プログラミング未経験の医師が4ヶ月でWebアプリをつくるまでの話。 -スマレポ作成6-
私は福岡で在宅医療にたずさわる医師です。
ここのところ新型コロナウイルスの感染拡大に振り回されている日々ですが、臨床のかたわら昨年10月からプログラミングを学びはじめて4ヶ月でスマレポというWebアプリを実装しました。
医療介護現場に笑顔を増やす -スマレポ-
スマレポは、医療介護現場で紙ベースで行われているヒヤリハットレポートをデジタル化したものです。
さらに、ヒヤリハットに加えて、職員間の感謝を共有するサンクスレポートという仕組みも実装しています。
実際に動いている様子は、こちらの動画をご覧ください。
はじめに、パソコン上でみた画面、次にスマホ上でみた画面が表示されています。
紙ベースのレポートをデジタル化しただけではレポートは増えないと考え、レポートを報告したり閲覧したりすると点数が加算されていく仕組みを実装しました。
機能の一部は法人ですでに使用を開始しており、特にサンクスレポートは好評で多くのレポートがあがっています。(デモ画面に表示されているレポートは実際に報告されたものです)
プログラミン未経験だったにも関わらず、本業のかたわらどのようにしてWebアプリ開発にいたったのか。
それは、プロトアウトスタジオへの入学がきっかけで、Webアプリは卒業制作としてつくったという経緯でした。
プロトアウトスタジオとは何か
プロトアウトとは、
プロトタイプを制作し(アイデアを具現化し)
アウトプットする(世の中に出す)
の造語です。
このように、企画して、作って、発信することを学ぶスクールであり、学びはじめて10週がたった時点で、このような振り返り記事を書きました。
この記事でも書いているように、スクールの前半は毎週様々な技術を学びながら、そのテーマの宿題にそって企画を立て、実装をし、記事を書いて情報発信をすることが求められ、そのサイクルを回し続けます。
一般にプログラミングスクールというとプログラミングの技術の学習を行うことにほとんどの時間を費やすと思いますが、このスクールに特徴的だと思うのが、技術の学習ばかりに時間を割くわけでは無いということです。
なぜかというと、エンジニアの世界ではOSS(オープンソースソフトウェア)として様々な情報が公開されており、自分で何か作ろうとした物はすでに作っている人がいて情報が公開されていることがほとんどだからです。
このため、検索してその情報にいきつき、必要な情報を参照する能力が重要になります。
このため、授業において必要な情報の検索の仕方や、QAサイトへの質問を行う際に回答をされやすい質問の仕方などもテーマとしてありました。
また、エンジニアの世界においては、新しい技術が日々生み出されており、学んだことがすぐに古くなってしまう可能性があることや、多くの便利な技術が公開されており一から自分でつくるよりも使える技術を活用する方が有用であることも、技術習得にばかり時間を割かない理由としてあるようです。
講義の内容も日々更新されており、2021年11月にMicrosoftが公開した動画編集ツールが11月末の授業で紹介され、課題として動画を作成することが求められるということもありました。
このように、学習の仕方、検索の仕方、質問の仕方など、自走する技術を教わりながら、企画や情報発信に関しても毎週の宿題とそのレビューで徹底的に鍛えられました。
卒業制作とクラウドファンディング
そして、スクールの後半では卒業制作に取りかかり、さらには卒業制作でつくるものに関してクラウドファンディングを行います。
クラウドファンディングを行うには、一つのプロジェクトに関して企画、実装、発信のそれぞれを高い精度で行う必要があります。
まさに、プロトアウトスタジオで学んだことの集大成です。
スマレポの企画に関して、当初はヒヤリハットレポートをデジタル化すれば報告と共有が行われやすくなるのではないかということがスタートでした。
しかし、デジタル化しただけでヒヤリハットレポートが増えるのか考えた時に、難しそうだという結論に至りました。
その理由として、デジタルとはいえレポートを書く負担があること、レポートを書いたからといって個人には目にみえたメリットがないことと、ヒヤリハットレポートはミスの共有でありネガティブな情報を報告することにモチベーションがあがりにくいこと、を考えました。
このため、レポートを書く負担を減らすために簡易報告と詳細報告をわけ、レポートの報告や閲覧でポイントが加算される仕組みを作り、さらにポジティブな情報のレポートとして職場内の感謝を共有するサンクスレポートという仕組みを考えました。
これらをまとめて、作成日記の1としてこちらの記事にしました。
ここから実装に取り掛かろうとしたのですが、宿題のレビューを受けるなかで、ただ報告をするだけであればGoogleフォームを活用するだけで十分だとわかりました。
