宅した夫と娘はすぐお風呂に入った。あがってくると娘が裸にタオルを巻いたまま、泣きべそかいてこちらへやってきて「〇〇ちゃん足が痛くてイスに座りたくて、パパのTシャツがあったからその上に座ったら、パパがダメって強く言った〜」と言う。夫が「『パパのTシャツでふきふき〜』ってお尻拭いてたでしょ!」と追いかける。
プリントアウトした原稿を眺めながらそのやり取りを聞いていたら「ママ抱っこして!〇〇ちゃんのパジャマとってきて」と膝の上にやってきた。原稿は机の上に置いて、一緒に洗面所に戻り、着替えを手伝った。
夕飯を食べ終えると、娘が私の膝の上に自分の足を置く。「よしよしして」。足をさすってやる。しばらくすると「痛くなくなった!ママは足を痛くなくする魔法があるね」と足を下ろした。魔法を持っていてよかった。
私が洗い物をしている間、寝支度を済ませた娘と夫は寝室にあがっていく。私はお風呂に入る。
お風呂からあがると、娘はまだ起きているようだ。私が自室で靴下を履いている間「ママーきーてー10秒でー」と言って「いーち、にー」と数え始めた。「ちょっと待ってて」と言い、靴下を履き、ついでに雑誌を読んでいると、いつの間にか数字を数える声がしなくなった。
寝室に行って布団に寝そべる。私の方に横になった娘が私の首に腕を巻き付ける。「げんかい...きれたー」と言うとすぐに寝息を立て始めた。電池が切れる瞬間を見た。
2024/10/22(火) 私は、お弁当になりたい
ここのところ毎日5時に目が覚める。まだ外は真っ暗だ。
娘も夫も、空が明るくなっても布団にくるまってぐっすり眠っている。寒くなって、眠るのが気持ち良い季節だ。
8時になっても娘は夢を見ている。それでも声を掛けると、朝ドラが始まって2分と経たないうちに膝の上にやってきた。
今日のようちえんは月に一度の「給食」。野外炊事の日だ。空のお弁当箱やお椀を弁当袋に入れる。朝のお弁当づくりから解放されると心が軽い。
集合場所まで送る。友達に預かってもらえる日だったけれど、娘は預かりはなしで迎えにきてほしいと言う。「わかった、じゃあ2時にね」と言うと私の手にチュッとした。
産直で野菜を買って帰宅。どんな言葉を置くか、うんうんと頭を悩ませていたら昼になった。
リビングの床に、木の葉があるな、と思って拾おうとしたら、木の葉がもぞもぞ動きだし、羽ばたいた。蛾だった。「ひぃっ」となりながらティシュを手に持ち、追いかける。捕まえようとしたら、お風呂場の中に逃げ込んでしまった。あちこち物を動かしてみるが、見当たらない。あきらめた。また夜お風呂を使うときに見つかるだろう。
車に乗って、出かける。今日は予約していたお弁当を受け取る日。小さな小屋の入口でお弁当を受け取って、うきうきと公園へ。お天気が良いから外で食べることにした。
お惣菜を口に運ぶたびに「わぁこれおいしい!」「はぁーこれはこんな味ですか!」「ほぉこんな組み合わせが!」と驚きと喜びがある。そして全体は美しく、調和している。私もこんな文章が書きたい。いや、こんな人になりたい。つまり私は、お弁当になりたい...!小さな子どもたちとお母さんが砂場などで遊んでいる静かな公園の片隅で、ひとり身悶えしながら食べ終えた。
そのまま娘のお迎えへ。解散場所の公園に着くと、向こうから娘がかけてきた。私を見つけて走ってきてくれたのかと思いきや、近くのベンチにリュックを置くと、後からやってきた友達とまた走って向こうに行ってしまった。私のところに一目散にかけてくるより、楽しくて友達と走り去っていっちゃうぐらいがいいなと思う。
解散すると、今日の給食でつくった栗ご飯のおにぎりを、当番だった友達が配ってくれた。私はおこげがいっぱいのところを選んだ。染み入るおいしさだった。
「おうちでやりたいことあるんだ!」という娘と帰宅。「ポテチ買って帰る?」と娘の耳にささやくと喜んだ。今度産直に来たら買う約束をしていたのだ。ポテチを買って帰宅。
おやつにした。同じく産直で買った、ちょっといいプリンも半額になっていたからおやつにする。おやつ豊作デーだ。
おやつを食べ終わった娘は、「プリンセスカード」を作り始めた。折り紙のプリンセスをハサミで切り取って、白いカードに貼っていく。「見て!かわいいでしょ!」と切り取るたびに、プリンセスを遠目に見せてくれるから、私はぼんやりしたそれを「かわいい」と言いながらいた。
夕方からオンラインで取材がある。その前に夕飯をつくっておこうと思ったのに、パソコンに向き合っていたら結局時間がなくなってしまった。かろうじて、玉ねぎをみじん切りして、ひき肉と混ぜて、味付けをしておく。
私が自室で取材をしている1時間、娘はリビングでひとり、プリンセスカードをつくり続けていた。予定の1時間を超えて終わろうというときになって、私の部屋にやってきた。取材を終えてイヤフォンを耳から外すと「カードできたから見に来てほしんだけど」とのこと。見てほしくてやってきたらしい。
娘のプリンセスカードを見て、味付けしておいたひき肉でしゅうまいをつくる。「お手伝いする!」と張り切る娘も、「これはハート」「ちいさいまんまる」などと包んでは、蒸し器の中に並べていた。
「かぼちゃのスープもつくってほしい」と言われたが、正直もうクタクタ。だけどバターナッツかぼちゃを切って、皮をむいて、鍋で煮る。夕飯にはたぶん間に合わない。
できあがったしゅうまいと、冷蔵庫にあった豆腐、それからごはんで夕飯にする。野菜が足りないなあと思う。でももう気力がない。バランスの良い食卓の妄想は手放すことにした。1食ぐらい、栄養が偏っていても大丈夫。
娘と夫は今日も何やらケンカしながらお風呂に入った。そういえば蛾がいたか聞いてみたが、いないらしい。どこに消えてしまったのだろう。
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