出席簿#25「ひと夏の企画、ともにつくる」
【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」
突然ですが、お化け屋敷の作り方って知っていますか……?
9月9日、月曜日。先週はたまたま行き会った母校の学園祭のことを少し書きましたが、なんと、それから1週間も経たずして、またしても高校の学園祭に遭遇してしまいました!しかも今回は「勤務校」です。
と書くと、なんだか不思議な感じがしますが(え?勤務校の学園祭に?遭遇って……?)私は今、育休中でしばらく学校現場を離れているんです。
それが、ある日、子育て支援センターで午前中子どもと遊び倒して、ベビーカーで帰路についていたところ、通り道にある美術館・ホール併設の複合施設前によく見慣れた制服姿が……!最初は美術の授業で来てるのかな、と思っていたのですが、そういえば勤務校は文化祭を例年この施設で行っていました。これは、もしや……と入ってみると、やっぱり学園祭!
(私が担当した生徒たちは昨年度をもって卒業してしまっていたので、今年度は学園祭の日程チェックをしていませんでした)
勤務校では3年生が演劇をするんです。県立ホールでの本格お芝居。高校生ってやっぱりすごいエネルギーに満ちているんだな、あらためてそう思った一日となりました。
さて、前置きが長くなりましたが、そんなわけで、9月は学園祭シリーズをお送りしたいと思います。皆さんは「お化け屋敷」つくったことありますか?弓道部顧問をしていたある夏のこと、部員たちの強い希望でお化け屋敷をすることになって……?部員と顧問の奮闘記、お楽しみいただけると嬉しいです。
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「ひと夏の企画、ともにつくる」
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今回からBGMを全体に流してみました。ちょっと聞きやすくなってるといいな、と期待していますが、いかがでしょうか?
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はじまりは、主将のひとこと。「弓道部で学祭企画、立てちゃだめですか」。だめってこともないけど、これまでしたことないよ。それでもやるなら覚悟決めてやろう。なんて言っていたら、「お化け屋敷がしたいです」しまった、そうきたか。やったことも入ったこともない苦手分野。なにからどうすればいいんだろう。
たくさんの先生から声をかけられる。「大変ですよ、暑くって」「ダンボールで窓覆うものね」そうなんですか。知らない自分に不安が募る。「保護者さんにも相談してみたら」。
保護者の方はさらりと言った。「白い壁も覆う必要がありますね」「棒と机をこう組ませたら安全な壁ができますよ……」知らない世界が見えてくる。「なんとかなりそうですかね、頑張ってください」。力強く励まされた。
夏休み、お化け屋敷のチラシを見つけ部員と足を運んだ。目に焼き付けるはずが、無我夢中で駆け抜けてしまって、どうしよう、でも折角だし……「もう一回入っていいですか、実は……」。事情を話してみる。「だったら写真も撮って。学校で使えそうな小道具は、これに、これと……」。驚いていると、受付のおじさんはさらに続けた。「うちの娘、弓道部だったんだ」。
夏休み終盤、部員たちが走る。「大学ではビールケースで壁作ってたそうです」「母さんがこのござ使っていいって」「近所のお店からマネキン借りれました」だんだんとお化け屋敷が姿を現してきた。
なんとか迎えた学園祭。お化け屋敷には行列ができた。整理券での対応を提案すると、隙間時間にキャンセル待ちの生徒も入れたいと言う。結果、部員はフル回転。整理券だけにしちゃえば自分たちの時間が取れたはずなのに。それでも頑張ろうとしたのはきっと……。
全てが終わって片づけていたら女の子たちが口にした「友達が面白いって言ってくれました」それはそうでしょ、支えられてるもの、いろんな人たちに。「せっかく作ったんだから、たくさんの人に見てほしかったんです」。二日間だけのお化け屋敷。それは、部員たちと、学校を温かく見守る人たちとの、合作だった。
(2014/9/17 朝日新聞島根版掲載)
作品に寄せて
私は、この経験をするまでお化け屋敷とは無縁の生活を送っていました(怖い話を読むのは好きなのですが、それとこれとは別なのです)お化け屋敷がどんな風にできるのかなんて知るはずもなく……。そんな私が顧問だったにもかかわらず、生徒がどんどん行動を起こして、大人気ブースができあがっていました。
異様に上手な「傷メーク」をして見せに来た子、巧みに糸を操って得意そうに幽霊マネキンを操作する子……本当に生徒たちはたくましい!
もちろんネットでの情報収集もあったと思うのですが、学校の内外で子どもたちを取り巻く大人たちの姿が、そうした子どもたちを育んでいた、という一面も強く感じた、そんな夏の思い出でした。
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