【Opra】オペラ宅配便シリーズ17 ぎゅぎゅっとオペラDigitalyrica『こうもり』
横須賀芸術文化財団が主催・制作しているオペラ宅配便シリーズ。「ぎゅぎゅっとオペラDigitalyrica」は、名作オペラのハイライトをエレクトーンの伴奏で上演する、まさにオペラの美味しいところを「ぎゅぎゅっと」体験できる企画である。企画・演出はカウンターテナーの彌勒忠史。今回は初のオペレッタであるヨハン・シュトラウスの『こうもり』が上演された。
上演時間は20分の休憩を入れてトータルで1時間半ほど。歌詞とセリフはすべて日本語で、坂下忠弘演じるファルケ博士が進行を務めるという趣向。出演は他に、ロザリンデに小川里美(『ぶらあぼ』で本作についてインタビューを行った記事はこちら)、アイゼンシュタインに岩田健志、アデーレに栗林瑛利子、フランクに大川博、アルフレードに金山京介。オルロフスキー公爵は演出の彌勒が歌い、さらに3人のダンサーを加えた、総勢10名のキャスト。いずれ劣らぬ芸達者揃いで、実に軽やかに歌い、観客を時にクスリと笑わせたり、ワクワクさせたり。オペレッタを歌うことは、こちら側からみているよりもずっと大変なはずだ。
最初から最後まで舞台上で演奏するエレクトーンの清水のりこなくしては、この企画は成立しないと思うが、今回もヨハン・シュトラウスの華やかで品のあるオーケストラ・サウンドを見事に再現して、エレクトーンという楽器の表現力をみせつけた。オケがなくても十分に「オペラ」はできる。もちろん、エレクトーン奏者にはかなりの才能が求められるが。
アリーナ形式の舞台は、三方を一般から公募した100人あまりの合唱団が囲み、舞踏会の場面ではグラスを片手に歌う。「舞踏会のお客」という設定なので、合唱団の皆さんはロングドレスや着物、タキシードなどでドレスアップ。劇場全体が華やかで楽しい雰囲気に包まれた。この「合唱団公募形式」はこれからも続けていくそうなので、我こそはと思う人はぜひ応募してみてはいかが。
それにしても『こうもり』は名曲だ。ここのところ立て続けに頭を使わざるを得ない(!)舞台を観ていたので、ヨハン・シュトラウスのどこまでもエレガントで美しい音楽に浸れたのは本当によかった。音楽って、やっぱり「美」と「愛」だと思う。
2019年2月24日、ヨコスカ・ベイサイド・ポケット。