一方で、報告されたレポートを閲覧する際に、現場ではスマホを使うことが多いなかでGoogleスプレッドシートはスマホで閲覧しにくいことを課題として考え、Webアプリ上でレポートを閲覧しやすくすることを考えました。
さらに、レポートの報告や閲覧でポイントが蓄積する仕組みについてはJavaScriptを学んでコードを書き、Webアプリの見た目を整えるためにはHTMLとCSSを学んでコードを書きました。
また、実装で詰まった際には、スクールの講師の方に便利な仕組み(この時はBootstrapについて)を教えてもらったり、質問サイトで教えてもらったりしました。
この結果、当初パワーポイントのスライドを元にこういったイメージだったトップ画面は、
実際にスマホを利用することが多いことなどを考え、こう変わりました。
メンターさんの存在
スクールの内容が卒業制作に移る段階でそれぞれの生徒にメンターがつくことになり、プロトアウトスタジオの卒業生で耳鼻科医の土井さんが私を担当してくださることになりました。
土井さんは、卒業制作で花粉症の重症度や最適な市販薬がLINEで相談できるアレルナビというサービスでクラウドファンディングを行い、さらに卒業後にはLINEを使って自院の予約システムを実装されています。
まさに、私の目指すところを地で行く方ですが、土井さんとの毎週のメンタリングを通して企画や情報発信の部分を突き詰めていくことができクラウドファンディングページの作成をすすめました。
クラウドファンディングページの作成
クラウドファンディングのページを作成することも、情報発信の重要な一部でした。
このページを作成する過程で、Canvaで画像を編集する技術を学び、複数の医療介護現場の方にインタビューも行いました。
また、スマレポ作成日記として日々の作成過程についての情報発信も続けました。
さらに、多くの方にクラウドファンディングを知ってもらおうと思っていたなかで、Med IT Tech上で在宅医療とプログラミングをテーマにしたWebコラムを書く場もいただきました。
クラウドファンディングの第一の目的はユーザーをえること
クラウドファンディングを行う際の目的として、スマレポを医療介護現場で使ってくださるユーザーをえて、このユーザーからのフォードバックに応えながらエンジニアとしての技術を学び続けるということを考えました。
このため、1万円のリターンとして、クラウドファンディング後に各現場にスマレポを実装し、その後フィードバックを受けて半年後に改良版を実装するというものを用意しました。
クラウドファンディング第二の目的はメンターをえること
おかげさまで初日に目標金額を達成し、1万円のリターンも多くの方にご支援いただいたなかで、第二の目的としてメンターをえることを考えました。
これは、卒業発表としてクラウドファンディング最終日の前日にデモデイが設定され、そこで多くのエンジニアの方にプレゼンテーションを行う機会をえたことがきっかけでした。
今後、プロトアウトスタジオを卒業して自走していくなかで、まだまだ未熟な身としてメンターを引き受けてくださるエンジニアさんがいらっしゃればありがたいと考え、直前に500円のリターンを追加しました。
正直、500円払ってまでメンターに名乗りを上げてくださる方がいらっしゃるのか全く自信がなかったのですが、クラウドファンディング最終日に支援くださった方がいらっしゃいました。
この方とメールでやりとりを行っていますが、てっきりデモデイのプレゼンをご覧いただいて支援くださったのだと思っていたら、単にクラウドファンディングサイトをご覧になって支援くださったとのことでした。
サイトの情報発信がうまくいった結果としても、とても嬉しく思いました。
エンジニアとしてのはじまり
一時期、SNSなどの広告にやたらとエンジニアとしての転職を勧めるものが出ていたのですが、自分がエンジニアであるという自覚はありませんでした。
しかし、スマレポというWebアプリを作り、クラウドファンディングで支援くださった方の現場にこれから実装していくことを考えると、自分がエンジニアであるという自覚を持つ必要があると考えています。
そして、このWebアプリの制作とクラウドファンディングは私にとってエンジニアとしてのはじまりです。
これからも、作り続け学び続けていきたいと思います。
ものづくり医療センターが2期生を募集しています
以前の記事でも触れたように、私はプロトアウトスタジオの5期生であり、ものづくり医療センター(もいせん)の1期生でもあります。
この、もいせんが2期生を募集しています。
私のように毎週の課題を行い積極的に学びを深めるICUコースと、毎週の授業をベースに卒業制作を行う通常コースがあります。
プログラミングを学びたいけどきっかけがなかったという医療職の方に自信をもってお勧めします。
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