浦島語り#05 別離なき浦島伝説の盛衰④
あけて悔しき わが涙かな浦島太郎と言えばやっぱり「開けて悔しき玉手箱」。これに似た言い回しは、平安時代、すでに数多く見られます。たとえば・・・・・・
これは、平安時代中期の女性歌人・中務(なかつかさ:九一二年ー九九一年)が詠んだもの。恋人と過ごす夜がはかなく明けてしまうもどかしさを、「夏の夜はまるで浦島が持ち帰った玉手箱のよう」と言うわけです。下の句は「開けて」と「明けて」が掛詞になっていて、「玉手箱をあっけなく開けて悔しい思いをしたように、恋人と過ごす夜もすぐ夜明けが迫