苺ジャムを作る休日
今日、スーパーで二百九十八円の苺が山積みされていた。親指程もない大きさで、そろそろ終わりを迎える苺だろう。
昔、団地に住んでいた頃、鉢植えの苺をベランダに置いたことがあった。まだ、若い葉だけで頼りなさげだったが、単純に水をやるだけで苺は実をつけてくれた。小粒だが日に日に赤く色づいくる苺の実。
しかし、それを食べることはなかった。ベランダを自由に行き来していた鳩の羽や糞が苺を直撃していたから。なすすべもなく(ネットを張れば良かったのだろうが)観賞用として一生を終えた苺。それ以来、苺を育てることはなかった。
(そうだ、ジャムにしよう!)
何度も考えて苺一パックを手に取った。そして、隅においてある安売りのバケットも買った。
物価高で何もかも高い。できるだけ嗜好品は抑えようと思うのだけど、味気ない食生活は人生そのものが味気なくなる、私はそういう質なのだ。六百円も七百円もする苺には手が出なかったけど、これくらいなら良しとしよう。
苺は洗ってヘタを取り、薄く切ってステンレスの鍋(ほんとはホーローの鍋がメジャーだかあいにくないので)に砂糖と一緒にいれ、蓋をし弱火でコトコト煮る。てんさい糖を使っているので、鮮やかな赤にはならないけれど、まあ、いいでしょう。時々蓋を開けて苺をヘラで潰し、お好みのかたさになったら火を止める。甘酸っぱい香りがたまらない。少し冷まして、煮沸消毒した小さな空き瓶にジャムを流し入れる。
明日の朝食は、珈琲と色鮮やかな苺ジャムをのせたバケットだと思うと、ちょっぴり嬉しくなった。
今日は仕事が休みだった。押入れや本棚の片付けをしようと思っていたが、ついダラダラと過ごしてしまった。明日も休みなので、今日出来なかったことは明日に持ち越そう。なんて甘い質なのだろう。
最近、仕事で連勤が続き疲れが溜まっていた。五連勤、といえば普通の職場なら当たり前だろう。しかし、三日勤務して一日休みのパターンに慣れた身体には少々きついのだ。最後の二日間は夜勤である。夜勤手当は欲しいけど、下りゆく体力との戦いにやられっぱなしだ。
それで、やたら甘いものを食べたくなる。たわわに揺れるお腹を嘆きながらも、ストレス解消をかねて食べる、食べる。
夕方に作った苺のジャムだけでは飽き足らず、夕食後、再び台所に立った。そんな元気はあるんだと、ひとりツッコミながら。
ガラス瓶に詰めていた小豆をざっと洗い、ステンレスの鍋に移す。ひと煮立ちしたら水を捨て、再び水をなみなみと注ぎコトコト火にかける。柔らかくなったら砂糖をたっぷり入れて、またまた煮る。団子の粉もあったから、明日は白玉ぜんざいにしていただこう。
そんな日がない一日をnoteに綴っていると、ピーッ、ピーッとガスコンロの火が消える音がして、厚手の鍋で小豆が苦しそうにへばりついてた。ヘラで混ぜるとするりと鍋肌を離れ、小豆の匂いが漂ってきた。
焦げなくてよかった!一つのことに熱中すると、他のことは忘れてしまいがちな質なのだ。
水を加えると生き返ったみたいに、小豆は鍋の中を泳ぎはじめた。
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