「罪悪感」という感情で思い出すこと
アラン・コーエンさんの著書「癒しのマスター・キー」(翻訳:赤司桂子 ナチュラルスピリット)でも、日本人は「自分に幸せを許すことが苦手」な人が多い、と触れています。
自分“だけ”が幸せでいること、豊かでいることに罪悪感、とまでは言わないまでも負い目や引け目を感じる、というところはなんとなくあるかな、と私も思います。
「罪悪感」で私が思い出すエピソードは、エチオピア救済のためにイギリスとアイルランドのロック・ポップスミュージシャンが行ったチャリティーです。
1984年、エチオピアで起こった飢餓を受け、発起人のボブ・ゲルドフとミッジ・ユーロにより書かれた「Do They Know It's Christmas?」をイギリスとアイルランドのロック・ポップス界のスーパースターが集まって、バンド・エイド (Band Aid) として結成されたチャリティー・プロジェクトで、同じ年の12月3日にリリースし、その後、アメリカとイギリスの2会場で大規模なライヴを開催するに至ったムーヴメントです。
とあるテレビ番組がきっかけで、ボブとミッジが電話を通して会話を始めた中で、テレビで見たアフリカの飢餓問題について話題が上り、ボブが以前からこの問題についてあるアイデアがあることをミッジに伝え、これをきっかけにして「バンド・エイド」の構想が二人で練られることになったのがきっかけです。
曲のデモをミッジが作り、歌詞はボブが主に担当しています。
その歌詞の一節"Well tonight thanks God it's them instead of you" <それ(飢餓の犠牲者)が君ではなく彼らだったことを神に感謝しよう>という部分が「あまりにひどすぎる」と最初ミッジは反対したそうです。しかしボブは「うわべだけの言葉ではなく、本音を伝えたい」とミッジの反対を押し切ってそのままこの歌詞が採用されることになりました。
ちなみにこの部分はU2のボノが歌っているのですが、ボノはこのソロ・パートを最初は嫌がったそうです。しかしボブが「もう他のパートは歌う人は決まっている、ここしかない!」と説得、さらに、「このフレーズは“怒り”を込めている」と言うことを含めて説得したそうです。
この制作秘話を知ったことで、ボノがすごく怒ったように歌っていることに納得がいきました。
その後の後継プロジェクトである「Band Aid 30」での収録でも、ボノは
「ここは私が歌うパートなんだ」
といって、他人が歌うことを譲らなかったそうです。
助けを求める人に何かできることを起こすとき。
まず、
「自分の身にその危機が降りかかっていないことを神に感謝しよう。
そのうえで、何かできることがあるならやろう。」
リッチなミュージシャンは無償で収録に参加し、自分のプロモーションビデオを提供する。
そのレコードを聴きたい人が買い、ビデオを欲しい人が買うと、そのお金がエチオピア救済に使われる。
それはさらに、ライヴの興行収益と募金へと発展するのですが。
欧米のチャリティーの根幹思想に、「自分が幸福であることを神に感謝する」があること、「それは神からのギフトなのだと感謝する」というベースがあることを私が知ったエピソードでもあります。
豊かであることに罪悪感でもなく、負い目でもなく、感謝を感じる。
このマインドセットがベースになっているということに。