「認知症とは何か」 -認知症とともによりよく生きる -

 認知症の人と家族の会福岡県支部の月刊広報誌「たんぽぽ」に「認知症とともによりよく生きる」という連載を行っています。今回、許可をいただいてnoteにも転載することとしました。 
 こちらの記事は、2020年3月号に掲載されたものです。

 今回のテーマは、「認知症とは何か」です。とっても基本的なことのようですが、「認知症って何か説明してください」とあらためて問われると答えるのに困る方がいらっしゃるかもしれません。専門職向けの講演会で同様の質問を何度か行いましたが正答率は5%程度で、きちんと答えることが意外に難しい質問のようです。

 認知症とは「後天的になんらかの原因で脳の機能が低下して様々な認知機能障害が生じ、これによって生活に支障をきたしている状態」のことです。このように、「認知症」とは状態であり病名ではありません。「後天的に脳の機能を低下させる原因」が病気であり、病名です。この認知症の原因となる病気は70以上あると言われていますが、一番多く約50-60%を占めるのがアルツハイマー型認知症です。認知症といえばアルツハイマー型認知症と同じもののように語られることもありますが、原因となる病気の一つに過ぎません。また、認知症といえば「もの忘れ」と言うイメージが一般にあると思いますが、もの忘れが目立たない認知症もあります。アルツハイマー型認知症の代表的な認知機能障害が「もの忘れ」なので、認知症といえば「もの忘れ」と言うイメージが定着しているようです(もの忘れについては第二回で取り上げました)。

 この認知症の定義でもう一つ注目して欲しいのが「生活に支障をきたしている」という部分です。認知症の重症度を評価する検査として改訂長谷川式簡易知能評価スケールが有名ですが、これは認知機能障害を評価するものであり、医療現場では認知機能障害にばかり注目がされがちです。しかし、認知症の本人やご家族が生活上でどういうことに困っているのかという生活障害も重要であり、対応すべき部分であると考えます。生活障害については、またあらためて取り上げたいと思います。


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