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本屋に行こう
また、本屋が閉まった。引っ越し前、よく行っていた本屋だった。去年は、近所の本屋が閉まった。閉まったのは支店だったので、市内にあと二店舗は残ってはいるが。
社会人なりたての頃はよく本屋に行っていた。一階から三階まですべて本のみで、一階は雑誌や小説、二階は参考書などの勉強関係、三階は思想や宗教の本が並べられていた。時々三階に行って、死後の世界とか霊の本をのぞき見るのも好きだった。
大型店だったその本屋は、いつしか地下一階のみの店舗になった。そして、コーヒーが飲めるコーナーができ、雑貨が売られ、個人で売る貸本棚ができた。
気軽に歩いて行ける本屋が少なくなったが、それでも20分ほど歩けば小さな本屋はある。ただ、品ぞろえが薄いので、欲しい本はほとんどない。頭にそれがあるので、つい、ネットで本を買ってしまう。でも、そろそろやめようと思う。本屋が閉店して嘆く気持ちがあるのなら、わずかでも本屋に貢献したいのだ。
「年収300万円で心の大富豪」サバンナ八木さんの本を注文したのが、歩いて行ける小さな本屋だ。入ってすぐ、右側にちょっとだけ雑貨が置いてある。傘、布のバック、靴下など。どれも「とりあえず置いてみましょう」という感じで、いつも同じラインナップだ。
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レジへ行って本の前金を払っていると、壁の上の方に色紙が貼ってある。老眼の目をしばたかせながら見つめてみると、『人間』と書いてある色紙の下には、ウェーブがかかった長い髪の男性の写真が飾ってある。又吉さんだ!レジの女性に聞いてみると、本店のイベントに又吉さんが来てくださり、支店にも寄ってサイン会をしてくれたと言う。「雰囲気があって素敵でした」と顔を上気させて話す女性を目の前にすると、こちらまで嬉しくなってきた。ネットで買ったら、そんな感情は湧かない。彼女とフワッとした関係ができた気がして、ここで買い物して良かったと心から思った。
帰りに、出番を待ちわびている、からし色の靴下を買って帰った。