札幌千秋庵デザインの世界
札幌に、千秋庵(せんしゅうあん)という大正10年創業のお菓子屋さんがある。子供の頃から親しんだ銘菓の多い老舗。
道外の人にとって北海道のお菓子といえば六花亭。一目で「北海道に行ってきました!」とわかるあの紙袋は知名度不動の全国区。あのデザインを手に提げたさに六花亭を買う人も多そう。実はその六花亭は、もともとこの千秋庵から派生して出来たお菓子屋さん。本家の千秋庵はそもそもの昔からデザインにこだわりを持ち、六花亭とは違う方向性でかわいくあり続けてきた。ただ、知られていない。もったいない。札幌千秋庵デザインをスマホのアルバムに入っている限りで紹介して、次の帰省時に千秋庵のお菓子が指名されるの待ってみる。
まずはこれ。控えめに書かれた「千秋庵」の文字が無ければ本当にロシアのお菓子かと思うようなかわいい包装。
ロシアケーキ、細部まで芸が細かい。
と、北のマドンナ。
これらには「メルヘン系手芸愛好家派」と名付けました。正統にまじめにかわいい。
アスパラカントリークッキー
パッケージが実際のホワイトアスパラ缶を模してるのは道民暗黙の了解。そもそものアスパラ缶自体が道内で有名なのでパロディが成立してる。
そもそものアスパラ缶
いい感じの再現具合。
そしてとうきびサブレ―のジャケ。
写生したようなとうきび。アスパラ缶と並ぶリアル系。 これらは「明るい高橋由一派」で。
千秋庵の名前は知らなくてもこの缶を知っている人は多いかも。
東欧の絵本をイメージしてると踏んでいます。チェックのシャツに赤のズボン、缶を囲む薄ピンクを小熊の演奏するコントラバスの色に引っ張ってきていて、ブルーとコントラストを成しています。完璧にかわいいですね。 そのまま「東欧系絵本派」。
同じく熊モチーフでもまったく別テイストのこちら、銘菓山親爺(やまおやじ)。山水画のごとき渋さを愛する固定ファン多数。海苔缶ではありません。CMのテーマソングは道民みんなが歌えます。
「実力系雪舟派」。
そして、北海道を代表するデザイナー、栗谷川健一氏の手による菓子缶。タイトル画像の札幌市営地下鉄壁画(時計台や道庁が50年近く前にあんなにかわいくデザインされている)や、'72札幌冬季オリンピックのポスターデザインなど、札幌において重要なデザインを手がけた方。にも関わらず残るデータは少ない。手元の本「栗谷川健一~北海道をデザインした男~」にも未収録の作品が多いので、せめて市営交通のサイトではあのかわいい壁画とその作者について触れて欲しいな。
こんな缶でお菓子をもらったら捨てられるわけがない。 なに入れようか。
さて、その千秋庵、デザインへのこだわりはお菓子パッケージにとどまらない。
本店を訪問、まずは地下街からの入り口ドア。いきなりかわいい。
ステンドグラスのドア。ここからすでに千秋庵の世界。
店内天井にもステンドグラス。 ただものではない感がわかります。
そしてこの花、
英名Japanese Roseの通り、バラのようなその花の名は「はまなす」。道民には道の花(「みち」じゃなくて「どう」の花)として親しまれる、千秋庵のブランドモチーフ。
この花を
こんな風にかわいくデザイン化できるものか。 実物の写真を見るとこのデザインのすごさを改めて感じます。作者は調べても残念ながら出てこない。
カラーバージョンの色使い。どんだけセンスいいの。
本店には喫茶コーナーがあり、掛けようとした椅子の座面が
はまなす。萌えた。
店内に並ぶお菓子デザインを愛でつつ喫茶コーナーでアイスクリームを食べた。お菓子と同様の安価で素朴な味わいのもの。
かわいいものが好きな人は全員ここへ来てください、と言いたかったのに、実はこの本店ビルは取り壊されて今はもうない。老朽化によるものだそうで、新店舗の計画は明らかになっていない。千秋庵の世界がどんな風に残るのか気にかかる。ステンドグラスのドアや天井は保存されているだろうか。ハマナスの椅子は新しい店舗でも使われるだろうか。
スマホに残る本店の写真はこれだけだった。訪れた時にはまもなくそうなると知らず。
千秋庵のお菓子は、仮店舗にも空港にもあります。このデザインの世界が好きになった人はお店で愛でて、気に入ったものはぜひお土産にしてこのかわいさを周りに伝えてください。
千秋庵デザインの素晴らしさを伝えるためだけの投稿で言いたいのはそれだけです。
千秋庵公式サイト:パッケージのこだわり
このシャッターが上がった先にも売ってます。